模型をリアルに見せる裏技・精巧なミニチュアセットが実物には見えない理由と対処

ミニチュア表現が苦手な要素

以前にメルマガで「ミニチュア感を消す魔法の小人」という内容を紹介しました。

 

いくら良くできたミニチュアセットでも、どうしても「ミニチュア感」というのはぬぐえないもの。

でも、そのミニチュアセットの地面に、歩く人物の映像をデジタル合成したら、途端に脳が騙される、という感覚が発生します。

 

これと同じ理屈ですが、ミニチュアをリアルに見せる方法をいくつか考えてみたいと思います。

 

乗り物や建物、地表の様子などは、比較的、ミニチュアが得意とする分野です。

精巧に作られたミニチュアは、それだけで本物と見間違えさせることが出来るかもしれません。

 

いわゆる「特撮映画」はもちろん、特撮を売りにしているわけではない、普通の映画でも、実はミニチュアセットを使って作られている映像は、実はたくさんあります。

特撮映画と違って、アラを探す無意識の準備をせずに見ることになるので、特撮好きの私なども、完全に騙されて、全く気付かず、後からミニチュア撮影であることを知って驚いたりします。

そういうミニチュアシーンは、大抵、ミニチュアが得意とする分野でも映像です。

 

では、ミニチュアが苦手とする分野はどういうところでしょうか?

「苦手」というのは、「どうしてもリアルには表現できない部分」という意味です。

 

これは、縮尺に合わせて小さくできない要素がまず挙げられます。

その代表が、「炎」です。

 

ミニチュアセットで精巧な10分の1の松明(たいまつ)を作ったとします。

松明の外観は、本物そっくりに出来ていたとして、実際に火を付けられる材料で作られているとしても、それに火を点けたとたん、10分の1のミニチュアであることが強調されてしまいます。

炎は10分の1の大きさになってくれないからです。

 

焚火なども同じで、実際は炎の形が複雑に変わりますが、10分の1のミニチュア焚火では、炎はロウソクの炎のような形にしかなりません。

ですから、建物が火事になっているようなシーンで、ミニチュアセットを燃やして表現するような場合は、ミニチュアといえども、かなり大きなもの、3分の1くらいの模型を使わないと、興ざめという事になってしまいます。

 

水の表現も同様です。

昔の戦争映画などでは、船のミニチュアが出てくる場面の最大の課題は、「波」のスケール感でした。

細かな泡が出るような洗剤を水に混ぜる、という工夫はしても、どうしても舳先の水しぶきなどは、相対的に水の粒子が荒くなり、船の模型が実際には小さいことを示してしまいます。

水の表現も、ミニチュアが苦手とするものと考えていいでしょう。

苦手な要素を逆手に取る

火や水といった、小さくできないものを伴うミニチュアは、リアルな表現ができません。

ですから、「火や水の表現は避ける」というのがこれまでのアナログ時代の常識です。

 

しかし、実は、普通はミニチュアでリアルに表現できないからこそ、それを逆手に取ったとき、完全に観客を騙すミニチュアシーンを作れる可能性があります。

 

種明かしをしてしまえば、「絶対にミニチュアセットでは表現できない部分」のみ、本物の映像をデジタル合成してしまうという手法です。

 

例えば、炎を使った場面を考えてみます。

それぞれベースは、ミニチュア撮影だとします。

実際は炎は光源でもありますから、ミニチュアセットの中の炎の部分に電球を仕込んだりして、光が周りを照らすような構造にする必要があります。

 

合成する炎は、完全に別撮りで、映像素材を用意しておく必要があります。

炎の大きさは、ある程度、設定通りにする必要があります。

大きな焚火の設定であれば、実際に大きな焚火を撮影するということです。

 

この撮影は、キャンプ場や海岸など、安全なところで行います。

夜、できるだけ暗いところで「炎以外は真っ黒」という撮影ができれば、映像素材としては完璧です。

 

映像のデジタル合成は、グリーンバックを使った「クロマキー合成」をはじめ、様々な種類の合成があります。

「明るい部分だけ抽出して合成する」という機能は、炎の合成には最適です。

 

例えば、「テントの前の焚火」という場面のためにミニチュアセットを作った場合は、焚火の中央に電球を仕込んで、炎の回りを放射状に照らすようにして、下地を撮影します。

そして、別撮りした炎を焚火の位置と大きさに合わせて合成します。

コントラスト等の調整をしっかり行えば、本物なのは炎の映像だけにも関わらず、ミニチュアセットはリアルなものになるでしょう。

 

例えば、「暖炉のある洋間」などは、ドールハウスレベルの精巧さだとしても、暖炉の中の炎が本物の炎の映像であれば、途端に、ミニチュア感が消えて、かなりリアルなミニチュアセットに見せることが出来るはずです。

 

このように、炎などは本来、ミニチュア撮影が苦手とする要素なだけに、逆に利用すると、かえってミニチュアをリアルに見せる要素になり得ます。

これが、デジタル合成が手軽になった現代、私が追求すべきと考えるミニチュアシーンの作り方です。

参考になったら記事をシェアしていただけると幸いです。

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