演劇の技術を他に活かす
演劇は演劇だけのためのものではない?
先日、たまたま読んだ記事を見て考えました。
舞台出身の役者が何故人気があるか、というような内容で、
- 圧倒的な演技の場数の多さ
- 訓練時間の長さ
- 自分達で芝居を作っていく、という感覚の有無
から、テレビだけで活躍する俳優より舞台の俳優のほうが有利な点が多い、というような事でした。
その内容自体に意外性は無くて、「なるほどそうだろうな」という感想なんですが、記事の後半には、ちょっと興味深いことが書かれていました。
「演劇」というと、娯楽の一つで、舞台役者になりたい、という特殊な志向を持った人が訓練するもの、というイメージを私は持っています。
ものづくりの楽しさと、観客の前でそれを披露するスリルと快感は大きいのだろう、と想像は出来ます。
ですから、経済的に苦しくても演劇を続ける人が昔から後を絶たないのだと思います。
ところが、「演劇」には全く別の側面があるというのです。
お芝居は台本に書かれた内容を演じているのですが、素人が考えるように、単に「それらしく見えるように振舞う」というのではなくて、
- 人間観察
- 感情表現
- 意思の疎通
- 相互理解
というものを経て、初めて成り立つものだといいます。
そして演技の勉強は、舞台の芝居にだけでなく、社会生活にも有益で役に立つ、というものでした。
最近では、核家族化や、塾通いによる集団での遊びの減少などに起因するのでしょうか、特に若い人の基本的なコミュニケーション能力が著しく低下しているといいます。
事件になるような社会問題の多くは、この能力低下によって引き起こされているように思います。
演劇のワークショップなどで、一般の人が演劇の勉強をすると、人間観察、感情表現、意思の疎通、相互理解などを意識するようになるため、社会生活でのトラブルを解決しやすくなるようなのです。
記事では、日本以外の大学では、例えば医学部の学生が、授業として演劇を真剣に学ぶ、ということが「当たり前」だと言います。
卒業後、医者になって多くの患者達と接していく準備として、コミュニケーション能力を養うのは「必要条件」だからです。
もちろん同じ理由で、ビジネスを志す学生の多くが演劇を学んでいるのが現実だそうです。
1つの技術には副産物がある
だとすれば、演劇以外にも、思わぬ相乗効果が期待できる技術がありそうだ、という事が想像できます。
例えば、野球の桑田真澄選手が現役時代、古武術を習いに行って、すぐに野球に応用して成果を出したのは有名な話です。
私は今、「ストーリー作り」にも大きな可能性があると感じています。
日本一のマーケッターと言われる神田昌典氏の著書である「ストーリー思考」というのも、キーになるのは、ストーリーを作ることで、自分の望む未来を手に入れよう、ということですし、先日「ストーリー創作講座」で知り合った、ビジネスコンサルタントの方も、「ストーリー創作の考え方が、コンサルティングに役立ってるんです」とおっしゃってました。
趣味として、あるいは創作のプロとして、身に付けると有益な「ストーリー作りの技術」が、実は、実生活全般にも応用が出来るかもしれない、という考えが湧いてくるきっかけになったのが、この演劇関係の記事だったのです。
ビジネスの世界、広告の世界では、「ストーリーの力」が注目を集めています。
多くは「実話ストーリー」を活用することですが、現実の出来事から「ストーリー」を抽出するためには、「ストーリー作りの技術」が有効です。
演劇の勉強が、ビジネスマンの必須科目であるのと同様、「ストーリ作り」も、単なる趣味・娯楽以上の価値があるのかもしれません。