特撮事例:ブレードランナー風 高層ビル室内

自主映画で「ブレードランナー」を再現する

根強い人気のあるカルト映画「ブレードランナー」は1982年のリドリー・スコット監督作品です。

この監督は自分で設立したコマーシャルフィルム制作会社で、数々の映像派CMを制作したのち、映画監督として2作目の「エイリアン」(1979)が大ヒットして、3作目として「ブレードランナー」を監督しました。

 

独特の映像美に影響された人も多い、この作品には、印象的なシーンがいくつもあります。

今回は、その中でも、「特撮で作ると有効なシーン」の一つ、「夕焼けが見える高層ビルの一室」の画面作りについて考えてみます。

 

簡単にどういう場面か説明します。

  • 舞台は巨大は超高層ビル内の広い一室
  • 時刻は夕暮れ時で、窓の外には壮大な夕焼け空が見える
  • テーブルをはさんだ椅子に2人の人物が向かいあって会話している

こんな場面です。

 

そもそも、このシーンは、映画的なトリックを使わなければ撮影できません。

その理由が分るでしょうか?

 

実際に高層ビルの中の、夕焼けが見える広い部屋が撮影に使えたとしても、このやり取りはまず撮影出来ないんです。

ネックになるのは「夕焼け空」です。

 

きれいな夕焼け空は非常に画面映えするので、是非、作品中に使いたくなりますが、写真を一枚撮るのと違って、人と人のやり取りを数カットかけて動画で表現するとなると、正味1分間のシーンのために、撮影時間は大体1時間掛かります。

これは大げさではなく、ごく普通のペース(むしろ早い方)だという事が、実際に映画を作り慣れてみると分かります。

 

当然、きれいな夕焼け空は1時間も持ってくれません。

1カット目で背景に映り込んでいた窓からは夕焼けが見えますが、6カット目の窓の外は真っ暗になっているはずです。

 

そういうわけで、このシーンを成り立たせるために、特撮の出番となるわけです。

大規模な特撮 vs マイクロ特撮

ある一つの映像を完成イメージとして思い浮かべたとき、それを実現させるための特撮手法として、様々な選択肢があります。

例えば、この場面であれば、「窓の外の夕焼け空」だけをネックと捉えて、空の映像を窓の外のスクリーンに投射する方法が考えられます。

舞台演劇のような感じで、出演者にとっては、完成イメージそのままの空間で芝居が出来るわけですから、気分も乗るでしょう。

撮影する側も、そのセットの中で、撮影プランを自由に変更できるメリットもあります。

 

ただ、このやり方は、私たちのようなDIY映画製作者にとっては、非現実的です。

私は、こんな大掛かりな特撮は絶対にやりません。

やってやれないことはないかもしれませんが、ちょっと想像できないくらいのコストが掛かるからです。

その1シーンの費用があれば、10本くらいの作品を完成させられるでしょう。

 

私たちDIY映画製作者が追求すべきは、もっと小規模な「マイクロ特撮」です。

1/100くらいのコストで、似たような映像が作れた方が、痛快じゃありませんか?

 

ここからは、MVG流のマイクロ特撮を使って、この場面を実現させるシミュレーションをしてみます。

ミニチュアセットを最大限に活かす

まず、舞台となる広い部屋。

これはミニチュアセットで対応します。

 

ミニチュアセットの使用は、もちろんコスト面の理由もありますが、「イメージ優先」で作品を形にしたい場合、とても有効なんです。

  • もう少し天井に高さが欲しい
  • 窓枠のデザインが気に入らない
  • 備え付けの什器やドアが邪魔
  • 床はカーペットじゃなくてタイルがいい
  • カメラをもっと下げたいが壁が邪魔

こんな、撮影現場での不満は必ず出ます。

 

現場で妥協点を見つけて撮影することになりますが、多くの場合、「引きの映像の構図」という印象的なイメージを諦めることになります。

「映像の構図」をイメージ通りにしたいのであれば、ミニチュアセットは非常に効果的です。

 

