考えるな 感じろ(その1)

ブルース・リーの映画、燃えよドラゴンの中の有名な台詞です。この台詞だけ一人歩きしていて、「そうだよね、物事は理屈じゃないよね、感覚が大事だよね」ということで、「深く考えないのがいい」とブルース・リーが言っているように曲解している人がいます。
7月20日はブルース・リーの命日ということもあるので、このシーンについて書いてみたいと思います。

そもそもこの映画、アメリカのワーナーブラザーズの映画ですが、資金面ではワーナーと香港の合作です。世界的には無名のブルース・リーをアメリカ映画で主役に抜擢した、というより、香港側もお金を出して、リーを世界に売り出そう、というプロジェクトでした。邦題は「燃えよドラゴン」ですが原題は「ドラゴン登場」です。
この映画、本当はブルース・リー単独主演作品でもありません。タイトルバックを見ていると分かりますが、「ブルース・リーとジョン・サクソンの」 「ドラゴン登場」と表示されています。知名度があるアメリカ人俳優とのダブル主演で保険をかけている訳です。

ブルース・リーについて知らない方のために、ちょっと人物説明します。
この人は、18歳の時に香港からアメリカに渡って、大学で東洋哲学を学んでたんですね。とても優秀な学生で、当時の教授に見込まれて、自分の代わりに哲学の授業を任せることもありました。
そして、哲学を学ぶうち、哲学と組み合わせた得意の武道を職業にしようと思って、道場を開きます。これが評判になって、武道家の役でテレビドラマに出たり、映画のアクション指導をしたりもしてたんです。この人、お父さんが有名な俳優だったので、子供の頃から実は映画にも主演で出てました。アメリカのドラマや映画に出ても、初めからお芝居が出来ちゃってたんですね。

ところが、もっとアメリカの映画界で活躍したい、そう思っても、それは出来なかったんです。人種差別ですね。アメリカは自由の国です。チャンスはあります。でも厳しい差別の国でもあるんですね。
その壁を越えられず、アメリカ人スター俳優であり、道場の弟子になっていたジェームズ・コバーンという人から「主演映画を撮るには香港に戻るしかない」と言われ、香港に帰ります。
いわば都落ちしたリーは、香港の劣悪な映画製作環境の中で爆発的なヒットを飛ばし、その香港映画はアメリカのチャイナタウン等でも評判になっていました。
やがて、リーは映画会社の社長でプロデューサーのレイモンド・チョウという人と共同で、自分の会社を作り、自ら脚本、監督した主演作品を作ります。初めての監督業でしたが、アメリカから映画製作の本を取り寄せ、一生懸命勉強してから挑みました。
それも大ヒットして、自らの監督第2作目を作り始めた頃、自分を受け入れてくれなかったアメリカから、主演映画の企画が持ち込まれます。
それが「燃えよドラゴン」だったのです。

(次回へ続く)

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