「特撮」の定義
特殊な撮影って?
特撮は「特殊撮影」の略です。
まず何をもって「特殊」な撮影というのか、曖昧なところはあります。
まず認識すべきは、「撮影」という行為自体が、かなり特殊なものだということです。
公園のベンチに男女が並んで座って話をしているシーンがあるとします。
お芝居としてセリフのやり取りをすると、30秒ほどの長さだとします。
演劇としては、演出家が2人の芝居をつけて、練習が完了すれば、30秒の本番で終わります。
しかし、映像の場合、特殊な効果を狙ったものでない限り、映像をいくつかに分割して撮影します。
- 2ショット
- 男のアップ
- 女のアップ
- 男の肩越しの女の顔アップ
- 女の手のアップ
- 視線の先の景色
などという具合です。
30秒のシーンの材料を撮影し終えるために、数十分から数時間が掛かります。
ちなみに私は、「1カットの撮影に10分」を目安に撮影計画を立てて、いつもスタッフや出演者の顰蹙を買っています。
そのペースでは、撮影に余裕がなさ過ぎるからです。
仮に1カット6秒でシーンを構成すると、30秒のシーンは5カット必要ですから、私の評判の悪い早撮りをもってしても、たっぷり50分は掛かる計算になります。
出演者は、50分間、ああでもないこうでもない、と注文を付けられ、試行錯誤しながら演技をするわけです。
50分間の間には、太陽も雲から出たり隠れたりします。
時間帯によっては、時間経過とともに、影の長さも変ってしまいます。
そうやって撮影した映像を、「30秒間の出来事」として表現するわけです。
「撮影」というもの自体が、「自然さ」とは程遠いことが想像できると思います。
そんな、もともと「不自然」な行為である撮影において、さらに「特殊撮影」というのは、どういうものか。
MVG流に定義すると、「撮影と編集がなくても舞台の芝居のように表現できるもの」を撮影するのが通常撮影で、「単に撮影し、編集するだけでは表現できないことを、何らかの工夫をして撮影することを『特殊撮影』」と考えます。
例えば、映画「ロッキー」。
この作品は、シンプルなストーリーとオーソドックスな作りの良作です。
特撮映画ではありませんが、特撮手法も使われています。
クライマックスのボクシングシーンで、主人公の顔が腫れ上がっている特殊メーキャップなどです。
特殊メーキャップによって、本当は顔が腫れていないのに、映像の中では腫れているように見えます。
この様に、地味な特撮は一般映画の中で随所に見られます。
最終的に実現させたい映像を、実際にカメラの前で再現できる場合は、それを撮影するのが映画の基本です。
しかし、次のような場合は、カメラの前で状況を再現できず、特撮という工夫の出番があります。
- 場面を再現するのが危険な場合
- 物理的に撮影出来ない場合
- 撮影対象がそもそも現実に存在しない場合
- 撮影はしたものの、何らかの問題がある場合
つまり、「作品としてこういう映像が欲しいけど、撮影するだけでは手に入らないから何とかしたい」という状況の解決策として「特撮」があるということです。
手法としては
- 特殊メーキャップ
- ミニチュア
- ダミー
- スタント
- 合成
などの他、単にカメラを傾けて撮影するだけのトリックなどもあります。
MVG博物館では、オリジナル映像作品作りに、積極的に特撮手法を取り入れています。
基本的には、「こういう映像を低コストで手に入れたい」という問題解決の手段として特撮を使いますが、「特撮の工夫」はそれ自体が手品のように楽しめるものです。
誰もが映像制作という創作を楽しむ上で、知っておくと役に立つ知識でもあります。
サイト内には様々な特撮に関する記事を用意していますので、興味を持たれた記事からお読みいただければ幸いです。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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