コンピューターは便利な「道具」に過ぎない

基本は「プログラム以前」の問題

昔であれば、絵の上手な人は、「絵が上手だね」と言われました。
ところが最近は、PCを使って描いた絵が上手だった場合、もちろん、根本にはその作家の「画力」があるはずなのに、「何のソフトを使ってるの?」という話になりがちだと感じませんか?

 

確かに、コンピューターのプログラムは色々なことをカバーしてくれます。
楽器はできないけれども、いいメロディーが思いつく人は、作曲のプログラムを使うことで曲が作れます。

 

創作活動におけるプログラムは、「道具」なんです。

道具も良いことに越したことはありませんが、道具だけ良くても、「プログラム以前」の技術は持っていなければ、あまり意味がありません。

基礎的な技術を何も持っていない状態では、道具を手に入れても、何も出来ないからです。

絵は上手くて道具の使い方だけ下手だったお姉さん

私は子供の頃、(中学生になって油絵部に入るまで)8年間ほど、絵画教室に通ってました。
子供の絵画教室ですから、別に絵の描き方を本格的に習うわけでもなく、大抵は好きな絵を自由に描かせていた教室だったと思います。

 

一応、「動物を描いてみましょう」とか「働く人を出しましょう」とかお題は出されるのですが、私は「動物」がテーマでも恐竜、「働く人」でも、恐竜博物館で働く人、というように、恐竜ばかりこじつけて描いていました。
それでもOKだった訳です。

 

そんな絵画教室でしたが、印象に残っていることがいくつかあります。
教室は、先生の自宅をアトリエとして開放していたのですが、私のような恐竜を描いている小学生と同じ部屋に、美大を受けるべく絵の勉強をしている高校生のお姉さん、というような人も当たり前のように混じっていたのです。

 

子供の私達からすると、ビックリするほど上手な絵を描いていましたが、私達には優しい先生が、そういう生徒さんにはとても厳しいのです。
「そんな葉っぱがありますか!ちょっと庭に出て葉っぱ見てきなさい!」と言われて、その生徒さんが泣きながら葉っぱを見に行っていたことを覚えています。

 

その生徒さんの絵を見て、子供ながらに「残念だな」と思っていた事がありました。
その人はデッサンや下描きはとてもきれいなのですが、どういうわけか、水彩絵の具の使い方が下手で、色が汚くにじんでしまって、いつもティッシュで水を吸わせて修正していました。

 

水彩絵の具というのは、子供も使いますが、それは安全で、道具の手入れが楽だからです。
実は絵を描くためには難しい画材の部類に入ると思います。

 

「油絵」や「アクリル画」は、色を重ねることで深みを出したり、調整したり出来るのに対して、透明感を活かすタイプの「水彩画」は、色を乗せる順番を計算して、最低限の重ね合わせで表現します。
水墨画のような、一発勝負的要素があります。
基本的に修正ができません。そういう意味で難しい画材・道具だと思うのです。

 

そういう「絵の具の扱いだけが上手くできない」という人は、絵画のコンピューターソフトを使うと、イメージ通りのすばらしく綺麗な絵が描けると思います。

 

「あの時の生徒さんは、今、趣味でPCを使って素晴らしく綺麗な絵を描いているのではないかな」と時々想像します。

動画編集ソフトの性能に騙されるな

以前、動画関係のワークショップを開催した時に、「スマホで撮影した映像で、簡単に映画の予告編風の動画を作る」という事をしました。

 

そのiMovieというソフトを使うと、ものの10分ほどの編集時間で、商業映画の予告編のようなムービーが作れることを利用したワークショップでした。

 

しかし、そのソフトさえ使えば、皆が商業映画風の楽しい予告編を作れると思ったら大間違いです。
現にYoutubeで他の人がiMovie作った予告編を検索してみても、それほど良く出来たものがなかなか見つからないのです。

 

そのソフトは、「ある条件」を整えたときに、簡単に本格的な予告編ムービーを作れるのです。
その条件というのは主にキャッチコピーの設定なんですが、それがしっかりしていないと、「サマ」にならない、という事が分かりました。

 

つまり、「何のソフトを使ったか」ということよりも、プログラム以前に用意すべき設定や撮影映像など、「キモ」になっている要素がしっかりしているかどうか、という事が重要なのです。

 

ソフトウェアを利用した「ものづくり」の可能性は飛躍的に広がっています。
しかし、一番大事なことは、
  • 自分の頭でイメージして
  • 必要な要素を自分の手で用意する
という原始的な部分だと思います。
その原始的な部分を追求することはとても面白いですし、場合によっては、「ビジネスの種」になる要素でもある、と考えています。
素晴らしい創作物を見ると、ついつい「道具は何を使っているのかな?」と考えてしまいがちですが、道具以前の本質的なアイデアや技術にこそ注目していきたいものだt思います。

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