川口浩探検隊におけるBGMは、プロ野球珍プレー好プレーにおける「みのもんた」もしくは、コメディー映画における広川太一郎の吹き替えのようなものだ

言わずと知れた昭和の名物番組「川口浩探検隊シリーズ」ですが、印象の半分はBGMにあると思うんです。よく、パロディで入れる「ガーン!」というアタック音ではなくて、本編中に文字通りバックでかかっている「音楽」です。

当然、番組オリジナルの曲を作っている訳ではなくて、ほとんど洋画のサウンドトラックを使用しています。時々、「テレビでは無断で映画のサントラを使っている」というような指摘をする人がいますが、基本的にテレビは放送用としては、映画のサントラを使い放題なんです。何故かというとあらかじめ使用料を払っているからです。
そのため、後でも触れますが、映画のサントラを使った番組がDVD化されたときには、サントラを入れ直す必要が出てくるのです。

川口浩探検隊シリーズで使っている洋画のサントラは、その選曲が絶妙で、素晴らしいと思います。
映画音楽の巨匠・ジェリー=ゴールドスミスの曲を中心に、正に適材適所にBGMをあてはめています。
典型的な使用例を挙げてみます。

・前の週「次週予告」として「カプリコン1」
・探検開始は「SWATのテーマ」
・船を使う場合はドイツ映画の「Uボート」
・徒歩での進行開始は「レイダース」
・異世界に翻弄されるイメージは「猿の惑星」
・他に「キングコング」「ジョーズ」「カサンドラクロス」「燃えよドラゴン」等々で盛り上げ、
・夕陽のラストは「ロッキー」
と続きます。

私は大学生時代、完璧な「川口浩探検隊の映画」を作りたいと思い、まず、「水曜スペシャル」の正確なロゴの再現をしたユニフォームを5着作りました。金が無いながらも納得のいくデザインにしたかったので、シャツを型紙から作りました。
そしてオリジナル脚本・絵コンテを用意し、シーンごとに入れるべきサントラのメモを書き込みました。
メモはもちろん「本物と同じ」BGMです。
そしてひたすらサントラのレコードを探し回りました。当然CDではなくLPです。
そもそも、どの映画のサントラを買えばいいのか、調べるのは困難でした。今ではインターネットで簡単に調べられますが、当時は、テレビの洋画劇場を見ていて、「この曲だ!」というのを発見すると、LPを探すリストに追加するのが習慣でした。

目当てのLP自体が廃盤になっていることも多くて、「SWATのテーマ」は当時、本物の音源を入手できず、良く似た、別の演奏版を使用しました。
そういえば、地元の商店街のスピーカーからその曲が流れていた、という情報を元に、商店街にしつこく問い合わせたこともありました。

サントラを探しているときに、不思議な体験もしました。
ドイツ映画の「Uボート」は何年も見つからなくて、半ば諦めていたのですが、初めて入った中古レコード店で、いつものように映画のサントラを探した時です。常時、いくつかのLPは探しているのですが、映画のサントラコーナーに目当てのLPは無く、帰ろうとしたとき、不意に壁に飾ってあったLPが倒れ掛かってきたのです。とっさに手で押さえ、元の位置に戻して驚きました。
それはまぎれもなく「Uボート」のサントラだったのです。
これはもう、誰かが「お前はその映画を完成させろ」と言っているような気がしました。
結局、そんな使命感を持ってしても撮影・編集を終えるのに3年間もかかりました。映像的、演技的拙さはさておき、音楽の「適材適所」感は我ながら完璧に近いと思います。もちろんこれは音楽の権利上、問題があるので、あくまでも個人として楽しむ以外に公開できず、販売したりすることもできません。お見せすることが出来ないので、安心して「完璧に近い」と言い切ることも出来るわけです。

自分で自主制作映画を作ってみても分かりますが、音楽の力というものは絶大です。
この「水曜スペシャルTHE MOVIE 水晶髑髏伝説」というのも音楽の迫力と雰囲気で、3割増しの出来に見えます。

ちなみに私はいまだに「チーム・ウェンズデイ探検シリーズ」というオマージュシリーズを作り続けています。よろしければご覧ください。

こちらは予告編。

ところで、本家の「川口浩探検シリーズ」はDVD-BOXが3つ出ていますが、前述の通り、DVD化に伴って、音楽を全て差し替えています。
エンディングの「ロッキーのテーマ」は恐らく、権利上、ギリギリまで似せた別の曲を作っているようですし、もはや「川口浩探検隊のテーマ」と勘違いされている「SWATのテーマ」は同じ曲を打ち込みで作っています。楽曲の使用料は払ったのでしょう。
ですが、やっぱり違うのです。
購入したDVDを見ると、明らかにパワーが落ちているのです。
原因はやはり、BGMです。

実は私は川口浩探検シリーズの放送時の録画テープを10数本持っています。我が家でVHSのデッキを買ったのは、探検シリーズの最晩年で、最後の3話(前後編ものが2つあるので放送回数は5回分)しかありませんが、2000年ごろだと思うのですが、ネットで知り合った、同人誌のライターの人が、川口浩探検シリーズのVHSを10数本、貸してくれたことがあったのです。放送していた当時、まだビデオデッキは普及し初めで、テープも高かったため、録画して残している人というのは少なかったはずです。今となっては貴重なテープです。
ですから、市販のDVD版と、テレビ放送版を見比べることが出来るのですが、同じ場面でも、やはり、BGMが「それらしい曲の打ち込み」と「本物の猿の惑星」では雲泥の差があることがはっきりと分かります。

DVD版を見る人は、少なくともTV版はこれより三割り増しに面白いと思って間違いありません。

私達MVGは、川口浩探検隊へのオマージュとして、「チームウェンズデイ探検シリーズ」という自主映画を作り続けています。このシリーズ立ち上げの時期のドキュメンタリーを電子書籍にまとめてみました。

Kindleから出版の無料本です。特典映像もリンクされているので、是非ご覧ください。

前述「チーム・ウェンズデイ探検シリーズ」は、「川口浩探検隊と特撮を組合わせたらどうなるか」という実験のシリーズでもあります。
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