電子書籍は単なる本の代用品?

ジャストシステムが公表したレポートによると、電子書籍の利用率は20%弱で頭打ち。
70%近くの人が電子書籍に否定的だったり興味が無かったりするそうです。(2016年時点)
この結果を見てどう判断するか。
  • やっぱり本は紙だよね
  • 電子書籍は実物を買うわけじゃなくて、読む権利を買うだけだから
そういう意見はもっともです。
しかしそれは、電子書籍を「紙の本のデジタル版」という捉え方をしているから、出てくる批判ではないでしょうか?
紙の代わりと認識するから
「実体が無いくせに、紙に比べてあんまり安くない」
という批判が生まれるのです。
もちろん、既存の紙の書籍の「デジタルデータ版」としての電子書籍もあります。
これはこれで一定の需要はある筈です。
「自分の物として本棚に並べられない」
という欠点は、そのまま別の人にとっては
「置き場所を考えずに、好きなだけ読める」
という長所だからです。
電車に乗っても、非常に多くの人がスマホ等の端末をいじっていますが、その手を休めて文庫本を取り出す、という状況より、そのまま、スマホで電子書籍を読む方が、文字通りスマートだと思えます。
私が自分で実際に電子書籍「映画作りを趣味にしませんか?」を出版して感じたことは、
「紙の出版だと大金がかかるけど、自分でやればタダで本が出せる」
という、単にコスト面のメリットだけではありません。
コンテンツを提供する形式として、もしかしたら最強ではないか、とさえ思えるのです。
具体的に言えば、電子書籍は「文章」「音声」「映像」を最も効果的に組み合わせられるコンテンツということです。
私の著書の中にも、いくつかの動画のリンクを入れています。
文章として説明した上で、実例などは動画を見てもらうことができるのです。
「百聞は一見にしかず」という通り、文章で説明するより、見たほうが理解しやすいことは多くあります。
しかし、私は長年、マニュアル制作の仕事をしてきましたから分かりますが、説明を全て動画で行なおうとすると、無駄が非常に多くなります。
大雑把に言うと、
  • 文章:5
  • イラスト(写真):3
  • 動画:2
くらいの比率で説明するのが、効率も良くて、分かりやすいと思います。
例えばDVDで動画マニュアルを作ったりすると、文章やイラストで十分説明できることを動画にしなくてはいけないのです。
動画の中に「文章」や「イラスト」も入れられますが、それらは再生画面でなく、ページの上にあったほうが見やすいのです。
動画のもう一つの弱点は、時間を制約してしまうことです。
文章であれば 「そこはもう分かってる」という部分は、読むスピードを上げて読み飛ばすことが出来ますが、動画はじっと待つしかありません。
逆に、文章であれば必要に応じてじっくり読み直せますが、動画は、うっかりして集中力を切らしてしまったときなど、
理解できていないのに、説明は次に進んでしまいます。
その点、電子書籍は、基本は本として文章で成り立っていて、補足情報・プラスアルファとして動画も利用できるわけです。
動作の説明が有効な教材や、語学のように音声が需要な教材などは電子書籍がうってつけでしょう。
私はエンターテイメントの作品にも、電子書籍はうまく利用できると思っています。
小説、オーディオドラマ、映画の特徴を盛り込んだ電子書籍が登場すればいいと思います。
そんな訳で、
「電子書籍の利用率が20%弱らしいから、日本では普及しないね」
という意見は短絡的だなあ、と考えているのです。

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