ロケハンのポイント(特撮前提の場合)・単なる下見で終わらせないことでコスト削減

ロケハンが必要な訳

ロケハンというのは、簡単に言うと「撮影場所の下見」です。

これは、十分にやっておく必要があります。

下見をすることで、現実的な撮影計画を立てられますし、絵コンテも現場に即した形で用意できます。

 

撮影というのは、ただでさえとても時間の掛かる作業で、必要以上に長い時間を掛けると良いことは一つもありません。

少しでも、現場の撮影をスムーズに進めるには、ロケハンをすることで、その場所を「良く知っている場所」にすることがとても有効なんです。

それでも、撮影当日に工事が始まってしまっていたり、イベントと重なってしまって、予定通りの撮影ができなくなることもあります。

そんなときのために、次善策用のロケハンが出来ているかどうかも、撮影計画を大きく狂わせないために必要なことです。

ロケハン時に注意すること

シナリオに合う撮影場所を探すのがロケハンですが、実際にはイメージ通りの場所を見つけることは、なかなか大変です。

潤沢な予算や余裕のあるスケジュールで作る作品であれば別ですが、通常は、

  • ある程度、イメージに近いこと
  • 現場が比較的近いこと

という、主に2つの条件を満たす場所を探すことになります。

 

このロケハンで、注意したいことがあります。

それは、その場に立って感じる雰囲気だけで判断せず、必ず、カメラを使って景色を映像として切り取りながら判断するということです。

 

例えば、

「切り立った険しい崖。足場の悪いところを歩く」

というシーンを撮りたいとします。

「そういう場所がないか?」と聞いて回ったときに、釣り好きの知人が、「ぴったりな所があるよ」と教えてくれるかもしれません。

彼は、釣りをするために、海岸の岩場を良く通っているからです。

 

ロケハンに行ってみると、なるほど険しい崖です。

半ば、崖にへばりつくようにして先に進む感じなど、まさにシナリオのシーンにピッタリです。

「いい場所を見つけた!」とあなたは思うかもしれません。

 

でもちょっとまってください。

このロケハンは、小説のイメージを取材するためのロケハンではありません。

撮影場所を探すためのロケハンです。

 

実際にカメラを使って、本番さながらの構図で仮の撮影をしてみようとすると、意外と撮影できる映像が少ないことに気付くかもしれません。

実際に険しい崖で、「険しい崖であることを感じさせる映像」というのは、実は撮りにくい事が多いんです。

登場人物も、カメラマンも、崖にへばりつくことになるので、客観的な映像がほとんど撮れないからです。

 

本番当日、何時間も掛けてこの現場に来て撮影した映像に、コストに見合うだけの価値があるかどうか、よく考える必要があります。

完成した作品を見せながら、「映像じゃ分かりにくいけど、ここは凄く険しい崖なんだよ」と説明するのは愚の骨頂です。

それを避けるためにも、「必ずカメラを通して景色を見る」ということをオススメします。

映像として、求めている雰囲気が出るかどうかが全てだからです。

 

逆に言うと、現場に立って見渡すと、パッとしない景色だったとしても、カメラで切り取ることで、欲しいイメージに近い場所に化けることもあります。

 

私はよく、近所の自然公園の中の石垣部分を使って

  • 険しい崖
  • 危険な洞窟

のシーンを、手軽に、安全に撮影しています。

これなどは、カメラで景色を切り取ることで得られる、架空のシーンです。

カメラのすぐ横では、近所の子供が水遊びなどしている状況です。

 

私は、楽に撮影したにも関わらず、それらしい画面に仕上げられることこそ、映画の面白さだと思っているので、コストの掛かる過酷な撮影は全くオススメしません。

特撮前提のロケハンにはコツがある

シナリオのイメージに合う場所を探すロケハンですが、低予算映画の条件を考えると、なかなか理想的な場所が見つからないシーンも多いと思います。

そんなときこそ、「特撮」の出番です。

 

実用的な特撮手法には、大きく分けて

  • グリーンバックで人物を撮影して景色と合成する
  • 景色と人物を現場で撮影して、景色に別の要素を合成で付け足す

という2通りがあります。

今回は、グリーンバックを使わない手法で考えてみます。

 

景色と人物を撮影して、景色の中に別の要素を合成する手法は、いくつかの点に注意すれば、比較的簡単に出来ますし、結構、自然でリアルな映像に出来ます。

そんな、合成映像を前提にする場合、どういう点に注意しながらロケハンすれば良いでしょうか?

 

例えば、例として、軍艦島が舞台だとしましょう。

いわゆる、無人のゴーストタウンで、遺跡に近い印象の場所です。

 

もちろん、軍艦島に似ている場所が近所にあれば、ベストなんですが、そう都合よくいかないところで工夫をするのが、映画作りの面白さです。

 

最終的には、ビルの上階や瓦礫を合成することで、擬似的に軍艦島のシーンを作るわけですが、課題となるのは、「合成しやすい場所」で人物を撮影することです。

具体的に言うと、「人物と重なる背景だけ意識して場所を探す」ということです。

 

軍艦島の通りを歩いているシーン。

登場人物を自然なバストショットで撮ると、背景には建物の1階部分が重なります。

この「重なった部分」には合成が出来ません。

人物と重なっていない部分、例えば、建物の上階は、いくらでも合成が出来ます。

それらしいミニチュアセットを用意して、角度や光の状態を合わせて別撮りした画像を、比較的簡単に合成できるんです。

 

つまり、ロケハンとして意識すべきは、「建物の1階部分だけでも軍艦島に見える場所」を探すことなんです。

それは、古い団地の建屋前かもしれませんし、コンクリート製の橋脚の前かもしれません。

いずれにしても、その場全体が軍艦島に見える必要はないんです。

 

別パターンの構図として、仮に、やや上方からのカメラで「通りの中央を歩く人物」という映像を作る場合、人物と重なるのは地面だけです。

つまり、地面の色や状態が「軍艦島っぽいところ」なら、撮影場所として使えるわけです。

 

こういう視点で考えると、ロケハンの概念が変わってきませんか?

 

ちなみに、合成するための、軍艦島特有の廃墟のミニチュアセットは用意する必要はありますが、怪獣映画のように、その「場」全体のミニチュアセットは全く必要ありません。

建物のミニチュアをいくつか作って、角度を変えて撮影すれば、別の建物として使用できるので、数も最低限でOKです。

一つ一つのミニチュアの縮尺も揃える必要はありません。

映像の中で縮尺を揃えれば良いからです。

上手く撮影して縦に合成していけば、2階建ての建物のミニチュアを使って、10階建てのビルにも出来るでしょう。

また、ミニチュアセットだけでなく、写真も合成できますし、上から絵を描くことも出来ます。

工夫をして、コスパよく、欲しい映像を作っていきましょう。

 

もう一度まとめると、合成を前提とする撮影場所のロケハンでは、「全体的な雰囲気」ではなく、

  • 人物が立つ地面
  • 人物が重なる背景

この2点にのみ集中して、場所探しを行うことがポイントと言うことです。

 

普段から、この視点で近所の場所を把握して、頭の中にストックしておくと、作品の実現性がぐっと高まると思います。

 

参考になれば幸いです。

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