川口浩探検隊の本質

昭和の名物番組 水曜スペシャル「川口浩探検シリーズ」

昭和の名物番組のひとつに挙げられるのが、水曜スペシャル「川口浩探検シリーズ」でしょう。

最近では知らない人の方が多いので、ごく簡単に説明すると、俳優の川口浩が探検隊の隊長になり、世界各地の秘境に行って、その土地の風土を紹介しつつ、謎に挑むという番組です。

 

いわゆるヤラセの本家とか、ドキュメンタリーとは呼べないとか、批判の的ともなった番組です。

しかし、そもそも番組の企画書にどう書いてあったか知りませんが、これは「ドキュメンタリー」とか「情報番組」というような、ジャンルのものではなかったはずです。

 

昔は、大の大人でもドラマの悪役や、プロレスの悪役レスラーを悪人と勘違いして、カミソリ入りの手紙を送りつけたと言います。

虚構を楽しむところまで精神的に成熟していなかったのでしょうから、テレビで本当らしいウソを作ると、受け入れられなかった人も多かったことは想像できます。

 

令和時代の現代でも、特に年配の人の中には、「テレビや新聞は真実を伝えている」と信じている人が多いようです。

無知なことは残念ですが、ある意味では純粋なのでしょう。

情報に乏しい時代の「外国を見る窓」

さて、番組を見直すと分かりますが、まず、紀行番組の要素があります。

今のように、一般庶民が手軽に海外旅行に行く時代ではありません。

その外国の風景、風土、特徴などをコンパクトにまとめた冒頭部分は、大いに異国への好奇心をかきたてられたものです。

 

この冒頭部分は、今、見直してもしっかりしていて、放送中の「世界ふしぎ発見」と比べても遜色ない内容です。この部分の正確さ、リアルさが実は重要なのです。 そしてその土地ならではのローカルな情報が加わります。

(「世界ふしぎ発見」の構成作家の一人、藤岡俊幸氏は「川口浩探検シリーズ」も手掛け、隊員役としても出演していました)

 

ここからが作り手の腕のみせどころです。

地元の東スポ的なタブロイド紙に載った、「家畜が吸血コウモリに血を吸われた」とか「ジャンルの奥地に凄い滝がある」という情報にフィクションを加えて、探検隊が追うべき謎を設定しているんです。

その前提を整えた上で、出演者達による「壮大な探検ごっこ」が始まります。

 

「壮大な探検ごっこ」というのは決してバカにした表現ではありません。

この番組の立派なコンセプトだと思っていいでしょう。

本格的な登山や洞窟のケイビングの紹介の要素もあり、実際にはかなり危険も伴っています。

 

ちょうどプロレスの力道山が、空手の大山倍達に「空手チョップ」を習って、必殺技として使い、観客を熱狂させたのと似ています。

あれは、あくまでも「空手の技」の真似で、空手の技そのものではありません。

大山と力道山には色々と確執があったそうで、後に大山が力道山の墓前で「お前が空手の名前を広めてくれたことには感謝するよ」と言ったそうです。

本物の空手でなくても、「空手チョップ」が流行することで、空手に入門した人も多かったに違いありません。

 

川口浩の探検ごっこも同じような功績が各方面にあります。

「辺境作家」でベストセラーを持つ、高野秀行氏も、川口浩探検隊の影響で早稲田大学探検部に入ったと公言していますし、何より、テレビ番組としてもひとつのフォーマットを確立したと思います。

 

キャスティングの妙

考えてみると、隊長に川口浩、というキャスティングも絶妙です。

 

そもそも川口浩という人が、実際に自分で探検ごっこをしたくて「川口プロモーション」という会社から金を出して作っている番組です。

テレビ局の企画で「川口浩が隊長役としてオファーされて受けた」というのとは、思い入れが違うのです。

その思いの強さが、視聴者(主に子供)に伝わったと思っています。

 

当時の大人は、川口浩が大作家と大女優の息子で、本人も映画スターとして多くの主演作品を持っていることを知っていたから、「川口浩が探検隊長を演じている」と認識していたでしょう。

しかし、当時の子供である我々にとっては、俳優・川口浩は馴染みがありません。

 

ジャングルに行って、ちょっとわざとらしく蛇やサソリに襲われたり、怪獣めいた名前の生物を探す行為も、本当か嘘か半信半疑でした。

「作り話だろう」と思いつつも、「こんな大の大人たちが真剣な顔でやってるんだから、もしかして本当なんじゃないか?」という、いわば魔法にかけられていた感覚があります。

 

おそらくこれは、作り手達が安易に「こうしておけば観客は満足する」とたかをくくった姿勢でいたら生まれない状況です。

「自分達が楽しみながら、それを突き詰めれば面白くなるはずだ」という信念を持って、「本気で遊んだ結果」が生む魅力なのでしょう。

これは円谷プロの作品群にも共通する、魅力の理由だと思います。

本気で遊ぶ大切さ

時代は変わり、誰でも手軽に映像を撮影できたり、海外旅行に行けたりする世の中になりました。

さまざまな事に手を出せる状況になったことで、大人たちにひとつの提案があるとすれば、「本気のごっこ遊び」をしよう、ということです。

 

実際にやってみると分かりますが、子供の頃に楽しかった遊びは、大人になっても大抵楽しいものです。

「泥んこ遊び」が「趣味の陶芸」に言い方を変え、「仮面ライダーごっこ」が「演劇」になり、「図画工作」の類いが「芸術活動」に名前を変えているだけです。

 

我々はその中の一つ、「探検ごっこ」を「映像作品づくり」と組み合わせています。

 

子供の頃に夢中になった川口浩探検隊を、まさに川口浩本人が味わったであろう楽しさを味わいたくて、「チームウェンズデイ探検シリーズ」と銘打って映像作品にしているわけです。

 

このシリーズには、バラエティー番組によくあるような、ヤラセの内輪受け的、笑いの要素はありません。

それは大人向けの「安易なおふざけ」に過ぎないと考えるからです。

結果として笑いが起きる分には構いませんが、あくまでも作り手の姿勢としては「本気で遊ぶ」なのです。

 

この作品を見た子供たちには、虚実が曖昧になる魔法を感じてほしいと思います。

また、大人であれば、作品を通じて「本気で遊ぶ」楽しさを思い出して欲しいと願っています。

 

実はその「大真面目なごっこ遊びの面白さ」が川口浩探検隊の本質のような気がするのです。

 

私達MVGは、川口浩探検隊へのオマージュとして、「チームウェンズデイ探検シリーズ」という自主映画を作り続けています。このシリーズ立ち上げの時期のドキュメンタリーを、電子書籍にまとめてKindleから無料で出版しています。(画像からリンクされています)

「チームウェンズデイ探検シリーズ」についての関連情報はこちらから。

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