テレビCMを手本にしてはいけない理由
この記事では、中小企業がビジネス動画を企画するときに、やりがちな間違いを紹介した上で、
- その企画がどうして良くないのか
- どういう企画にすれば良いのか
を解説します。
間違った行動の代表例
「ビジネス動画を作って活用しよう」と判断して、行動に移れる人はごく僅かです。ほとんどの人は、これからの時代の、動画の「有効性」、「必要性」を認識していたとしても、具体的な行動には移れません。
残念ながら、ビジネス動画の活用という素晴らしい決断した人の多くも、間違ったイメージを持って動画制作をしてしまっています。
それは、「大手企業のテレビCM」を真似た映像を作ってしまうことです。
間違いの原因:2種類の広告があることを知らないから
広告には2種類あります。「イメージ広告」と「ダイレクトレスポンス広告」です。
多くのテレビCMは、「イメージ広告」の一種です。イメージ広告は、その会社のイメージを植え付けるのが目的です。
- 天気の良い日に楽しくみんなでピクニックをしている
- そこで美味しく飲んでいるのがコカコーラ
というような定番のCMを、よく見かけると思います
イメージ広告は、
- 我が社はこれだけ活躍していますよ
- こういった形で皆さんの生活に貢献していますよ
というような「イメージ」を伝えるのが目的です。視聴者にイメージを植え付けることによって、その会社の商品は選ばれる確率が高まります。コンビニに行って、飲み物を選ぶ時に、テレビCMで見慣れているコカコーラがあれば、それを買う確率は高くなるでしょう。
不特定多数の消費者が気軽に購入する商品を扱っている企業が、購入者の無意識の購買判断を誘導するためには、イメージ広告は有効に機能する場合があります。
しかし、「気軽に購入する商品」ということは、比較的単価の安い商品のはずです。安い単価の商品で利益が出るということは、大量生産して、広範囲に流通させる条件を備えている必要があります。つまり、大企業の商売です。
イメージ広告は、大企業向きの広告なんです。
もし、安い商品を大量に売るわけではない、一般的な中小企業が、テレビCMのような「イメージ広告」を真似して発信すると何が起きるでしょうか?
何も起きません。
本来の販売対象者にとって、必要な判断材料などが具体的に入っていない「イメージ広告」を見ても、検討候補に入れる動機にもならないはずです。
YouTubeの落とし穴
テレビ放送用のCMには、製作にも数百万、数千万掛かりますし、認知度が十分に浸透するまで、繰り返し放送で流すだけでも大金が掛かります。
それに対して、現在では「CMを見せる方法」として、YouTubeを使うのが一般的です。確かに、YouTubeは無料で利用出来るので、テレビ放送のように料金が掛からない上、テレビ離れが加速している現代、テレビ以上に多くの人の目に触れる可能性もあります。
ところが、ここにも落とし穴があります。
YouTubeをビジネスに活用している例に、YouTuber(ユーチューバー)と呼ばれる人たちがいます。彼らは、自分の動画(番組)が再生されることで、契約している広告主から広告収入を得ています。その広告収入を多くするためには、何よりも「再生回数」が重視されます。ですから、YouTuberの動画を評価する場合、「再生回数」を指標にします。
これが大きな落とし穴です。
ビジネス動画は、YouTuberの動画と違って、小学生に人気が出て再生回数が上がっても何のメリットもありません。
企業が作るビジネス動画は、測定しやすい「再生回数」ではなくて、「誰に何を伝えているか」が全てなんです。これを勘違いした、無駄なビジネス動画が無数に存在します。
「おもしろ動画」という失敗例
例えば、部品を作っている会社があるとします。そんな会社が、ビジネス動画を企画するのは、とても正しい判断と言えます。
しかし、残念ながら、多くの場合は目標を「動画の再生回数を多くすること」にしてしまって失敗しています。従業員たちが作業服のまま、工場の中でダンスをしているような、いわゆる「おもしろ動画」を作って再生回数を伸ばす戦略をとってしまうんです。
ダンサーを雇うのではなくて、その従業員が練習をして本格的なダンスをしている面白さはあります。映像のクオリティが高ければ、再生数はある程度伸びるでしょう。動画の製作を請け負った映像業者は儲かります。
しかし、その動画の再生回数が増えることで、会社の売上が上がると思いますか?
問い合わせ件数が増える理由が、どこかにありますか?
仮にダンスの「おもしろ動画」を作って知名度は上がるとしましょう。「まずは認知から」という考えからすると、意味があるように思えるかもしれませんが、実際には何の「プラスの認知」にもなっていないのではないでしょうか?現実問題として、「部品の発注先を探している側」としては「おもしろ動画を作っている会社だから信用できる」となるはずがありません。
顧客が求めているのは、
- 納品される部品の品質
- 納期
- 臨機応変の対応力
- 気持ちよく取引出来る会社の気質
などについて判断できる「材料」の筈です。
「判断材料」が何も入っていないCMを作って、YouTubeの再生回数を伸ばしても全く意味がありません。その動画を見る人は、単に面白い動画を見て楽しみたい人です。あなたの潜在的な顧客ではないんです。
動画で判断できて行動を促す設計が大事
せっかくお金をかけて、イメージ広告を作っても、求める効果が全く出ない典型例を紹介しました。
残念ながら、中小企業が動画を作る場合に、こういう失敗をすることが非常に多くあります。それは、発信する側・動画を作る側が「広告」について知識が不足している事が原因でしょう。
動画を作る側は、見栄えのする「おもしろ動画」の方が、制作費を膨らませやすいので、「こういうCMを作ってはどうですか?面白いですよ?」という風に案内することもあるかもしれません。
しかし、必要なのは、現実的に機能するCMです。「イメージ広告」ではなく「ダイレクトレスポンス広告」の形をとることが必要です。
機能する広告動画の型
ここまで、「やってはいけない動画の型」を紹介しました。
長々と解説したのは、「企業のCM」として多くの人に受け入れられているテレビCM的な「型」の否定は容易ではないからです。ここまで解説しても、半分くらいの人は、やはり「イメージCM」を作ってしまうと思います。全く機能しなくても、見栄えがして、作り手としては満足度が高いからです。
ここからは、「イメージCM」とは違い、「機能する広告動画」の型を1つ、簡単に紹介します。
広告は
- 読まれない
- 信用されない
- 行動しない
ということが大前提です。
そんな状況の中、少しでも有効に機能するように研究され続けているのが、「ダイレクトレスポンス広告」ですから、この広告の仕組みは、ビジネス動画にも、そのまま応用できます。
動画の材料は、全て、購入者が「判断材料」として「知りたい項目」にする必要があります。
- 誰のための商品、サービスなのか
- 商品、サービスの特徴
- この商品、サービスが、購入者にどんな利益をもたらすのか
- 購入した場合の納品までの流れ解説
- 納品実績や実際の購入者の感想
- 問い合わせ方法
箇条書きにすると、拍子抜けするほどシンプルですが、典型的な「ダイレクトレスポンス広告」の型の一つになっています。購入者が購入を検討するための「判断材料」がしっかり入っているので、営業マンが同じ時間を掛けて説明する代わりに十分なり得ることが分かると思います。
ビジネス動画では、それぞれの説明をしながら、映像で製造工程の風景や社長の姿を見せることで、社風や信頼性など、映像ならではの「プラス・アルファの情報」を伝えることも出来ます。
まずは、この「ダイレクトレスポンス広告」の型を応用して、シンプルなビジネス動画を企画してはいかがでしょうか。