撮影のコツ・ズームを使わない
ストレスの溜まる映像に共通する特徴
今回は、ビデオ撮影全般に共通する「コツ」について一つ、お話しします。
映像は非常に情報量が多くて魅力的ですが、写真と違って、失敗すると非常に見づらいものになります。見ていられない、ストレスの溜まる映像になってしまうんです。
私は、仕事として、他人が撮影した映像を編集して仕上げることもやっています。例えば、「結婚式・披露宴の映像を撮影してきたので、編集してまとめてください」というような依頼を受けます。その時に、撮影が上手な人と、非常に下手な人がいます。
ほぼ傾向があって、下手な人は、「ビデオカメラ」を使って撮影した時に、「ズーム」を多用しています。ズームは、映像がアップになったり、広く全体を写すような映像になったりという、切り替えが出来る機能です。
ビデオカメラを使い始めの頃は、この「ズーム機能」が非常に面白いので、使いたくなるものなんです。
観光地に行くと、展望台に双眼鏡、望遠鏡の類がありますよね。向こうが大きく見えるだけで、面白がって覗いてしまうものです。ズームアップをするということ自体に、魅力があるわけです。
特に、結婚式・披露宴のようなパーティーの席だと、「人の表情をもっとはっきり見せよう」としてズームアップしたくなる気持ちは分かります。
ところが、アマチュアカメラマンがズームアップした状態で撮影をするのは、実は「至難の技」なんです。おそらく、プロのカメラマンでも、ハンディカムのような小さなビデオカメラを使って、ズームアップをした映像というのはうまく扱えないでしょう。
「動いている相手をズームアップした状態で綺麗に捉える」などは、非常に難しい技術です。まして、「ズームアップした状態で、自分が歩きながら撮影する」というようなことは、プロのカメラマンでも絶対にやりません。綺麗に撮れるはずがないんです。
結論を先に言ってしまうと、「ズームアップは使わない」。これが正解です。
「披露宴のビデオを編集して下さい。撮影はスマホの映像ですが、大丈夫でしょうか?」というようなことを言われることがあります。
実際に編集してみるとよくわかりますが、スマホで撮影した映像の方が遥かに綺麗なんです。「綺麗」というのは画質のことではなくて、映像として安定しているということです。安定の理由は、ズームしていないからです。
ハンディカムで、自由自在にズームレバーを使いながら撮影した、見づらい映像と違って、スマホで撮ると、基本的には全体を広く映しています。「アップにしたければ近づいて撮る」という映像になっていることがほとんどです。
この「大きく撮りたければ、近づく」というのは、実は撮影の鉄則で、これが正しい撮り方なんです。そうすると手ぶれが少ない、安定した映像になります。
ですから皮肉なことに、高価なビデオカメラで撮影した映像より、スマホで撮った映像の方が、結果的に綺麗なビデオコンテンツとして仕上げられる、という特徴があります。
最大のコツは、ズームを使わないこと
私は「失敗しないビデオ撮影の方法」について教材も販売したりしていますが、最も失敗の率を低くする方法は、この「ズームを使わない」ということです。
あなたがもし、何かの撮影を担当するとなった時には、出来る限り「ズームアップ」は使わずに、広い構図で撮影してください。もっと対象を大きく写したければ、近寄って撮影することを心掛けるだけで、格段に失敗が減って見やすい映像になります。
もちろん、運動会のように、対象に近づいて撮影することができない場合もよくあります。やむを得ずアップにする場合は、とにかくカメラを動かさないことです。
撮影したビデオ映像が見づらいと、見直す機会もないですし、人に見せることも少なくなります。
「見づらいビデオより写真の方がいいよね」というようなことになりがちです。
ストレスのない映像を撮ることが、ビデオを楽しむコツです。そのためには、「ズームはなるべく使わない」ことをお勧めします。