特撮B級映画の魅力
「アサイラム」というハリウッドの映画会社があります。
以前、ドキュメンタリーでも紹介されたのでご存知の方も多いかもしれません。
「メガシャーク」とか「メガオクトパス」とか「トリプルヘッドジョーズ」というような、昔ながらのB級モンスタームービーの類を年間に12本という驚異的なペースで作っている会社です。
まあ、まともな映画を小さな会社で毎月作るというのは不可能なわけで、完成した映画は「ある種の映画」です。
しかし、この会社が長年存続して、作品をリリースし続けているのは、一定の需要があるからに他なりません。
実際に見てみると4本に1本の割合で、見ていられないくらいつまらない作品がありますが、それもひっくるめて「楽しい」のは確かです。
ここに、わざとチープさを前面に出して受けを狙う厭らしさはあまり感じません。
製作者や出演者たちが程よくリラックスして、まるで文化祭の準備のようにワイワイと楽しんでいる感じさえ伝わってきます。
かつてB級映画の帝王と言われた、プロデューサーのロジャー・コーマンも、低予算で工夫しながら様々な大風呂敷を広げた作品を量産していますが、「赤字を出したことが無い」というのは伝説になっています。
創作に関わる人の感覚として、「商業主義は忌むべきだ」というものが強いと思います。
私は、一般観客でもそういう批評家的発言をする人が多くて驚きます。
創作活動において、商業主義は忌まわしいものなのでしょうか?
経済的な観念を含んだ活動は「金に魂を売った」ことになるのでしょうか?
創作者にとって、最も守るべきことは「作り続けられること」だと思います。
当然、作るためには資金がかかります。お金は「作り続ける」ための条件の一つに過ぎないのです。
しかし、必要条件です。
こだわりを持って創作をして、資金が続かず、活動を中断することになる創作者と、
- 作り続けること
- どうしても譲れないこだわり
- できれば守りたいこだわり
の優先順位を正しく認識して活動し続ける創作者は、どちらが望ましい姿でしょうか?
パブロ・ピカソのような天才画家でさえ、自分の個展では、顧客に作品のコンセプトの解説を自ら行って、売り込みをかけたそうです。
自ら買い物するときは小切手を使ったそうです。
小切手のサインを持っていたくて、換金しない人が何割かいたからです。
私はピカソを「金に魂を売った」とは思いません。
経済的なことを心配せずに、自由に創作活動を続けられるための条件を整える、創作者としての理想的姿の一つだと思っています。
そこで、冒頭の「アサイラム」のB級映画です。
恐らく日本では、こういうある種ばかばかしい創作が、認められにくい土壌があるのではないでしょうか?
しかし、アサイラム作品のファンの多くは日本人だそうです。
であれば、低予算B級映画をリリースしながら、1円も赤字を出さない、という、和製アサイラムとでもいうべき存在が現れないかな、そういう団体と関われないかな、と本気で期待するのです。
- 役者は楽しいだろうな
- 現場は意外にみんな仲良く盛り上がってるんだろうな
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