ビデオ編集の工夫(DVD画質を逆手に取る)
現在、市販のビデオカメラのほとんどは、ハイビジョン画質で撮影されます。
ハイビジョンの定義も実はメーカーによって幅があり、わざわざ「フルハイビジョン」と差をつけて呼んだりすることもありますが、概ね「1920×1080ピクセル」の映像のことをハイビジョンといいます。
デジタルビデオをパソコンで編集すると、画質が綺麗なまま、と一般には思われていますが、それは一切の圧縮(間引き)工程をはさまなかった場合のことであって、最終出力物を作成する段階では、ほとんどの場合、何らかの圧縮形式を使うため、画質は落ちてしまいます。
この「画質」と「ピクセル数」の関係が、どうもややこしくて、同じピクセル数のはずなのに、大きく画質が異なる映像が出来てしまって、四苦八苦することが良くあります。
特に目立つのはDVDを作成した場合です。ハイビジョンの画質のままビデオを作るにはBlu-rayを使う必要があるのですが、Blu-rayは高画質を実現している反面、欠点もあります。価格は大きく下がってきましたが、致命的な欠点は、作成したディスクの互換性が低いことです。いわゆる「相性」という言い方で諦めざるを得ない状況で、要は、他のプレイヤーで再生できない確率がDVDに比べてかなり高いのです。
私も、一時期は請われてDVDとBlu-rayのそれぞれのデータを作成して納品していましたが、確かにBlu-rayのデータは、コピー業者さんに引き渡したときに「相性のせいだと思うんですが、再生に不具合が出てしまいます」という事が何度かありました。その後、知り合いの映像製作業者の方に対処法を尋ねたところ、「対処のしようがないので、うちではBlu-rayでの納品はお断りしてますよ」と聞いて、依頼、私もお断りする事にしています。
DVDというのは「720×480ピクセル」の情報しか持っていません。撮影した映像の半分以下の画質になるわけです。当然、比べてみると大きく画質は落ちるのですが、メディアやプレーヤーの価格が安かったりすることもあって、いまだにBlu-rayに取って代わられることはありません。
そもそも、画質というものは、思いのほか人間の脳で保管されてしまいます。古いビデオを観た時など、初めの数分は「画質が悪いなあ」と思いますが、やがて気にならなくなってしまうものです。4Kや8Kのテレビは無理やり普及させるのでしょうが、高画質の感動を味わうのは、極めて短時間で終わると思います。
私は、ハイビジョンのビデオカメラが普及し始めたときから、「DVD画質に落とす前提であれば、面白い活用が出来る」と思っていました。それは「トリミングの利用」です。
先にも書いたとおり、ハイビジョンの画質は1980×1080、DVDの画質は720×480です。編集段階で、ハイビジョンの映像を2倍に拡大しても、DVDの画質以上のピクセル数を保っているので、DVD作品として観る限り、拡大した部分の画質が特に落ちているようには見えないはずです。それによって何ができるかというと、例えば、2人の人物の対談映像を撮影する場合、両方にピントの合っているツーショットの映像さえあれば、編集段階で「ツーショット」「それぞれの人物のワンショット」という、違うサイズの映像が作れるので、内容に則してカメラを切り替えているような、効果的な映像が作れるのです。
ところが、つい最近、この手法を使って編集した映像をDVDで見たときに、「編集時に拡大した部分」が明らかに低い画質になっていました。おかしいなと思って色々と調べたのですが、こういう発想で編集をしようという人自体が少ないようで、ネットでは解決法が見つからず、色々と実験をする事になりました。
結論としては、編集時に200%のサイズに拡大した部分は、その部分だけ範囲指定して中間ファイルとして最高画質でムービー書き出しをします。そして書き出した映像を200%拡大した部分と差し替えるなり、上のレイヤーに乗せるなりして、DVD用のファイルを作成すると、全体が同じDVD画質になりました。
ハイビジョン映像を元にDVD画質のムービーを作る際に、映像のトリミングをしたり、擬似マルチカメラ映像を作ったりする方法としても、参考になればと思います。
撮影済みの映像を見やすく編集いたします。
無料メルマガ「DIY特撮入門」
アマチュア映像作家や、映像作りに興味がある方に、超低予算で本格的な映像作りを楽しむ方法を、実例を交えながらご紹介していきます。