撮影時の人手不足と映像分割合成

CGを使わないモンスター映像

ここではわかりやすく「モンスター」と言っていますが、要は「そのままでは撮影できない生物」は同等と考えてください。

恐竜などはもちろん、動物園の動物や、家で飼っている犬やネコでも同じです。

それらの動物を、思い通りの動きで画面に登場させたいと思ったとき、どうやって映像にするか、という事を考えてみます。

 

現在では、最も合理的で自由度が高い手法の一つにCG(コンピューター・グラフィックス)があります。

パソコン画面の中に、その動物のデータを構築して、動きや見る角度、当たっている光の角度などを自由に設定して表現する方法です。

 

これは、もちろん優れた手法の一つですが、私はこの選択肢を排除しています。

技術的な習得の困難さもありますが、映像制作を「工作の延長」として捉えている私にとっては、CGは決定的に「面白味」が無いからです。

 

そのため、私にとってモンスター映像は、何らかの模型を作って「撮影」して、合成などの「映像加工」をすることで作ります。

実現可能な主な方式は以下の4つでしょう。

  • マリオネット方式
  • ストップモーション方式
  • マペット方式
  • 着ぐるみ方式

 

このうち「着ぐるみ方式」は、作業や撮影に広いスペースが必要なので、少なくとも社会人の趣味の映画づくりでは現実的ではありません。

また、「マペット方式」は、主に頭部、それも口の動きに特化した表現です。

そうすると、全身の動きを表現するためには、「マリオネット方式」と「ストップモーション方式」に絞らられます。

 

「マリオネット方式」と「ストップモーション方式」、一長一短がありますが、最も大きな違いは、モンスターの構造の「精度」です。

 

ストップモーション方式で使用するモンスターの模型は、

  • 関節が動き
  • 手を離してもそのポーズを維持できる

という性質が不可欠です。

そのため、多くの場合は、精度の高い「関節」を持った骨組みを作って、模型の中に組み込む必要があります。

思い通りのデザインにするためには、緻密な設計をしなければいけないので、ハードルが高いものとなります。

 

それに対してマリオネット方式は、極端に言えば市販のぬいぐるみでも使えます。

動かしたい関節部分が柔らかく動きさえすればいいからです。

動かし方は原始的で、糸や棒で操作するだけです。

映像用のマリオネットは、動かす時の糸や棒を隠したり消したりすることで、モンスターが自分で動いているように見せる訳です。

同時に複数箇所が動くとリアル

生き物としてのモンスターを表現しようとした場合、特に全身が画面に出る際は、体の複数の箇所が同時に動いていたほうが自然に見えます。

「首を動かしながら手足も動かす」という具合です。

 

ストップモーションは、手間さえ掛ければ、体の別の箇所が同時に動いている様子を表現できます。

一方、マリオネット方式の弱点の一つは、「同時に複数箇所を動かす場合、人手が必要」という点です。

人は2本の手しかありませんから、2箇所以上の場所を自由自在に動かすことは難しいからです。

 

余談ですが、逆に考えると、

  • 前足
  • 後足
  • 尻尾

というように、それぞれの動く箇所を大人数で手分けして動かす撮影は、とても楽しいとも言えます。

呼吸を合わせた連携プレーによって一つの動きを作るマリオネットの撮影は、ワークショップでの体験会にも向いているかもしれません。

 

ただ、私達が趣味で映画を作る場合、制作をスムーズに進行させるために重要なのは、「いかに単独作業で進められるか」です。

毎日、友達と学校で会って、午後は行動を共にできる、という学生の状況とは違います。

「一人じゃ尻尾を動かせないから、手伝ってくれ」と言って人を集めていては、周囲の人の負担も大きいですし、何よりもそんなやり方をしていたら、いつまでたっても作品が完成しません。

 

かなり邪道な方法ではありますが、私が採った方法をご紹介します。

動いている箇所を別々に切り抜いて組み合わせる案

映像が、「実演のショー」と決定的に異なるのは、「編集によって統合できる」という点です。

一般的に、実演のショーに近い形で準備して撮影する映画は「本格派」扱いされ、編集で統合することを前提に工夫して撮影される映画は「邪道」扱いされて、プロや通ぶった人達には馬鹿にされます(笑)。

 

グリーンバック合成をはじめとして、デジタル編集が容易になったことで、映像の統合には自由度が増しました。

 

今回紹介するのは、私が製作中のショートムービー「虹色の霧」で、森の中に登場するワニの映像の撮影と合成の手順です。記事の最後で映像をお見せします。

 

ワニはほんの1ショット登場するだけなので、出来るだけコストを掛けずに作りたい映像でした。

そのため、以前に「川口浩探検隊」のオマージュシリーズのために製作した、ワニの模型をそのまま流用することにしました。

この模型はマリオネット方式で撮影する前提で作ったので、単に関節が柔らかくてブラブラしているだけです。

 

ワニは横から見た映像で、画面を横切る設定です。登場時間は数秒です。

向こう側の足は見えないので、動かす必要があるのは片側の前足と後足だけ。

模型をがっちりと固定して撮影すれば、両手で2本の足を同時に動かすことは出来るのですが、あえて、今後のための実験も兼ねて前足と後足を別々に動かして撮影しました。

これは、後から胴体の前半と後半を合成することが大前提なので、模型の位置は固定しておくことが必要です。

まず、冒頭でワニの口を少し動かしたほうが、生きている感じが出ると思ったので、数コマ分、下顎を動かしてコマ撮りで口の開閉を表現します。このワニの模型は、下顎だけボール状の関節を入れたので、コマ撮りに対応できるんです。

コマ撮りと言っても、カメラはいちいち停止させず、動画を録画したまま、顎をちょっと動かしては手を引っ込める、という繰り返しです。

以降も、録画は止めずに一気に続けます。

 

次は後足だけ、歩いているような動きをさせます。

今回は操作棒の代わりに、先の細いペンチでワニの足の裏から突き出た突起をつまんで動かしています。

ペンチと突起は後で消せるように、緑色のフェルトで作ったカバーを被せています。

続いて、前足も同様に動かし、必要な歩数の動きをさせて、撮影を終了します。

編集は、AdobeのPremiere Proを使っています。

考え方としては、撮影素材を

  • 頭部
  • 動いている前足部分
  • 動いている後足と尻尾

というそれぞれのパーツだけ見えるように、切り抜いて重ねて並べます。

ワニ自体の位置がずれていないので、3つのパーツはキレイに重なります。

実際には、前足を撮影した映像に

口を動かしている頭部と

後ろ足と尻尾

を重ねる形で合成しています。

 

模型の可動範囲にもよりますが、この手法を応用すると、

  • ストップモーション用の模型は用意できない
  • 動かす箇所が多くて、一度に一人では動かせない

という場合でも、一人での撮影が可能になる場合があります。

 

今回実感した、課題・問題点を考慮しつつ、今後も活用していこうと思います。

一連の撮影内容と、合成手順については、下記の動画をご確認ください。

参考になれば幸いです。

 

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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