PR動画の構造分析
その動画、自己満足になってませんか?
会社や事業を動画でPRすることは、とても有効です。ただ、下手な自己紹介は相手の印象に残りません。相手にとっては「他人ごと」に過ぎないからです。玉石混交の情報があふれている現在、他人ごとの情報を聞いてくれる人はいません。
他人ごとになってしまうPR動画は、
- 当社はxxxxです
- xxxxの技術に自信があります
- xxxxというポリシーで仕事をしています
- 是非ご相談ください
というように、自分の話しかしていません。だから相手にしてみれば「他人ごと」なんです。内容が他人ごとになっている以上、いくらお金を掛けて、キレイで見栄えのする動画を作っても、なかなか反応がないはずです。(もちろん、特殊な技術などであれば、「xxxができます」だけでも反応はあるでしょう)
動画の構成を見る人の「自分ごと」に変換する
動画を制作する時に、もっとも重要なのは、「誰に向けて発信するか」です。「みなさん!」という呼びかけが、誰の耳にも届かないのは、広告の常識です。
最もシンプルなのは、
- xxxxにお困りではありませんか?
- xxxxという問題を抱えていませんか?
という問いかけです。
その人達へのメッセージは、それ以外の人には、聞いてもらえなくても良いんです。それくらい特化した動画でなければ、「この動画は自分に向けられたものだ」とは認識してもらえません。
別の相手にも届けたければ、その人達向けに、別動画を作る必要があります。「xxxxな人へ」という形で、対象を明確にすれば、それに該当する人にとっては、「自分ごと」となります。これではじめて、聞く耳を持つ準備が整うわけです。
実例:動画の構造分析
升田企画で作らせていただいた動画を例に、その構造を解説します。
実例は、音響機器の開発から、様々な音響デザイン等を手掛ける、株式会社ドリーム様からご依頼いただいた、「音響コンサルティング紹介動画」です。
簡単ですが、この動画の構造を解説していきます。

ますはチラシ広告の「大見出し」「キャッチコピー」に該当するのが、動画の「サムネイル」です。最初に目に触れさせるので、必ず「相手」をはっきりさせる必要があります。「声が響いてしまう本堂にお困りではありませんか?」という問いかけもシンプルで有効な型でしょう。
「お寺」の「音響」に「悩み」がある人がこのサムネイルを見ると、「自分ごと」と認識するはずなので、十分に動画を再生する動機になるわけです。ここで動画のタイトル、サムネイルが「他人ごと」と認識されれば、動画が再生されることはないので、とても重要です。

冒頭でクライアントであるご住職から直接、「本堂の音響に対して問題があった」事について話して頂いています。今回の動画を作成するにあたっては、インタビュー撮影のご協力が得られたので、多く活用しています。
インタビューが無い場合は、次の部分がオープニングになります。


インタビューの内容をおさらいする形で、「問題点」をまとめます。


お寺の本堂で発生する「音のトラブル」を具体的に示すことで、見ている人にとっては、「そうそう、これこれ!」という「自分ごと」としての共感を作ります。


問題を解決するためには専門知識が必要なこと、その専門家として役に立つのが、株式会社ドリームであることを伝えます。
ただ、ここでは具体的な「解決できる根拠」は示さず、イメージ映像だけに留めています。


創業35年の音響会社・株式会社ドリームの「歴史」も、実力と実績の間接的な証明にはなりますが、短い時間で説明するのは無理なので、あえてイメージ映像で触れる程度にしています。
多くのPR動画は、この状態で「是非ご相談ください」と伝えてしまいます。しかし、見ている人にとっては、この材料だけで、相談相手に選ぶ根拠になるでしょうか?なりませんよね。情報が足りないので、その動画は「機能しない動画」になってしまいます。
「動画は使えない」という場合、その多くは「必要な情報」が足りていないと思ってください。


ここで、問題解決のための根拠となるのが「平面波スピーカー」という特殊なスピーカーであることを、初めて紹介します。


再び、クライアントであるご住職の証言。以前は、寺の本堂での法話が聞こえにくかった状況の説明を紹介しています。


そして、コンサルティングを受けた後、問題解決のために「平面波スピーカー」を導入した後の、率直な感想を語って頂いています。
発信者の解説だけでは手前味噌と受け取られがちな効果説明も、第三者の「証言」の形で行うと、説得力・信憑性が格段に上がります。
特に「実際のお客様の声」は重要です。


ここから、「本堂で音が聞きづらくなる原理」と「平面波スピーカーが有効な理由」を説明します。これにより、製品に理論的な説得力を持たせます。

ドリームの平面波スピーカーが採用されている、渋谷の交差点や商業施設等の画像を表示することで、このシステムに十分な実績があることを示しています。


その中で、今回紹介する「平面波スピーカー・テラー」が、各地の寺院に既に導入実績があることを視覚的に示します。


実寺院の本堂に設置されたスピーカーの写真を見せながら、実際に運用されている証拠を補完して示しています。

最後にご住職が、「導入して良かった」という事を証言することで、音のコンサルティングが有効であることを伝えます。
ここで、「導入しようとしている人の期待感」を示してはいけません。あくまでも、導入した人の体験、という実績が重要です。

メッセージの最後に、「相手に取ってもらいたい行動」を示します。
「連絡したい人は連絡先を探すはず」という事で省略する人もいますが、動画のすぐ下にボタンがあるような場合でない限り、動画の中でしっかりと表記する必要があります。
「相手に取ってもらいたい行動」のための動画ということを忘れてはいけません。
「商品・サービス紹介動画の構成」まとめ
一例として、実際の動画と、その動画の構成を解説しましたが、ご理解いただけたでしょうか?
商品やサービスの紹介動画の基本構成の1パターンは以下のようになります。
- 動画を見て欲しい人への呼びかけ
- 相手が抱えている問題を確認する
- 問題解決に自分が役立つ事を伝える
- 自分が解決できる根拠や証拠を列挙する(第三者の証言も有効)
- 問題解決後の状態を想像させる
- 相手に取って欲しい行動を促す
多くのPR動画は、見栄えのする映像や軽快なBGMで見やすくすることを優先してしまっています。
これは、長年、テレビCMのような「イメージ広告」だけを見慣れてきた弊害です。
相手が知りたいと思っていることや、判断材料をしっかりと提示しない限り、動画が「営業マン」として機能することはまずありません。それは、あなたがものやサービスを購入する側にいれば簡単に分かるはずです。
しかし、発信側に回った途端、テレビCM的な構造の動画でも、一応サマになって見え、効果が出るような勘違いをしてしまいがちなので、注意が必要です。
効果的なビジネス動画制作の参考になれば幸いです。
升田企画では、商品やサービスの内容を十分に理解した上で、構成を熟慮し、動画を製作します。
その際、撮影自体はお客様に行ってもらったり、必要な素材をお送りいただくことで、コストを低く抑える工夫もご提案しています。