特撮映画としての「ジュラシック・パーク」

本物の恐竜が登場した初めての映画?

「ジュラシック・パーク」は原作の日本語版小説が発売されたときに読んで、そのとき既に映画化決定とされていたので、本当に楽しみにして映画の完成を待っていました。

 

そして、期待を裏切らない予告編がテレビCMで小出しに登場するようになり、ついに私は会社の同僚とオールナイトの先行公開を観に行ったのです。

新宿のいくつかの映画館で先行オールナイトをやっていたのですが、どこも満席で、ようやくチケットを買えそうな劇場の前に、何時間か前から長々と並んだ記憶があります。
その日、新宿だけで数千人は同じ様に列を作っていました。

 

そして観た「ジュラシック・パーク」は圧巻でした。
先行上映特有ですが、観客の盛り上がりはすばらしく、パニックシーンではあちこちで悲鳴が上がって、楽しさの相乗効果を上げていました。
あの映画は、実写映画における記念碑と言っていいと思います。

 

それまで、CGと言えば、「ゲーム風の映像」とか、「モニターに映るアニメーション」という使い道が普通だったのが、まるで、ハリーハウゼンの映画のような質感を持った恐竜が、ストップモーションより滑らかに、自由に動き回っているのです。

 

滑らかさということでは、「ドラゴンスレイヤー」という映画で採用されたゴーモーション、という手法が存在しています。
これは簡単に言うと、ストップ・モーションの弱点を補った手法です。

 

静止した模型を一コマずつ撮影したストップ・モーションの映像には、動いている映像の特徴である「ブレ」が無くて、チカチカした動きに見えてしまいます。

 

それに対して、ゴー・モーションは、模型を一コマずつ撮影するのは同じですが、ストップ・モーションと違って、模型が機械と連動していて、シャッターを切る瞬間に動きを加えているのです。
その結果、出来上がった映像には、動いている動物と同じブレが記録されるため、完全に滑らかな動きが再現されます。

 

前述の「ドラゴンスレイヤー」の特撮シーンは、実写モンスター特有の生々しい質感と、CGのような動きの滑らかさを実現しています。

実は「ジュラシック・パーク」も当初はこのゴー・モーションを使う予定でした。
(大元の計画では、ミニチュアでなく、全部実物大の恐竜模型で撮りたかったそうですが)

 

恐らく、ゴー・モーション版の「ジュラシック・パーク」が完成していても、当時としては最高の出来の恐竜のシーンになっていたとは思います。
しかし、最大の欠点は、ミニチュアを使うと、実写と上手く合成するために、カメラを固定する必要が出てくることです。
昔の特撮映画は大抵、恐竜が出てくるショットになると、カメラが静止しています。

 

結局、「ジュラシック・パーク」CGを採用することで、「ゴー・モーションと同じ滑らかさ」と、「カメラ移動の自由」を両立させました。

 

「ジュラシック・パーク」のメイキングを観ると、CGも、当初はカメラを固定して撮った映像に合成することを想定していたようです。
スピルバーグ監督が「カメラを自由に動かしても、その映像に合わせて恐竜を合成させたい」という非常識な「わがまま」を通した事で、その後のCGアクション映画の基礎が完成したのです。
そういう意味でもこの映画はエポック・メイキングと言えるでしょう。

 

「ジュラシック・パーク」は本格的CG恐竜の登場で観客の度肝を抜きましたが、実は、CGのショットはわずか7分ほどだったそうです。

これが何を意味するかというと、脚本の良さと圧倒的な演出力の必要性だと思います。

 

「ジュラシック・パーク」の監督はいわずと知れたスティーブン・スピルバーグです。

この映画は「ジョーズ」と比較されたりもしましたが、確かに共通点があります。

 

「ジョーズ」もサメは終盤までほとんど出ていない、ということです。

「恐怖を伴った存在感がある」という演出が秀逸なせいで、実際よりもサメが画面上に長く存在している気がするのです。「ジュラシック・パーク」も同様でした。

 

ただ、「ジョーズ」の時も、機械仕掛けのサメの出来が悪く、「あまり長く画面に出すとアラが目立つ」という制約から、「画面に出さずに存在感を出す」という演出でカバーしたそうです。

「ジュラシック・パーク」も当初は実物大の恐竜ロボットが闊歩するシーンをたくさん撮るつもりが、やはりロボットの調子が悪くて予定通りの使い方はできていないそうです。

そういう制約があるときに、演出力という才能で傑作に仕上げる天才監督がスピルバーグなのではないでしょうか?

「圧倒的な新技術を応用した映像の力」「物語の構成」「演出力」がマッチした、数十年に1本の特撮映画の傑作が「ジュラシック・パーク」だと言って、異論は無いと思います。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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特撮映画としての「ジュラシック・パーク」” に対して1件のコメントがあります。

  1. おやびん より:

    [ジュラシックパーク]を観た時のインパクトと楽しさって、一生忘れない気がします。
    今では、恐竜や架空の生き物が出て来ても普通だし、CG がどうとかまったく気にならないくらいのクオリティですもんね。

    が、CG じゃない版も観たかったです。
    いつか誰かがリメイクする日が来るかもしれないですね。

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