ブルース・リーの順番設定

先日、「プロとアマは行動力の差」という記事を書いて、その中でも触れたんですが、どうも、私を含めて多くの人は「物事の順番」というのを間違って認識している疑いがあります。

例えば、格闘技というものがあります。空手などの武道というのは精神と肉体を鍛えて統合させるものなので、もちろん基礎的な知識と訓練が必要です。しかし、護身の為というような明確な目的がある場合、あまりにも定型的な修行の順番をたどっていては役に立たない可能性があります。立ち方や構えの基礎に半年を費やしていては、少なくともその時点で月謝に見合う成果は得られません。誰かに襲われたときに身を守れない、という事です。

その点、武道家のブルース・リーという人は非常に教え方がうまい指導者だったようです。伝統的な道場では何年も理論と型の訓練をします。そんな中、彼は道場でいきなり実戦形式のスパーリングという訓練を取り入れます。実際に相手にパンチやキックを当てるため、怪我をしないようにヘッドギアや各種の防具を体につけて訓練をするのです。こういう訓練は、今日では当たり前ですが、1960年代では画期的でした。

実戦をしてみると思いの外スタミナが切れる、という人はスタミナ不足を補うためにランニングを熱心にして、その効果も自覚できます。すぐにバランスを崩す欠点を感じた人は、足腰を鍛える基礎練習に励んで、おそらくその後のスパーリングで効果を確認できます。なにより、喧嘩自慢の生徒が、小柄なブルース・リーとスパーリングして全く歯が立たない事を確認して、「君の良いところはここ、悪いところはここ、こういう基礎トレーニングをしなさい」とアドバイスするのですから、説得力があります。

これは、通常の「基礎を完全に習得してから応用編に入る」という順番とは逆です。危険のない形で実戦を経験してから、基礎トレーニングの必要性を自覚して行う、という極めて効率の良い成果の出し方ではないか、と思います。

まずは基礎を固めてから、と思って続けられずに挫折する癖がつくより、ブルース・リー的な順番設定をしてみた方がいい場面は、日常の中に色々ありそうな気がします。

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