安心させる仕事 信用をなくす仕事
制作の仕事はチェック担当者とのキャッチボール
私は、サラリーマン時代、制作の仕事をしていました。
- 計画を立てて
- 制作をして
- 資料を作り
- それを決められた納期に納める
というような仕事です。
最終的な納期は、もちろん絶対です。その前に、何度も「途中の状態」をチェックしてもらうタイミングがあります。制作物であれば、初校、2校、3校、という形で、資料を見てもらうわけです。
チェックをしてもらって、新しい情報をもらったり、修正点を指摘してもらい、それを直すことで、だんだんと完成形に近づけていきます。これが制作の仕事です。
遅れがちになる制作現場
多くの業界において、「コスト削減」が必須になっていて、同じ内容の仕事でも、以前と比べて短期間で作らなければいけないことが多くなっています。ですから、期日に昔のような余裕が全くありません。
これは、制作物を作る側だけの問題ではありません。制作物を作るにあたって、「必要な情報」をクライアント側から提供する必要があるんですが、その提供も、「なかなか期日通りにできないと」いう状況があります。予算削減で、設計が遅れているとか、まだ情報を出せる状況まで固まっていない、ということで遅れがちになります。
「約束の日に材料が来なかったので、成果物は期日に出せませんよ」という、杓子定規なやり方は、大抵の場合、通用しません。なんとかやりくりして、最終的な納期に間に合うための協力と工夫が必要になってきます。
途中のチェック用の校正物の納期が遅れてしまう、ということは発生してしまいます。制作コストが限られてますから、人員も投入できません。「3人がかりでやれば済むじゃないか」と言われても、そんな制作費は出ないわけす。
例えば、「金曜日にチェック用の原稿を送ります」という約束で作業をしていたとする。
金曜日になって、「すいません。できませんでした」これは最悪です。チェックをする側は、「金曜日に原稿が来るから、そのチェックのために時間を作っておく」というような体勢になっていますから、それが全て無駄になって、損害を与えることになります。
「ギリギリまで頑張ったけど、できませんでした」ということを、「ギリギリに言う」のは論外です。
遅れる場合はどうすればいいか
例えば、水曜の段階で
- 予定は金曜に全てをチェックに出す予定でしたが、このペースだと、どうしても間に合いません
- 予定より1日前倒しして、木曜日に前半だけなら渡せます
- まず、前半からチェックを始めてもらえませんか?
- 後半は週明けの月曜には出せます
というような提案が必要だと思います。
実際問題として、文量が多い校正物のチェックには、数日かかるものです。前半だけチェック用に渡して、二日後に後半を送る形にしても、チェックは滞らないことも多いんです。
「現場レベルで、そういう納期がらみの交渉を勝手にするな」というような考え方もあるかもしれません。私も、そういう批判を受けたことはよくあります。それでも、直接、お客さんとやり取りをする上で、そういう交渉・提案をする方が、トラブルが少なくなります。
古いタイプの会社で仕事をすると、「一生懸命やったかどうか」で大目に見る風潮があります。一生懸命やったかどうかは、本来どうでもいいことです。
物理的に間に合わない時に、どういう対策をとるかが大事です。
逐次先延ばしは最悪
ギリギリになって「できませんでした」という報告は論外だと言いましたが、ズルズルと先延ばしするのも大問題です。
例えば、
- 金曜日の朝一番に送る予定だった
- その時間になって、「すいません。なんとか午前中には送れると思います」と言って時間を稼ぐ。
- そして昼になると、「すいません。なんとか3時頃までには出来ると思います」と言って時間を稼ぐ。
- 3時になると、「なんとか6時までには」。
- 6時になると、「なんとか今日中には」。
そう言って延ばし延ばしにして、時間を稼いで仕事する人は、それが癖になっています。それが悪いことだ、という認識がないんです。
相手にとっては、全く予定が立たない。朝一番に原稿が来る予定であれば、場合によっては複数のチェック要員を用意して、一気にチェックを進めようと準備していることもありえます。それがズルズルと先延ばしされることによって、非常に無駄なコストがかかるわけですから、やってはいけないんです。
制作をする人で、ズルズルと予定を延ばしてしまう人の特徴は、「自分がすっきりとそれを手放したい」という意識が強いということがあると思います。「全部いっぺんに、綺麗に原稿を渡して、自分の手元に何も残ってない状態にしたい」というエゴのために、相手に迷惑をかけていることが非常に多いと実感しています。
作業者のエゴは、全体から見てコストが高く付きます。そういう作業のやり方は、確実に信用をなくします。
会社で働いていると、その人に仕事が回ってこなくなるということはないでしょう。せいぜい「担当を外れろ」と言われるくらいです。会社は、別の仕事を当てるはずですから、食い扶持に困ることはありません。
ところが、フリーランスの立場、個人起業家の立場で、この作業のやり方をすると、次からはもう仕事はありません。
相手に、
- この人に任せると予定が立たない
- コストが高くつく
と判断されるわけです。
次の工程のことを考えない仕事のやり方は信用をなくします。
遅れる場合を見越した進め方を決めておく
前提条件に無理がある作業は多いですから、「遅れる」のは仕方ないと思います。もちろん、出来もしないことを「できます」と嘘をついて、実際には全然できないということであれば、これは大問題です。
あらかじめ、作業の状況を聞いて、
- 条件が揃っていれば予定通りできます
- ただし情報提供が遅れたりすると厳しくなってきます
- 厳しくなってきた時には、こういうやり方でのやりくりに、協力をしてもらえますか?
というようにあらかじめ言っておけば、大問題にはならず、かえって「安心して仕事を任せる相手だ」と思ってもらえるでしょう。
参考になれば幸いです。