商売を卑しいと思う人々
「セールスお断り」は自分勝手?
営業のために名刺交換をしたりして、連絡先を交換することがあります。相手によっては、「自分は宣伝したいけれども、セールスされるのはお断り」という態度をとる人が一定数います。
それはちょっとおかしいだろう思います。端的に言って、身勝手だろうということです。
消費者代表とは?
「私たち消費者は」という言い方を時々聞くと思います。しかし、「一方的な消費者」というのは、それほどいないはずなんです。
例えば、資産が十分にあって、貯金を切り崩して一生過ごしていける人は、完全な消費者です。一般の人は、買い物をする時には消費者ですが、働いている時は何かの生産者です。
物を作って売っているかもしれないし、サービスを提供して、その対価を得ているかもしれない。消費者に向けて「売る立場の人」です。
「商売」に対するネガティブ感情と教育不足
「セールスお断り」というのは、「商売」というものを「卑しいものだ」と考えている意識の表れです。
世の中の多くの部分は、商売で成り立っています。それにも関わらず、「商売」が見える事を非常に嫌う風土があるんですね。
学校教育でも、商売の仕組みはリアルな形で教えられていません。
サラリーマンという働き方の特徴
大多数の人は、学校を卒業してサラリーマンになります。サラリーマンというのは、あたかも学校のように、毎日会社に行って、授業を受けるかのように作業をすることによって、毎月給料が振り込まれるという仕組みです。
自分のやっていることが、どういう仕組みで商売になった結果、報酬を得られている、ということを知らずに、つまり、「商売」に関して、まったく無知のままで通用してしまうのが、サラリーマンという働き方です。
高度成長期はこれでよかったんです。
- 人口は増える
- 需要は増える
- 相対的に物が足りなくなる
そんな時代は、効率的に物やサービスを生み出す「サラリーマン」を大量に養成することは有効でした。細かな商売の仕組みを考えず、目の前の仕事をこなしてくれれば、仕事が成り立った時代です。そういう時代においては、サラリーマンが最も無駄のない働き方だったんです。
現在は様々な転機を迎えています。
頭を使わなくても成り立っていた、会社員・サラリーマンに対して、会社は、
- もっと工夫をしなさい
- 何かアイデアを出してください
というような要求をするようになりました。
ところが、今までは、頭を使って工夫をすることが望まれていなかった状況でしたから、サラリーマンとして生み出された人たちは、急に「提案しろ」と言われてもできません。
商売の仕組みを教わらない弊害
そもそも、学生の頃から「商売の仕組み」が分かってません。
例えば、コンビニでアルバイトをしている学生。
「トイレを貸してくれ」という客が、その後でガムとか、何か小さな買い物していく光景があります。それに対して、「お礼のつもりかもしれないけれども、面倒。何も買わずに、トイレだけ使って帰ってくれればいいのに」とSNSにアップロードしているのを見たことがあります。
これは、「自分のバイト代は、決まった時間、そこに立っている報酬だ」という勘違いから生まれることです。
当然ですが、物販は物が売れることで利益が上がります。その利益の一部を、従業員の給料に当てているわけです。そういう小さな売り上げの積み重ねがなければ、そのアルバイトに払う給料は生まれません。「レジ打ちの仕事が面倒くさいから、客が来なければいいのに」というような発想自体、「商売の仕組み」を考えたら、出るはずがないんです。
他にも、「スポーツや芸術の世界で活躍したい」という人たちも、あまりにも「商売の仕組み」を考なさすぎると思います。美術大学を出て、結局、絵が1枚も売れずに画家を廃業する人が非常に多いと聞きます。
スポーツでも同じ。
一部の観客の多い人気スポーツであればともかく、そうでないスポーツは、選手としての能力は高くても全く商売にならないものが多い。それは、そのスポーツをやって、「どういう仕組みにで商売になるか」ということを考えていないからです。
極端に言えば、スポーツというのは見世物の要素が強い商売です。訓練された選手の活躍を見て、喜ぶ観客がいる。だから、そこで落とされたお金が関係者の手に入るという商売です。それを考えれば、ただ単に、そのスポーツだけやってればいいという発想にはならないはずなんです。
例えば、
- 観客に対するファンサービスがどれだけ重要か
- 自分がメディアに登場してそのスポーツの魅力を伝えるということがどれだけ重要か
- 選手やファンを育てるために教育をするという活動がどれだけ重要か
そういうことまで考える必要があります。
改めて商売の仕組みを確認する必要性
もっと幅広く、全ての人が「商売の仕組み」というものを考える必要があると思います。会社の中でも、「その会社の利益がどのようにして生まれているか」ということを、おさらいのように社員に知らせることは、非常に重要だと思います。
社員の中には、「夏になればボーナスが出るものだ」と勘違いしてる人も一定数いるんです。「夏なのにボーナスを出さないのは、会社の身勝手だ」と勘違いしてる人が実際にいます。
昔のように、
- 社員は余計なこと考えずに、ただ言われたことをやればいい
- 黙って働いてればいい
という対応するのではなく
- この会社がどのような状況で
- どういう商売をしているから
- 売上が上がって給料が払える
- ボーナスが払える/払えない
そういった仕組みを説明することが大事だと思います。仕組みを教えることで、社内でも無用な愚痴を減らすことが出来ます。
これは会社にとっても、従業員にとっても、無用なストレスを減らすことになります。
参考になれば幸いです。