低予算で本格B級モンスター映画を作る方法(17)・グリーンバック撮影(人物編)
「7日間でB級モンスター映画を作る」5日目・その1
通常の映画であれば、登場人物はロケなりセットなりで、背景と一緒に撮影されます。ところが、この「7日間でB級モンスター映画を作る!」では撮影を1日で済ませる必要があるので、人物はすべて「グリーンバック」と呼ばれるシートの前で撮影され、別途撮影しておいた背景と合成されるのです。
この、グリーンバック、ブルーバックというような合成技術は、相当昔から存在していて、特にSFX全盛の80年代のハリウッド映画などでは、フィルム合成として盛んに使われていました。
編集にデジタルデータを使うようになった現在、グリーンバック合成は驚くほど手軽に行なえるようになりました。ソフトとしての機能は、選択した色と同じ色の部分を透明にする、という処理です。色は赤でも黒でも選べるのですが、人間を中心にした被写体を撮影する場合、グリーンバックにすると都合がいいのです。
以前から、パソコンの編集ソフトには「クロマキー」というフィルターがあって、選択した色の部分を透明にすることが出来ました。ところが、グリーンの部分と被写体の境目をどこまでシビアに判断できるか、という部分に難があったのです。具体的には、クロマキー合成をすると、被写体の輪郭にグリーンの色がチラチラ残ってしまったり、逆に、そのグリーンを出来るだけ消そうとすると、被写体の輪郭が欠けてしまう、という現象が起きてしまいます。
これを防ぐには、撮影時のセッティングや照明のレベルを上げる必要があり、なかなかに難しかったのです。
私は普段、映像の編集にAdobe プレミア Proを使っています。多くの方は同じだと思いますが、普段使い慣れているアプリケーションといっても、通常使う機能は限られていて、機能の隅々まで知っているわけではありません。
プレミアにも「クロマキー」というフィルターが昔からありますが、今でも、正直、そのフィルターでは綺麗な合成は出来ません。しかし、最近になって、このフィルターの進化系のような「Ultraキー」というものの使い方を知ったのです。
結論から言うと、しっかりとしたセッティングと照明の下ではもちろん、このフィルターを使って商業レベルの合成が出来ます。そして、「ラフなセッティングと照明」でも、工夫すれば「それなりの場面」を簡単に作れることが分かったのです。
この「ラフな準備でも何とかなる」、ということは、インディーズ映画の製作上、重要です。セッティングに2時間3時間掛かるのであれば、その場面の実現は高くつきすぎなので、その手法自体「ボツ」なのです。素人が短時間でセッティングできるレベルの条件で撮影した素材で、それなりの映像が出来てこそ、その手法を採用する意味があります。
そもそも「7日間でB級モンスター映画を作る」という企画自体、プレミアの「Ultraキー」による合成テストをした結果、実現可能と判断して立ち上げた企画なのです。
今回、撮影は地元近くにあるレンタルホールを借りて行ないました。ここは以前、「チームウェンズデイ探検シリーズ」の撮影でも使ったことがあります。その時は、簡単ですが「ラマ寺」のセットを作って撮影しました。今回は、ここにグリーンのシートをセッティングしての撮影です。
あえて撮影用の照明も使いません。照明は映像にとって重要ですが、素人のヘタな照明を当てるくらいであれば、外光や室内灯だけで撮影した方がよっぽどマシな映像になるのです。
出演者は、主人公の保安官役に、「チームウェンズデイ探検シリーズ」では相棒役の横田氏、それにハンター役の私。当然、二人ともスタッフ兼任です。それに、設置・撤収の手伝いのほか、メイキングのカメラを願いしたのは武田氏。二人とも急な依頼に関わらず、都合を付けて引き受けてくれました。
セッティングの時間や手順の記録も兼ねて、メイキングの撮影をしながらの撮影は、休憩も無しで時間ギリギリまで行ないましたが、概ね予定通りに終了しました。
ホールを借りての人物撮影はこの1回で終了ですが、怪物をはじめ、合成用の素材の撮影はこの後、自宅の即席スタジオで続くことになります。
(B級モンスター計画の関連記事をまとめて読むならこちらから)
電子書籍のご案内
「7日間でモンスター映画を作る!」(unlimited読み放題対象)
観て楽しむだけの映画から、作って楽しむ映画へ。
果たして7日間でB級モンスター映画は作れるか?
これまでも趣味としてのDIY映画を提唱してきた著者が、今回、実践編として制作に挑戦したのは、レンタルビデオでも根強い人気のB級モンスター映画。
たとえ低予算でも「本格エンターテイメント創作法」と「邪道映画術」を駆使すればここまで出来る!従来のインディーズ映画の殻を打ち破る「参加型映画」の提案として前代未聞のプロジェクト。
ストーリーデザイナー:今井昭彦氏による特別レクチャーも丸ごと掲載。「面白いストーリーの作り方」の理論から、シナリオ化、映像化、小道具・クリーチャー制作などの工程を、豊富な蔵出し写真と一緒に全て見せます。
巻末には特別付録として、オリジナルショートムービー「暗黒魔獣 ワニガメイーター」の動画もリンク。
クリエイターマインドを持つ全ての人を刺激する一冊です。
学生時代から自主映画を制作してきた著者は、映画制作という趣味を楽しみながらも、「なぜ、これほど面白い遊びが広まらないのか?全ての環境は整っているのに」と疑問に思っていました。そして、その理由の一つが「映画制作はゼロから作り出す要素が多すぎるために敷居が高すぎる」と思い至ります。
一方、近年の「大人の塗り絵」「手芸キット」の人気商品は、同じ創作系の趣味でありながら、すでに下準備が出来ているため、仕上げの工程を気軽に楽しめるものです。創作欲を持った人の入門用商品として優れています。
そこで、「映画制作の入門キット」として「すでに完成した映画に、後から主演する」ということが可能な作品を作れば、極めて少ない負担で自分が映画に出演する体験を楽しめるだろうと考えました。
その第1段階として、「後から出演者を差し替えられる仕様での、ショートムービー制作」を開始したのです。
本書は、その制作過程をリアルタイムで記録してまとめたものです。7日間は以下の内訳です。
・1日目 企画会議
・2日目 シナリオ作成
・3日目 背景撮影
・4日目 絵コンテ作成
・5日目 グリーンバック撮影
・6日目 編集1
・7日目 編集2・仕上げ
このほか、工作系映画ならではの、数々の小道具制作のメイキング解説などを、各章に「番外編」として掲載しています。
一つのプロジェクトの読み物として楽しむだけでなく、本格的なストーリー系創作者を志す方、工作系創作者の方にも、参考になると思います。
既刊紹介
「邪道映画術 DIY映画制作のヒント集」
内容紹介:
映画作りの基礎は大事。でも、ある意味、仲間と余暇で作る自主映画は「資金不足」「時間不足」「経験不足」に加えて「下がるモチベーションとの戦い」など、プロより条件が厳しいのです!
アマチュアならではのインチキな裏技を駆使して、自主制作映画を楽しむための王道と邪道のハウツー集。
映画作りを趣味にしませんか?~DIY映画制作の勧め~
内容紹介:
価値観が多様化する現代ですが、仕事に追われ、日々の忙しさから、趣味らしい趣味を持っていない人は多くいます。ゴルフや釣りはちょっと…という人へ、奥深くて実は敷居が低い、映画作りという趣味の魅力を解説します。
Amazon.co.jpアソシエイト