正しい分業の仕方

ある制作作業の例

私は、長年、ドキュメント制作(マニュアル制作)の仕事をしていました。文章を書いたり、イラストや画像を作成して、レイアウトされたページのデータを作る仕事です。

その作業の中で課題となるのは、「同じ時間で、いかに多くのものを生み出すか」という高い生産性です。特に近年では、全ての作業で予算がどんどん縮小されています。去年と同じ品質のものを作る時に、「使える時間」が、どんどん短くなっているわけです。

「短い時間で同じものを作らなければいけない」となると、当然、「作業の効率化」が重要になります。

個人起業家であれば別ですが、会社のような組織で制作の仕事をする場合は、作業者が複数います。同じような能力を持った作業者が、例えば4人いる。全体として、こなさなければいけない、「ある程度の分量の作業」があった時に、その作業者に作業を振り分けます。

この時にやってしまいがちなのが、「作業を4等分して、それぞれを担当者に任せる」というやり方です。これは、「作業進捗のの管理がしやすい」というメリットはあります。しかし、作業効率の観点から言うと、何もプラスになっていません。

単なる割り算では数のメリットが出ない

例えば、一人で行えば40日かかる作業があるとします。それを4人で手分けすると、10日間で終わることになります。これは、単なる割り算の結果です。4人で取り掛かっているだけで「効率」は全く上がっていません。

せっかく、複数の人間がいるわけです。それぞれの「得意分野を活かした分業」を何故意識しないのでしょうか?

例えば、説明書を作る場合、まず最初に、対象の内容を把握します。そして、把握した内容を「文章の形」に書き起こします。把握した内容のうち、視覚的に説明したほうがわかりやすい部分は「イラスト」を併記します。

説明書には、大きく分けて

  • 文章
  • イラスト

があるということです。

4人の作業者が、説明書ごとに分担して作業をすすめると、一人の人が「文章」と「イラスト」を作成することになります。ところが、最終的には同じような品質のものに仕上げられるとしても、作業者によっては、文章が得意な人もいれば、イラストが得意な人もいるわけです。

「得意」だと、同じ品質のものを、より短い時間で仕上げられます。

例えば文章が得意な人は、初めから「完成度の高い文章」が書けます。その場合、修正が少ないですから、仕上げる時間は短くて済みます。

文章が苦手な人は、途中で文の構成を修正したり、文法上の間違いを直したりといった、修正に時間がかかってしまう傾向があります。

イラストにしても同じです。イラストを仕上げるのが早い人と、遅い人がいます。

得意を活かすのが最も効率的

せっかく複数の作業者がいるわけですから、それぞれの説明書作成を一人一人で抱え込むのは避けましょう。

文章が得意な人は文章を書く。イラストが得意な人はイラストを描く。

こういう「分業」が全体にとって得になります。

分かりやすく言うと、2つの説明書を作る仕事が目の前にあるとします。

一人でそれをこなすためには、20日間かかる。作業者は二人います。

一冊ずつ手分けをすると、10日で2冊の説明書が完成します。二人がかりにすると、完成までの期間は、当然、半分になりますが、効率は全く上がっていません。

もし、この作業者の一人は、文章が得意で、もう一人はイラストが得意だとしたらどうでしょう?

一人一冊でなく、二人で二冊の説明書を作るために、作業内容を分担してみます。その場合は、文章が得意な人が2冊文の文章を書きます。イラストが得意な人が2冊文のイラストを作る。そうすると、わずかずつだとしても、「効率」が上がるはずです。

1冊ごとに手分けした場合は、10日間で2冊の説明書が完成します。ところが、それぞれが得意分野を生かして、「二人で二冊」という形で手分けをすると、9日間で2冊のマニュアルが完成する可能性があるわけです。

効率が、1割アップしています。

もし、得意不得意に差がなかったとしても、作業内容で分担することには意味があります。同じ作業の繰り返しは、思考の切り替えが少なくて済むので、作業効率が格段に上がるからです。それは、工場の生産ラインを見ても明らかです。

同じ種類の作業をした方が、時間も短縮され、品質も上がります。

会社においては、

  • 売上を上げろ
  • コストを下げろ

という号令がかかる割には、それまでにない新しいやり方を使って効率を上げる、という試みに、多くの場合、非常に消極的です。

現場の作業者たちも同様。いつものように頭を使わずに、惰性で仕事をしたいわけです。結果、効率化は実現しません。

当然、「作業の管理」は複雑になります。情報交換しないと、進捗も把握できないからです。

しかし、

  • 昔ながらの仕事のやり方を続けたい
  • 作業管理のための情報交換が面倒

という理由で、非効率的な作業を続けて、苦しんでいるのは滑稽ですらあります。

分業化の別のメリット

分業化すること別のメリットも生まれます。例えば、標準化。

手分けをしてしまうと、同じ内容にもかかわらず、微妙に「表現の方法」が変わってしまったりすることがよくあります。もちろん「基準書」は用意しますが、その範囲内であったとしても、微妙に表現が違ってくる。

そうすると、本来、同じ表現でよかったはずのものが、二通りの文章になります。

翻訳作業を通して、外国語版のマニュアルにする時に、「違う翻訳文」になるんですね。そこを統一していれば、翻訳代の節約にもなる可能性があるわけです。

様々なメリットを考えても、作業は、「作業者の得意分野を元に手分けをする」ということが望ましいと思います。

参考になれば幸いです。

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