制約で構図を諦めてない?・合成手法を組み合わせることで求める映像を作る

撮影現場は理想的環境ではない

先日、黒澤明監督作品「七人の侍」の撮影裏話の映像を見ていました。

この作品は世界中の映画人が影響を受けたと言われるほどですから、当然、メイキングの話も興味深く、面白いものです。

 

ただ、勘違いしてはいけないことがあります。

こういう映画は、超大作なんです。

観客としては大いに楽しむべきですが、自分が作り手になったときは、この撮影状況を真似しようと思ってはいけないんです。

 

具体的に求めてはいけないのは、超大作作品のように、常に「カメラの前に完成した映像と同じ状況を作る」ということです。

「カメラの前に状況を作ることこそ映画の醍醐味」という考え方が強いので、多くの映画は「この程度の面白さの作品なのにそんな大金が掛かってるの?」となるわけです。

「映画というものはそういうものだから、覚悟を決めて大金を用意しなさい」という考えには、私は大反対です。

また、予算に合わせて、こじんまりした小品しか作らない、という考えにも賛成しません。

普段から提案しているように、特撮を効果的に使って、低予算ながらも十分に見栄えのするエンタメ映画制作を目指すべきと、私は考えます。

 

大作映画は、大金を掛けて「現場の状況」を撮影に最適な形に改造します。

一方、私達の作る低予算映画の宿命は、「現場の状況に合わせて撮影する」ということです。

これは、大きな制約ではありますが、「特撮を応用する」という選択肢を持っていると、制約の中でそのアイデアを駆使すること自体も楽しみになります。

 

よくあるのは、撮影当日の現場に、ロケハン時には無かった「工事用の赤いコーン」が置かれているようなケース。

不道徳な製作者は、撮影時に勝手にどかしてしまったりしますが、言語道断です!

 

例えば、私は「崖」が好きなので、切り通しなどの崖の斜面をシーンに登場させたいと思うことがよくあります。

しかし、落石の危険がある箇所に「赤いコーン」と注意書きの看板が置かれていることが多いんです。

 

このとき、あなたならどう対処しますか?

 

多くの場合は、カメラを置く位置や角度を変えて、「赤いコーン」が映らない映像を撮ろうとするでしょう。

もちろん、それで問題なければ構いません。

でも、「赤いコーン」がカメラに入らないようにすると、「高い崖の前を歩く全体図」というような、本来欲しかった構図を諦めることになりがちです。

 

  • 映像の構成上、全体図が欲しい
  • でも、全体を撮ろうとすると「赤いコーン」が入ってしまう

 

状況にもよりますが、「構図」を優先して、つまり「赤いコーン」が写り込んでしまっても構わず全体撮影をして、編集時に「赤いコーン」を消すという方法を採ることが出来るかもしれません。

これは「赤いコーン」のように小さなものに限らず、「ショベルカー」のような大きなものでも同様です。

合成で「消す」前提で撮影する時の注意点

合成で不要な対象を「消す」と言っても、合成は不思議な魔法ではありません。

理屈としては極めて原始的な手法です。

だからこそ、基本を押さえれば色々と応用が効いて、映像の幅が出せます。

 

ここでは、撮影時の注意点を2つ挙げておきます。

一度作業をやってみないと、正確には一度失敗してみないと、実感できないかもしれませんが参考までにお読みください。

 

注意1:カメラは三脚に固定する

映像を合成するときは、カメラを固定するのが基本だと覚えてください。

今は、アフターエフェクツなどの効果処理ソフトを使って、手持ちカメラの映像にも合成できるようになってはいますが、そうまでして手持ちカメラ映像にこだわるべき状況は少ないはずです。

多くの製作者の場合、演出にこだわる以前の課題が山積みの筈ですから、ここは、基本に沿って考えましょう。

注意2:「消すもの」の前に人物を重ねない

「消す」という言い方をすると誤解されがちですが、合成で消すということは、要は、邪魔なものが隠れるように、上からシールを貼ることです。

そのシールが、背景に馴染む画像であれば、邪魔なものが消えて見える、という理屈です。

ですから、崖の前の「赤いコーン」に貼り付けるシールは、背景と同じような「崖」画像を切り抜いて作ったシールです。

 

ここで問題なのは、シールは実際には画面の手前に貼られているので、そこを人物が横切ってしまったりすると、人物の手前にシールが浮き出てしまう形になり、合成が破綻してしまうわけです。

ですから、カメラから見て、シールを貼る部分と人物はけっして重ねてはいけません。

これが原則です。

もちろん、人物が「赤いコーン」の前を通り過ぎてはいけないと言うことではなくて、「重なる部分は合成できない」という意味なので、撮影時に立ち止まる必要はありません。

フォトショップを使ったシールの作り方

合成用のシールの作り方を簡単に説明します。

シールは通常、画像編集ソフトのフォトショップを使います。

 

手順1:合成する映像から、静止画を書き出す

手順2:静止画をフォトショップで開く

手順3:フォトショップに新規レイヤーを追加する

手順4:新規レイヤー上に、隠したいものが隠れて見えるように画像を貼ったり、ブラシツールで色を塗る

手順5:邪魔な対象が隠せたら、作成した新規レイヤー以外を非表示にする

これでシールの完成です。

 

動画の編集時、該当映像の上に、このシールのファイルを重ねて配置すれば、邪魔なものが隠れた状態になります。

機会があれば、実例を動画で紹介していきたいと思います。

参考になれば幸いです。

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