原発廃炉と電気料金
「2016年7月時点で運転開始から40年を超える原子力発電所7基について、廃炉にするか早急に判断するよう要請」「出力が小さい設備が大半のため、電力会社が安全対策費をまかなえないと判断し、相次いで廃炉を決める公算が大きい」というニュースがありました。
これまで原発は大量の燃料も使わず、排気ガスも出ず、夢のクリーンエネルギーとして未来を担うかのように量産されてきました。福島の事故以来、「安い電力供給源」としての原発が停止し、「高い」とされる火力発電所で、電力を作っています。最近でも、火力発電に伴う原油の消費が増えたことで、「お金がかかる」「電気料金の値上げをせざるを得ない」という議論がされています。このままでは産業の低迷につながるので、一刻も早く原発を再稼動させるべき、と主張する声も多くあります。
しかし、これには大きな間違いがあるはずです。
仮に原発が無事故で稼動し、耐用年数を全うしたとします。確かにそこまでは「安い電力」を供給できるでしょう。しかし、40年、50年経って、当然、施設の寿命がきます。そうすると「廃炉」ということになるのですが、このコストというのはどれだけかかるのでしょうか?
火力発電所を取り壊すだけなら、大規模な工場を更地に戻すのと変わりませんが、原発は簡単に更地には戻せません。使用済み核燃料の処理施設も新たに試行錯誤しながら建設しなければならないわけで、試算のひとつでは、廃炉の費用は総額30兆円になるとも言われています。ただ、もんじゅをはじめ、日本各地にある核施設の後処理が事故続きで、一向に進む気配がないことは見ての通りです。廃炉作業自体もスムーズに進むとは思えませんから、さらに費用は膨らむでしょう。
仮に40年安い電力を供給してきた原発を、100年かけて安全に廃炉処理できたとしても、信じられないコストがかかるのです。そのコストは当然、電気料金に上乗せされますから、各家庭の電気料金は桁が変わるくらい跳ね上がるでしょう。恐らく、100%電気料金に上乗せするのではなく、税金も使うことにはなるのでしょうが、国民の財布から出ることに変わりはありません。
東京電力管内ではこれにプラスして無限大の、試算すら出来ないくらいの事故処理費用がかかります。
喩えて言えば、「すごく燃費がいい車を買って、快適に使っていたけれども、廃車するときに費用を聞いたらベンツ3台分」という状況です。多分、ベンツ3台分の廃車費用がかかると知っていたら、いくら燃費がいい車でも買わなかったでしょう。
色々な世界で色々な事情があるんでしょうが、「単純な損得勘定」で判断すると、超短期的な目先の得を求めて、結局大損する状況があまりに多いですよね。
参考: