クロマキー合成映画特有の「構図」

クロマキー映像の長所

私が「特撮」という手法を使う理由は様々です。

最も大きな理由は、「カメラの前で再現できない映像を作るため」です。

 

例えば、「ミニチュアで作った宇宙船の模型の前で芝居している人物」という場面は、カメラの前で再現できません。

人物とミニチュアセットの縮尺が違うからです。

 

あるいは、「崖の突端に立っている人物」という場面。

物理的には再現可能かもしれませんが、危険です。

 

それらの場面を、コストを掛けず、安全に、擬似的に再現するために選択されるのが、クロマキー合成という手法です。

人物をクロマキー合成するためには、グリーンやブルーの背景の前で人物を撮影します。グリーンバック撮影、ブルーバック撮影などと言います。

現在では、パソコンの編集ソフトの機能を使うと、比較的簡単に、グリーンやブルーの部分を透明にする処理が出来ます。

その映像を背景の前に重ねれば、ミニチュアの前や崖の上に人物を合成できるわけです。

 

ちなみに、「ミニチュアの前に人物を合成する」には、クロマキー合成用のグリーンバック撮影などが必要ですが、「人物の前にミニチュアを合成する」場合は、グリーンバック撮影などは不要です。

ミニチュアを撮影した写真の画像をフォトショップなどで切り抜いて、普通に撮影した人物映像に、ペタッと貼り付ければ完了です。

画面設計によっては、必ずしもグリーンバック撮影が必要なわけでは無いことを、おぼえておくと良いでしょう。

 

私は、「カメラの前で再現できない場面」に加えて、「カメラの前で再現可能な場面」も、積極的にクロマキー合成で作ります。

 

例えば、

  • 道を歩いている場面
  • 会議室で会議している場面
  • 車に乗っている場面

などです。

 

これは、映画作りの経験がない人には、全く理解できないでしょう。

逆に、プロなど、オーソドックスな映画作りをしている人にも、理解も賛同もされません。

「実際にその状況で撮ればいいじゃん」

という訳です。

 

私が、「実際にその状況で撮」らずに、クロマキー合成を多用する理由は、実はいくつかあります。

その中で、最も大きな理由は、「撮影コストを数分の一に減らすため」です。

 

実際にその状況で撮るためには、場面ごとに「その日、その時間、その場所に、その人を呼んで撮影する」必要があります。

場面が多ければ、移動が多くなるので、1日で撮影できる分量は驚くほどわずかです。

 

商業作品でなくても、撮影コストは掛かります。通常は「時間」で測ります。

関係者が、余暇の貴重な時間を使って撮影に協力してくれて、はじめて映像が出来ますが、余暇は限られています。

商業作品のように時間を使えないんです。

 

むしろ、「趣味の映画作り」のほうが、撮影時間の効率をシビアに考える必要があります。

ギャラを支払って関係者を拘束している状態と違って、撮影期間が長引くと負担だけが増えます。

出演者のやる気がなくなったりすると、撮影会自体が成り立たなくなります。

 

「趣味の映画作り」は「即効性のある楽しさ」が一番にないと、活動が続きません。

これは、私が長年掛かってたどり着いた結論です。

 

何人の人を何日拘束する必要があるか、という尺度で考えると、全面的にクロマキー合成を採用した場合、最大で数分の一の時間(人日)で、同じ分量の映像が作れることが分かっています。

圧倒的に関係者の負担が少なくて、完成までの期間も大幅に短縮できます。

これが、この手法にこだわっている理由の一つです。

クロマキー映像の短所

とはいえ、クロマキー映像は万能ではありません。

最大の欠点は、「合成が不自然になりがち」ということです。

 

特に、人物のクロマキー合成というのは、大胆な合成なので、「合成であることを全く観客に気付かれずに見せ切る」ということは、まず不可能です。

でも、考えてみてください。

舞台のお芝居では、ステージ上が現実の酒場でないことは百も承知の上で、「酒場のシーン」として認識して楽しんでいますよね?

 

同様に、その場面として認識できて、内容を楽しめれば、映像が合成だとバレても良いと思っています。

逆に言えば、合成が不自然過ぎて、

  • その場面として認識できない
  • 気が散って内容が味わえない

という事態だけは避ける必要があります。

 

クロマキー合成において、最大の課題は、「いかにきれいに被写体の輪郭を切り抜けるか」です。

これは、撮影時に注意するポイントがいくつかありますが、今回は割愛します。

 

実際にクロマキー合成を多用した作品を作ってみて分かるのは、

  • それなりに自然に合成できる映像
  • どうしても不自然になりがちな映像

が存在することです。

課題は、作品の中で「不自然になりがちな映像」をいかに少なくするかです。

 

不自然になる筆頭は、「足元」です。

まず、グリーンバック撮影の段階で、人物の足元がきれいに切り抜けるように撮影すること自体がなかなか難しい作業です。

その上、仮に、それなりにきれいに切り抜けたとしても、背景と合成したときに、人物が浮いているように見えがちです。

「影」の画像を作って合成したり、工夫はしますが、特に、歩いている足元を自然に見せるのは困難です。

構図の工夫で弱点をカバーする

庵野秀明監督が、構図と編集が良ければ静止画でも成り立つ、という意味のことを言っていました。

「動き」が最大の魅力と思われる、アニメーションでさえ、動き無しでも成り立たせるのが「構図」と「編集」という事です。

 

全くレベルは違いますが、クロマキー合成の弱点も、構図の工夫でカバーすることを提案します。

結論から言うと、「不自然になりがちな足元を、そもそも写さない」という事です。

 

乱暴な提案だとは思いますが、実は非常に現実的です。

 

ドラマや映画を見ると、構図は監督や撮影監督の好みによって、かなり違いがあることが分かります。

特に足元について注目しても、膝から下はあまり写さない、という作品も多いんです。

そこに不自然さは感じません。

クロマキー合成を多用した映画では、意識して足元を写さない構図を設計すると良いのではないでしょうか?

 

足元を一切出さないというわけではありません。

立ち止まっている姿であれば、十分に自然な合成映像が作れます。

例えば、足元が見えるロングショットでは立ち止まっていて、歩き始めるときにはバストショットに切り替える、というような構図にすることで、不自然に見えがちな「歩いている足元」の映像を違和感なく避けることが出来るはずです。

 

これを、「不自由な制約」と捉えるか、「面白いルール」として捉えるかで、クロマキー映画作りが楽しめるかどうかが決まって来ると思います。

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