楽しみ方を教えるということ
エンターテインメントに属する物事というのは、市場の大小を別にすれば、間違いなく「魅力」を持っています。
それを見て魅力を感じない場合、理由は二通り考えられます。一つは、そもそも価値観が合わない場合。これは仕方がないので諦めるとします。しかし、もう一つは、その対象の「楽しみ方というものを知らない」場合です。
例えば、あるタレントが「昭和歌謡曲の楽しみ方」を解説しているのを見たことがあります。今と違って、昭和歌謡曲のヒット曲というのは世代を越えて、本当にヒットしていたので、今でもよく記憶に残っています。ある意味では、既に聞き飽きているとも言えるのですが、この「楽しみ方」を知ると、歌詞からイメージする物語性、オーケストラの個々のパートの面白さ、もちろんオーケストラの奏でるアンサンブル、歌手の個性など、気づけば気付くほど新しい「面白さ」を味わうことが出来るようになりました。
例えば盆栽や日本庭園など、様式美を直感的に感じればよい、という類いのものでも、そこにある基本パターンや作家性、時代背景の知識などを持っていれば、それほど魅力を感じていなかった人の何割かは、楽しめるようになる可能性があります。
エンターテインメントを発信して、何らかの利益を得ようと思う場合、「分かる人だけ分かってくれれば良い」という殿様商売的なやりかたになりがちです。
それで十分な数の人に伝わっているのであればいいのですが、思うように伝わっていないのであれば、「これのどこが面白いかというと」という林家三平の落語ではありませんが、「楽しみ方の提案」まですると、効果的なのではないでしょうか。