ミニチュア感を消す魔法の小人

精巧さの勝負には限界がある

「ミニチュアワーク」というのは、間違いなく特撮の人気ジャンルと言えるでしょう。

その魅力は小さいミニチュアの「精巧さ」です。

 

一時期、海外でも話題になった「ゴミ捨て場」のジオラマ。

冷静に考えれば、全然魅力がないはずの場所ですよね。

でも、ゴミ捨て場のゴミ袋だとか、つぶれた空き缶の模型の精巧さに、誰もが感心するんです。

 

映画の世界でも、ミニチュアはかなり古くから利用されています。

太平洋戦争中などは、本物の戦闘機を使った映像と、ミニチュアセットを使った映像を巧みに使い分け、のちに日本での「特撮の神様」と言われる円谷英二などが活躍しました。

戦後、アメリカは、円谷の特撮映像を本物だと思って、実在しない基地やフィルムの資料を出すように要求してきたと言います。

それくらいの精巧さでした。

 

円谷英二は戦後、長い間、特撮技術を使った補佐的な映像づくりしかさせてもらえませんでしたが、「ゴジラ」でついに特撮がメインの映画が、興行として成り立つことを証明して見せます。

その後、ゴジラシリーズや類似の怪獣映画などが量産されて、一つのジャンルを作ることになるのですが、改めて古い映画を見直してみても、怪獣が登場する背景の、ミニチュアセットの精巧さには目を見張るものがあります。

 

ただ、ここには一つのジレンマというか、問題があるような気がするんです。

 

私は、日本映画のミニチュアセットの精巧さは、ずっと世界最高峰だと思っています。

本当に細かいところまで良く作り込まれていたり、特撮映画の特徴である「ミニチュアの破壊」の表現に対する工夫の引き出しの多さも群を抜いていると思います。

 

でも、特に古い日本映画の中のミニチュア特撮には、共通する欠点というか特徴を感じます。

それは、作り手が心のどこかで「よくできたミニチュアセットであることをアピールしたい」と思っている節がある点です。

 

これは私個人の主観で、外れているかもしれませんが、例えば、アメリカ映画のミニチュアセットは、本気で「本物と思わせる」、というか、「ミニチュアだと気付かせない執念」を感じるんです。

例えば、アメリカ映画では「ミニチュアのアラが見えなくなるように、照明を暗くしてしまう」という、反則技とも思えることを多用する気がします。

カルト的な人気を誇る「ブレードランナー」にはたくさんのミニチュアセットが登場しますが、基本的に暗い画面を利用して、リアリティを出しています。

私の知り合いで、ブレードランナーの撮影に使ったビルのミニチュアを実際に見た人から聞いたのですが、壁はベニヤ板むき出して黒く塗って処理するなど、結構大雑把な作りで驚いたそうです。

それが、画面の中では夜空にそびえ立つリアルな高層ビルに見えるわけですが、明らかに「画面の暗さ」を利用しなければ成り立ちません。

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それに対し、新宿の都庁が登場した日本の怪獣映画を見たとき、ミニチュアセットの精巧さではブレードランナーより、格段に精巧に出来ている建物が、「本物」にはどうしても見えないんです。

「ものすごく良くできたミニチュア」に見えてしまう。

 

これは、私が中途半端にミニチュアの知識を持ってしまっているから感じる事なのかもしれませんが、単純にアメリカ映画のように、もっと画面を暗くしてしまえば、リアリティは増すはずです。

何故、画面を暗くしないのか。

うがった見方かもしれませんが、作り手の「良くできたミニチュアでしょう?」という気持ちが出ているのではないでしょうか?

 

ちなみに、比較的最近の映画では、不評だった「実写版・進撃の巨人」はCGではない、ミニチュアワークの映画です。

古典的ミニチュアセットを使った映像として、最高級の出来だったように思います。

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では、「進撃の巨人」はそれまでの怪獣映画より、ミニチュアセットの出来が各段に上なのか、というと、恐らくですが、革新的に精巧だったわけではないと思います。

ミニチュアセットがリアルに見えたのには、別の理由があります。

小さな人の存在が脳を騙す

特撮は、いかに人の脳を楽しくだますかが勝負です。

 

作り手には

「良くできたミニチュアだと感心してもらいたい」

という気持ちと

「完全に観客を騙してミニチュアであることを隠したい」

という気持ちがあると思います。

少なくとも、私にはあります。

 

ミニチュアであることを隠す方法の一つは、もちろん、作りを精巧にすることですが、もう一つ、簡単な方法があります。

それは、ミニチュアの中に「本物の人物」の映像をうまく合成することです。

 

これは、昔は実現が難しいものでした。

合成自体がきれいに出来なかったので、不自然に見えてしまったからです。

 

ところが現代は、「デジタル合成」という技術があります。

デジタル合成の凄いところは、自宅で簡易に撮影した人物映像でも、かなり自然に別の映像に合成できることです。

具体的には、グリーンバック撮影した人物映像を「クロマキー合成」という技術を使って、別の映像に合成します。

これを使えば、鉄道模型の駅のホームに、歩いている人を、かなりリアルに合成できます。

 

前述の都庁のミニチュアセットほど精巧でないセットだとしても、その地面に、人形ではなく、歩いている人間の映像が小さく映っていたら、脳は間違いなく勘違いします。

動いている人間の映像を基準にして、「ミニチュアセット」を「本物」と認識しやすくなるはずです。

 

特撮映像は

  • 作り手が工夫を凝らして騙し
  • 観客は楽しく騙されながら見る

というのが醍醐味です。

 

この「ミニチュアセットの全体映像」に「人の実写映像を小さく合成する」という手法は、相当の効果を発揮すると思います。

 

私は、この合成のために、多数の「動いている人物」をグリーンバックで撮影して、ストック映像として用意し、DIY映画倶楽部などで活用しようと計画しています。

 

参考になれば幸いです。

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