ミニチュアのスケールは正確でなくても構いません。

このシーンであれば、1/20くらいで十分でしょう。

1/40くらいでも使えるかもしれません。

スケールが1/2になると、面積は1/4、体積は1/8になりますから、リアルに見えて工作がしやすいことを考慮しつつ、出来るだけミニチュアセットは小さい方が望ましいんです。

 

室内セットは、天井、床、壁、窓で構成しますが、それぞれバラバラの部品として作り、撮影時にクリップなどで仮止めするようにすると、保管も楽です。

このセットの場合、窓に工夫が必要かもしれません。

夕焼け空の光が室内に差し込むので、窓の裏から光を透過させる形にします。

窓枠にトレーシングペーパーを貼って、裏からライトを当てて、室内に光が入る状態にします。

こうすることで、外光が斜めの角度で窓から室内に入り込んでいる様子が表現できます。

ミニチュアの撮影と合成

事前に用意した絵コンテに従って、ミニチュアセットの撮影をしていきます。

これは、人物映像の背景になる映像ですから、当然、人物はいなくてOKです。

「ここに人物を後から合成する」と想像しながら撮影します。

 

夕焼けの光ということで、オレンジ色の照明を当てたくなるところですが、色はどうせ、後で調整することになります。

撮影時は、光の色については考えず、通常の白い光を使います。

考慮するのは、光の角度と強さだけです。

これは、のちに撮影する人物のグリーンバック撮影でも同様です。

 

必要なミニチュアセット撮影が済んだら、動画編集ソフトでの編集作業で「夕焼けの光」を表現していきます。

まずは、色調整・コントラスト調整で、イメージする光の状態に合わせます。

撮影時に光の角度さえしっかりリアルにしてあれば、色調整でかなり「夕焼けが差し込む室内」の雰囲気にはなるはずです。

 

次は夕焼けの合成。

事前に用意しておいた夕焼けの画像を、窓のトレーシングペーパーの部分に合わせて切り抜いて合成します。

この夕焼け画像と、室内の光のバランスの調整が、このシーンのポイントと言えるでしょう。

人物のグリーンバック撮影と編集

絵コンテに従って、人物のグリーンバック撮影を一人ずつ行います。

手前の人物の肩ごしにもう一人を写すなど、複数の人物が登場する映像でも、一人ずつ分解して撮影します。

理由は、「手前の人物」など、ピントがボケた被写体は、きれいに合成できないからです。

ピントをぼかしたい被写体は、合成後にボケを加えるのが基本です。

 

人物は全身(または半身)が画面いっぱいになるようにして撮影します。

画面の中で小さく映り込んでいる人物などの場合も、撮影時は人物を画面いっぱいにしておきます。

「合成編集時に背景に合わせて縮小するもの」と覚えてください。

 

テーブルに手を置いたりする場合は、ミニチュアのテーブルの映像に手を自然に合成しようとすると、合成の難易度がぐっと上がってしまいます。

そういう場合は、テーブルの上面だけは実物大で用意して、人物と一緒に撮影するのが無難です。

テーブルに手を置いたりせず、小道具にも触れないのであれば、テーブルや小道具はミニチュアの映像がそのまま使えます。

 

人物をミニチュアセットの背景に合成し、やはり夕日の色に合わせて、色調整・コントラスト調整をすれば、このシーンはかなりイメージ通りに仕上がるはずです。

 

  • ダイニングテーブルの上で撮影できる程度のミニチュアセット
  • 人物のグリーンバック撮影が出来る環境

これだけで、「ブレードランナー」のあの場面を再現する方法を解説しました。

 

参考になれば幸いです。

「こんな場面を作りたいが、どうすればいいか」という質問があればお寄せください。

グリーンバック映画入門のご案内

MVGでは全編、グリーンバック撮影した人物を背景に合成して映像を作る、「グリーンバック映画」の研究・推奨をしています。

グリーンバック映画は、超低予算でイメージ優先の映画を作れる可能性がある手法です。

ご興味のある方は、下記のudemy講座を受講してみてください。

「グリーンバック映画入門」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です