神去なあなあ日常
映画「WOOD JOB!」を観たあと、原作小説を読んでみた。
人物の設定については思いの外、映画用に変更されている訳ではなかった。映画同様、実に魅力的。
結局のところ、映画や小説の「面白さ」というのは人物の魅力をどれだけ出せるかということで、ほぼ決まってしまうのだなあ、と再認識。
エピソードについては思いの外、映画と違う。面白い映画を観て、その住人たちの別の日の日常を読んでいる感覚で、お得感がある。もちろん原作を読んでから映画を観ても、同じことが言える筈だ。
「永遠の0」の山崎貴監督も、原作を映画用のシナリオに再構成する名人だと思っている。従来の日本映画であれば、原作ありの映画化と言えば、タイトルと設定の一部だけ使った全くの別物か、映画の尺に合わせて作ったダイジェスト映像が大半だった。それで、そもそも長編小説の映画化は分量的に無理なのだ、という議論になるのだが、山崎脚本は恐らく省略するポイントと、映像への変換の手腕から、いわゆるダイジェスト感が無い。理想的な映画化手法を身につけているのだと思う。
一方、今回の「WOOD JOB!」に見る、原作の映画化は、また違った手腕なのだと思う。
ダイジェストではない。もちろん別物でもない。素材の魅力をそのままにして、映画用のエピソードを新しく作る訳だから、手間は同じだけかかる。「映画は別物だから」という言い訳をしないためには、最重要なのはキャスティングだが、それこそ矢口監督の眼力の非凡さ。適材を適所に当てはめる。良くある、キャスティングありきの企画ではなく、主役もオーディションで決めたという、徹底したこだわりと、いつも通りの脱力映像ギャグを両立させる作家はなかなかいないと思う。
原作小説は続編もあるので、映画を観てそちらの読者も増えるのではないか。初の原作ものの矢口作品によって、映画と小説のいい関係図ができたと思う。