DVD-Rは半永久に持つと思ってませんか?実際の寿命は数年です
以前から、やろうやろうと思っていた、古いVHSテープの処分をしています。ただのテレビの録画なので、大して価値のある映像はないのですが、淀川長治の映画解説とか、野球放送延長で偶然入っている、四番・原のさよならヒットのシーンとか、CMとかが捨てがたく、未練がましくSDカード経由でPCのHDにコピーしてます。
VHSの開発については、小説や映画の「陽はまた昇る」を読んだり見たりしていますが、VHSは本当に偉大なメディアです。そしてつくづく思うのは、VHSテープの頑丈さです。20数年経っているテープが、ノイズ混じりながらも結構、見られるのです。
ここで、非常に皮肉な問題に触れなければいけません。
メディアというものは、古ければ古いほど長持ちする、という特徴があります。極端な例を出せば、古代遺跡から出土する石板の記録というのは、何千年も経った今でも読めるわけです。(解読は出来るかどうかは別として)
一時代を築いたアナログのVHSは、20年以上持つことが我が家でも証明できました。
しかし、デジタルメディアである、DVD-Rは、実は耐久性はそれほどありません。メーカーでも、もちろん大きな声で言いませんし、厳重に管理すれば比較的長持ちするのでしょうが、ごく普通にケースに入れた状態で本棚に入れておくような管理の場合、3~5年の寿命と言われています。
たった、5年です。
デジタルデータについては、色々な勘違いがあって、正しく認識されていない面があると思います。
我々の世代では、アナログのレコード盤というのを買っていたので、繰り返し聞くうちに、レコードの溝が傷んできて、ノイズが入るようになるのを経験として知っています。それが、CDの登場で繰り返し聞いても、「擦り減る」という事が起きずに、いつまでも新品の音質で再生できるようになりました。
映像も同じです。VHSに映画放送などを録画しておくと、好きなときに繰り返し見られる、という夢のような状況になったときは本当に楽しく思いましたが、繰り返し見るとテープ自体が傷んできて、色々なノイズが入るようになります。それがDVDの登場で、画質が向上した上に、再生によって傷む心配が無くなったことは画期的でした。
しかし、「繰り返し再生しても傷まない」ということは「アナログのメディアより長持ちする」ということは違います。そこが大きな誤解なのです。
DVDは再生しても傷みませんが、盤面自体の経年劣化で、まず、ブロックノイズが入るようになります。デジタルデータの特徴として、痛んだ部分によっては、再生時にノイズが入る、どころか、再生機器に認識されなくなります。もちろん、DVD-Rを焼く時のドライブの性能にも左右されますが、DVD-Rより頑丈な、市販のDVDソフトも内部のアルミ板が劣化して、徐々に見られなくなります。
私も過去に焼いたDVD-Rは相当の割合で、再生できなくなってます。昔買ったCDも聞けないものがいくつもあります。ネットでも「古いCDが聞けなくなっていた」という話題がちらほら出てますから、これからどんどん問題になってくるでしょう。
というわけで、保存用としてDVD-Rに焼く、というのは実は全く理にかなっていません。DVD-Rに焼くのは手軽に見るためであって、むしろ、保存のためにはVHSにコピーするほうがいいくらいかも知れないのです。
ですから、大事な映像(例えばお子さんの小さい頃のビデオとか)は、手軽に見るためにDVD-Rにコピーするのはいいのですが、是非、元のテープを捨てずに保管することをお勧めします。DVD-Rしか残っていないようであれば、せめてHDにバックアップを取っておいた方がいいでしょう。
物というのは永遠に残せるものではありません。しかし、記念に残しておいたつもりの映像が、いつの間にか、しかも思いのほか早く、消失してしまった、という失望をして欲しくないのです。
私の認識違いや補足情報等あれば、お知らせいただけると幸いです。