「動画」をメディア展開の起点にするメリット
シングルソース・マルチユース
一つのコンテンツは、別の「メディア」に変換・展開して活用することが可能です。
昔からよくある例として、「小説」を例に考えてみます。小説は「文章」というメディアで構成されたコンテンツです。この小説をもとにして、「音声」というメディアを使った、ラジオドラマというコンテンツに展開出来ます。そして、さらに「映像」というメディアを使って、映画やドラマとして制作するのが、昔ながらのメディア展開です。
一般的なメディア展開は
- 文章
- 音声
- 映像
という順番で行われます。
メディア展開の順番を逆にする
私は、この古典的なメディア展開の順番を変えるべきだと考えています。
かつては、文章を書く事が一番手軽でした。録音・編集するためには特別な機材が必要で、映像を作るには、さらに特殊な機材や技術が必要でした。しかし、現代はどうでしょう?
「動画の制作」が、こんなに手軽になった時代は、歴史上初めてです。
この前提に立つと、メディア展開は「逆の順番の方が効率的」というケースが多くあります。これに気付いていない人も多いと思います。
昔から、雑誌の記事など、取材時に録音した音声を元に文章にする、というように、「音声から文章」への展開はありました。ただ、この場合の音声は、あくまでも作業途中の材料なので、使い捨てです。
私の考える、「逆方向のメディア展開」では、全てのメディアを独立して活用できます。
そのポイントになるのが、「動画を起点にする」ということです。
動画を起点にするメリット
動画でそのコンテンツを完成させて、そこから別のメディアに逆展開していくと、それぞれのコンテンツの、完成までの時間が明らかに短くなります。
例えば、会社の経営者の方であれば、講演を依頼されるということがあると思います。自分の体験や、専門分野に関して講演を頼まれて、1時間から2時間の話をするとします。
事前に細かな原稿を用意する人もいるかもしれませんが、ある程度慣れた方であれば、話す内容の項目だけ、「本の目次」のように用意しておくのではないでしょうか?原稿を用意せず、メモだけを元にすることで、自由に、その場の雰囲気に合わせながら話すことができるはずです。
観衆の反応を見て、ある項目が膨らむこともあるでしょう。あるいは、まったく反応がない部分については、少し割愛するかもしれません。そういった、融通を利かせるためにも、ガッチリとした原稿を用意せずに話したほうが、良い講演になります。
通常であれば、講演が終わると、そのコンテンツは消滅します。
しかし、その講演を、ある程度しっかりした形でビデオカメラで収録しておいたらどうでしょう?
講演の撮影には簡単なコツがあるので、それさえ抑えればクオリティの高い講演動画の素材が用意できます。これに、適切な編集を施すことで、見やすい「動画コンテンツ」が一つ完成するわけです。
その動画を元に、音声だけ抜き出して、聞きやすいように、「ケバ取り」というような編集を加えれば、「音声コンテンツ」が完成します。音声コンテンツは、移動中の電車や車の中で活用するのに、とても適したメディアです。
更に、音声コンテンツを元に、「書籍」のような、「文字のコンテンツ」も作れます。
ここで大事なことは、執筆の専門家である第三者が原稿化できることです。
その、「書き起こした原稿」を講演者本人がチェックをし、加筆修正の指示をすることで、文章としての完成度も高い、「書籍」が出来てしまいます。
大体、1時間程度の講演だと、2万文字程度の原稿ができることが多いと思います。2時間分の講演であれば、4万文字から5万文字。ビジネス書の類であれば、この内容だけで十分に成り立ちます。
同じ内容・分量の原稿を執筆しようと思ったら、講演者本人が原稿用紙に向かって、どれだけの時間を費やすことになるでしょう?しかも、多くの場合、講演者は、文章執筆の専門家ではありません。無駄な時間がかかる上に、文章としての完成度も高くはないかもしれません。
「講演」でなく「対談」でも同じです。あるテーマにそって、専門家同士が対談をする様子を撮影して、「対談ビデオ」という動画コンテンツをまず完成させます。それを元に、音声メディア、書籍の順番に展開できます。
- 文字のメディア
- 音声のメディア
- 映像のメディア
これらは、どれが優れているということではありません。
それぞれ、一長一短がある上、受け取る側も、自分の得意不得意があります。極端な例で言うと、文字を読んでも、その意味を読み取るのが苦手な人がいます。逆に、耳で聞くとなかなか頭に入らないという人もいるんです。
文字を見る事で、もっとも効率よく内容を理解できる人は、「書籍」などの「文字」が最も適したメディアと言えます。一方、毎日、車で通勤している人にとっては、音声メディアを活用すると、膨大な量の情報を通勤時間に得ることができます。
ですから、「一つの情報」を、あらかじめ色々なメディアに展開させて用意しておいて、受信する人に「好きなメディアを選ばせる」ことが、ビジネス的には非常に有効です。
そして、そのメディア展開は、昔であれば
- まずはテキスト原稿を作りましょう
- それから音声に展開しましょう
- 最後に映像に展開しましょう
というような案内が一般的でした。
しかし、その順番では、それぞれに手間が掛かりすぎる上、データの流用が出来ないために、二度手間になる部分が多いんです。
例えば、音声用に録音した内容を、カメラの前でもう一度話すなどです。
逆に、
- まず動画を作る
- 動画を加工して音声を作る
- 音声をテキストに変換する
という方法をとれば、とても少ない労力で済みます。
ちなみに、音声を文字化するには、「音声入力ソフト」がとても便利です。私は、手軽な方法としては、パソコンで動画を再生させながら、googleドキュメントの音声入力機能を使っています。音声認識の精度は、日々、向上していますから、下書きとしての文字入力は、音声入力を利用することで、大幅に効率化出来るでしょう。
参考になれば幸いです。