円谷英二の大切な価値観
円谷映画の魅力はミニチュアの精巧さです。
ミニチュア撮影は古い特撮のイメージがありますが、デジタル合成が発達した今こそ、再評価して採用すべきだと思います。
3DCGを使えば、カメラもなしに映画が作れる時代です。でも、作業のすべてをパソコンで完結するCGばかりではゲーム映像と同じです。
2012年に特撮博物館が開催されて、庵野秀明氏と樋口真嗣氏達の企画として「巨神兵東京に現る」という短編映像が上映されていました。これは「 CG無し 」、という縛りを設けて作られた特撮映画です。会場ではメイキングの映像も流れていたのですが、樋口監督以下、スタッフが実に楽しそうで、少なくともこの楽しさはCG制作では味わえないなあ、と感じました。
個人的には、ビルの爆破ミニチュアを担当したベテラン技術者の姿に感動しました。
ただ、「リメイク作品はオリジナルを知らない世代の為のもの」の時も書きましたが、世代や好みの違いで、本質的なところはともかくとして、アナログ的な手法は生理的に受け付けない、という事があるのも事実です。
私自身、逆に昔のスターウォーズはミニチュアの合成満載で楽しく観るのですが、CGだらけの新シリーズは興味が持てず、ほぼ全編早送りでしか観ていられませんでした。
若い世代の人は旧シリーズは観ていられないそうですから、感性の違いなんでしょう。
私はルーカスの様に、若い感性にマッチしたヒット作を作らなければいけない、という制約がないので、基本的に自分が面白いと思った手法で制作していきます。
かつて円谷英二は怪獣映画の撮影中に、馬小屋のミニチュア撮影に苦労していたスタッフが、「実際の馬小屋に行って撮影したらどうですか?」というのに対し、「 君たちそれで楽しいか? 」と聞き返したと言います。
それは楽しいか?と自問自答しながら、創作活動をしたいものです。
もしかしたら、創作などという限られた範囲でなくても、忘れてはいけない価値観なのかもしれません。