特撮映画としての「キングコング: 髑髏島の巨神」

違う手法で表現されてきたモンスターの王

映画の中には、サイレントの時代から、様々なモンスターが登場してきました。

実は、古い映画ほど、撮影手法はバカ正直で、巨大な怪物を実物大の模型で表現していました。

実物大ロボットはもちろん、インドゾウに毛皮を着せてマンモスとして歩かせたり、ということもしていたようです。

 

巨大なセットが多数必要で、莫大な製作費と期間が必要とされたモンスター映画ですが、最近は実写とCGの組み合わせが一般的になったことによって、かなり自由度が高い映像を、昔に比べて低コストで作れるようになったようです。

 

「キングコング」と言えば、1933年の伝説的傑作があります。

「シン・ゴジラ」の総監督である庵野秀明氏が、ゴジラは初代ゴジラが全てを兼ね備えているというような旨の発言をしていましたが、キングコングも同様、1933年版に全ての要素が詰まっています。

恐竜が人工的に生み出された設定の「ジュラシック・パーク」と違い、「この先何が出てくるのか、全く分からない」というのは、正統派ロストワールドものの、最も魅力的な部分です。

 

個人的には、「キング・コング」では、コング以外の恐竜なども生き生きと動き回っていて、大好きな映画です。

特撮としては、ストップモーションで動かしたモンスター映像を、大きなスクリーンに映写して、その前で俳優たちが演技をする様子を撮影する、という手法がとられています。

 

1976年版の「キング・コング」は、「ミニチュアでなく実物大のコングを作って撮影しよう」という、野心的な大企画でしたが、事故や不具合によって、実物大ロボットの手法は断念。着ぐるみのコングを使って完成しています。

ストーリーはオリジナルのままですが、時代を現代にした分、リアルな設定が活かされています。

私は恐竜好きなので、恐竜が登場しない分、物足りなさも感じますが、十分に面白い映画です。

2005年版「キング・コング」はオリジナルをかなり忠実にリメイクした上、ロストワールド感をリアルに表現されていて素晴らしい出来でした。

特に、コングと恐竜が戦う場面などは、1933年版で、特撮技師のウィリス・オブライエンがアニメートした「戦い方」をわざと忠実に再現するなど、オリジナルへの敬意に溢れていると感じました。

1933年版では、シナリオにはあったものの、撮影されなかった「虫の襲撃」のシーンも再現され、恐らく、オリジナルの脚本段階で作者たちの頭の中に見えていたのは、この映画の映像だったのではないか、と思います。

さて、2017年版の「キングコング: 髑髏島の巨神」です。

この作品では、おなじみの「秘境から都会へ」というストーリーはなぞらず、秘境である髑髏島だけが舞台。

制限時間内に脱出できるか、ということに絞った内容で良かったと思います。

ベトナム戦争直後、という微妙に時代がかった面白さも加わっています。

 

手法については全編CGで、真新しさは特に感じませんでしたが、監督が意識したという、「宮崎アニメの実写版」というような雰囲気も確かにあります。

 

今回の作品を観て感じたのは、「技術的な制約なく自由に映像を設計できる時代だからこそ、映像に頼ってはいけない」ということでした。

 

昔のモンスター映画は、造形の素材も未発達、撮影技術も開発途中、という中で、「何とかアラを隠しながら、観客を満足させよう」という意識があったと思います。

怪獣を100カットも登場させたらお金が掛かって仕方が無いので、出来るだけ登場まで時間を稼いで、ここぞという時に使う。

そのために、焦らせる演出や、徐々に真相に迫っていく演出、その演出を活かすためのストーリーが練りに練られたのだと思います。

 

近年は、映画に限らず「リブートの時代」と言われます。

過去の作品と、現代の新しい技術を組合わせ直して、新しい作品として甦らせる例はたくさんあります。

 

2005年版「キングコング」は、あえて古臭いオリジナルのシナリオをそのまま残した上で、映像面を最新CGにしたことで効果を上げました。

しかし、この2017年版は、最大の見せ場であるコングの大暴れシーンを冒頭でタップリ見せてしまっているので、早い段階で映像の凄さにも「目が慣れてしまう」のです。

冒頭から派手なアクションシーンを連続させるのであれば、それに勝るような魅力を、ストーリー面で「謎」や「驚き」の形で強く表わす必要があると思います。

 

確かに独特の世界をデザインして、その世界の風景をリアルに描いていますが、私には「連続する素描」に見えます。

 

「アナログ特撮」と「CG」の融合ができ時代、映像の実現に不可能はなくなってきます。

極端に言えば、「映像技術の追求」は一旦終わりにして、ストーリー面の研究に舵を切るべきなのではないか、と感じました。

恐らく、登場人物のドラマが十分に魅力的でないと、「映像負け」してしまうと思うのです。

 

今回のキングコングでも、実はなかなか魅力的な設定があるのですが、それが明かされるシーンがエンドテロップ後に出てきます。

しかし、私が見た回は、まずまずの入りだったにもかかわらず、長すぎるエンドロール中に観客の2/3は帰ってしまっていました。

最近のエンドロールの過度な長時間化も、決してプラスにはならないと思います。

 

しかし、何はともあれ、最も映画的と言える「モンスター映画」が復権の兆しを見せていることは、特撮ファンとしては嬉しいことです。

 

スケールこそ違いますが、私たちのような自主映画制作者にとっても、グリーンバック合成を中心にした特撮技術の応用が、多くの制約を克服する手段として有効です。

MVGでは2016年、全編グリーンバック合成の方式を採用することで、超短期間、超低予算の映画を作る実験をして、1本のB級モンスタームービーを完成させました。企画の一部始終をまとめた電子書籍を、Kindleから出版しています。unlimited読み放題対象なので、是非参考にしてみてください。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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