作品の質を下げるのは音声
コロナの影響で、世の中のリアルセミナーは激減しています。
私は、普段、ビジネス系の動画コンテンツ制作をしているので、「リアルやオンラインだけでなく、セミナー動画を活用しませんか?」と提案していますが、ここへきて、撮影やコンテンツ制作のご依頼やお問い合わせが急増しています。
私がセミナー動画制作で、最も気を付けているのは、映像のクオリティではありません。
音声です。
映像は、プラスアルファとして良いに越したことはありませんが、音声の品質が一定以上であることは絶対条件です。
高画質の映像でも、音声が部屋の中で響いてしまっていると、素人感丸出しのセミナー動画になってしまうからです。
「音声品質を軽視してはいけない」という事は、もちろん、私達のDIY映画にも当てはまります。
映画を作る時に、どうしても「映像」を重視してしまいますが、音声品質の低さが作品を台無しにしてしまうことを覚えておいてください。
映画は、映像と音声で成り立っています。
映像の要素は、画質、光、構図、カメラワークなどです。
音声の要素は、音質、音量などですが、マイナスの要因として、「ノイズ」や「残響音」があります。
よく勘違いされますが、高価なマイクを使えば解決するものではありません。
問題は、マイクの性能ではなく、録音環境だからです。
映像の良さはプラスアルファなので、それがなくても作品は成り立ちます。
しかし、音声で、カット毎に違うノイズが入っていたり、不自然な残響音があったり、カット毎にセリフの聞こえ方が違ったりすると、「その一連の映像は、実は時間を掛けてバラバラに撮影したものだ」とバレてしまうんです。
実際には2時間も掛けて撮影した映像を組み合わせて、1分間の出来事であるかのように見せるのが映画です。
その1分間の映像を見た人が、「このシーンは2時間くらい掛けて1カットずつ撮影したんだな」と感じてしまったら、映画として成り立たなくなってしまうんです。
見ている方も、全く内容に没頭出来ないでしょう。
そうは言っても、実際に作品を作って、失敗してみないと、実感は湧かないと思います。
「カメラの内蔵マイクでも、ちゃんとセリフが録音できている」
「外で風が吹いているんだから、風の音が入るのは、むしろリアルだろう」
という勘違いは、編集を終えると初めて認識できます。
ちゃんと録音できているように思えたセリフは、顔の向きによって、音量が全く違います。
編集してみると、音量や音質がばらついていて、カットをまたいだ一連のセリフが、全く一連には聞こえないことに気づくでしょう。
リアルだと思った、現場のノイズは、カットが変わるたびに種類も大きさも異なるため、「この一連の映像は、ぶつ切りで撮影したものですよ」と主張しているような状態の筈です。
撮影した映像を繋ぐことの楽しさを味わった後は、この「音声に起因する問題」を何とか解決できないか、という次の課題を感じるはずです。
しかし、ここで、一つ問題があります。
それは、「同時録音は技術的にかなり難しい」ということです。
セミナー動画であれば、ノイズが入りにくく、一定の大きさの声が入る位置にマイクをセッティングすることで、状況はかなり改善します。
基本的にセミナー講師は、同じ姿勢のまま話すからです。
一方で、映画は撮影場所も複数ある上、1カット毎に録音状況が変わってきます。
それでも、ある程度一定の声に聞こえるように録音するのは、録音マンの、ほとんど特殊技術です。
なかなか真似できるものではありません。
私がオススメするのは、「いかに良い状態で録音するか」ではなく、極力、同時録音の音声を使わないことです。
セリフを極端に少なくすると、作者の技術は同じでも、作品のクオリティは1ランク上に見えます。
それくらい、音声の拙さで足を引っ張るものということです。
セリフがある場合は、アフレコを採用することで、音質やノイズのばらつきを抑えられます。
野外シーンの環境音を使う場合は、人物の撮影などとは別に、1分間程度、その現場の音を静かに録音しておきます。
この環境音をノーカットで使うことで、カットが変わるたびに背景のノイズが変わってしまう、という安っぽい映像にしなくて済みます。
「映像」は技術的に拙くて失敗したとしても、「演出です」と言い張れば、演出に見えなくもありません。
でも、「音声」の失敗は、観客側からするとはるかにストレスが大きいので、明らかに「失敗」と認識されてしまいます。
見栄えのする映像づくりに凝ってしまいがちですが、作品の足を引っ張るのは、音声のクオリティと知っていても損はないでしょう。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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