自然な映像と思わせる小細工「揺らす」

今回紹介するの手法は、良く言えば「実践的」、悪く言えば文字通り「小細工」です。

 

まず、前提として、私は揺れがひどい映像は、それが狙いだとしても好きではありません。

「レベルが低い」という印象を持ってしまいます。

 

私は学生時代、他人の作る多くの自主制作映画を見て、映像的な最大の弱点は、「手ブレがひどい」という事だと認識していました。

 

プロが、カメラを手で持って撮影すると、手ブレによる「臨場感」を表現できます。

でも、全体的にレベルの低い自主映画においては、たとえ臨場感を狙ったのだとしても、その手ブレ映像は、単に稚拙で未熟な映像にしか見えないものです。

そのため、私は映画作り初心者の頃から、カメラは三脚にセットして、手ブレのない映像で作品を撮影することを心掛けていました。

これはこれで効果的だったと思っています。

 

しかし、カメラを三脚にセットせず、手持ちカメラで撮影する大きなメリットもあります。

それは、カメラワークの自由度が上がるという事ではありません。

下手なカメラワークはマイナスにしかなりませんから。

最大のメリットは、三脚を使うときに比べ、「圧倒的に撮影が早い」ということです。

 

私は一時期、意識して撮影時間を計測しながら「早撮り」の研究をしていました。

当時注目していた監督が「空前絶後の早撮り」と言われていた上、それ以外の「早撮り監督」と呼ばれる人の作品も、「映像の流れ」が自然で魅力的なことに気付いたからです。

 

そこで、当時、実験的に、嫌っていた手持ちカメラを多用した作品を作ってみました。

結果、特に野外ロケの撮影では、目に見えて撮影時間を短縮出来ました。

編集した映像も、時間を掛けて撮影したものより、繋がりが自然になることを実感しました。

 

作品の質を落とす「手ブレ」がひどくならないように細心の注意を払いながら、手持ちカメラで撮影することは、時短にとても有効だと言えるでしょう。

 

反面、私にとって大きなデメリットもあります。

それは、自然な「映像合成」が出来なくなると言うことです。

 

映像合成をするためには、基本的に、元の映像を固定しておく必要があります。

三脚でカメラを固定して撮影した映像なら、手前に別のものを自然に合成出来ますが、揺れている映像に別のものを合成しようとしても、合成した物体だけ不自然に浮いてしまうからです。

 

特撮合成は、低予算でもイメージに近い映像を作る時の大きな武器です。

そのため、私は、一見、特撮を使わないような普通の場面でも特撮を多用します。

つまり、映像合成をする場面は、三脚でカメラを固定して撮影するわけです。

 

すると、今度は、別の問題が発生します。1つのシーンの中で、

  • 合成のない映像は手持ちカメラ撮影
  • 合成のある映像は固定カメラ映像

という傾向が出てしまうことです。

 

これは、別に悪いわけではありませんが、「映像の合成に気付かれやすい」という欠点があります。

 

例えば、1970年代の特撮の名作映画は、大抵、コマ撮りでモンスターが登場する場面では、必ず、カメラが固定した映像になるので、「何か出るぞ!」と分かります。

合成・特撮が見せ場という作品であれば、これも楽しみの一つになりますが、それをプラスに捉えてくれるのは一部のマニアです。

 

また、合成映像のための固定映像は、手持ちカメラで撮られた、「わずかに揺れている画面」を目立たせてしまう傾向にあります。

「かっちりと固定した映像」と、手持ちカメラで撮影した、「わずかに揺れている映像」を混ぜて編集すると、どうしても相対的に「揺れている映像」が目立つことになります。

いっそのこと、全ての映像が「わずかに揺れている」方が、「揺れ」を意識させずに済みます。

 

そこで、解決策として、合成を施した映像にも後から「揺れ」を加える方法が出てきます。

 

前述の通り、基本的に、合成映像は固定された映像で作ります。

三脚に固定して、カメラワークを使わずに撮影した映像に、編集時、別の要素を合成します。

 

「後から揺れを加える」とは、複数の映像を合成した後、それで完成とせずに、もうひと手間掛けて、自然な手ブレを再現した「揺れ」を加える作業を追加するのです。

 

この処理には、通常、Adobe社のAfter Effectsというソフトを使います。

このソフトはエフェクターとして万能のツールです。

 

詳しい操作は解説しませんが、映像の合成が済んだ動画ファイルに対して、様々なパターンで「揺れ」を追加することが出来ます。

単に画面を揺らすだけでなく、撮影時にカメラが揺れたときと同様の「ブレ」を再現できるので、うまく設定すると本当に手持ちカメラの映像と見分けがつかない状態にできます。

 

合成映像も手持ちカメラで撮ったような映像になるので、「合成」をより自然に見せる効果もあります。

 

静止映像で合成映像を見せると、どうしても「アラ」が見えてしまって、合成映像だとバレがちですが、画面が揺れていると、ある程度長い時間(数秒程度)の合成映像を見せても、合成だと判別しにくい状態になります。

 

このように、「画面を揺らす」という加工は、有効です。

ただ、この手法に頼りすぎるのも問題です。

 

低予算作品、特にB級モンスタームービーなどの中には、「画面を揺らしてごまかす手法」に頼りすぎた結果、もう、わけがわからない映像だらけのものもあります。

恐らく、作り手もヤケクソで画面揺れの加工をしているのだと思います。

 

そこまで極端な使い方は全くオススメしませんが、あくまで「自然な映像」「映像の自然な繋がり」を生み出すために、「編集時、わずかに画面を揺らす加工を加える」という手法が有効だということを紹介しました。

 

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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