普通のシーンで効果的な特撮を
低予算映画のメリット/デメリット
私たちが関わる映画は、低予算の作品で、一般的には「自主映画」「インディーズ映画」などと呼ばれます。
これらの多くは、アマチュアのスタッフや出演者によって作られます。
そのため、各種の技術も、プロフェッショナルの品質は実現できないかもしれません。
しかし、このような低予算映画は、そもそも不特定多数の観客を動員しなければいけない、という制約がありません。
作り手が、かなり自由な発想で製作できるというメリットがあるのです。
その結果、商業映画では取り上げにくいテーマやジャンルの作品も作れて、ニッチながらもコアなファンを喜ばせることが多いのです。
自主映画の強力な武器が、その身軽さであると同時に、やはり、「お金は掛けられない」ということが、大きな壁になることはあります。
まず、映画は完成しないと話になりません
企画段階では「面白い」と判断したからこそ、製作に入るのですが、シナリオの中には、映像化が困難な場面も含まれています。
そんな、「簡単には撮れない場面をどう撮るか」が、製作者側の腕の見せ所な訳ですが、その場合、解決案として「特撮」という選択肢を持っていると、格段に可能性が広がります。
「特撮」は、非現実的な場面を生み出す、というだけでなく、お金や手間が掛かる場面を安価に撮るための工夫としても使えるからです。
その意味で、低予算映画こそ、特撮を充分に応用すべきだと思います。
特撮には「大掛かりな特撮」と「手軽な特撮」がある
特撮と一言で言っても手法は様々です。
カメラの角度を工夫して、なだらかな斜面を険しい崖として表現する、というような「映し方だけの工夫」もあります。
セットを用意したり、CGを合成したりといった、別の準備が必要な特撮もあります。
低予算の映画であれば、使える予算も限られています。
大掛かりな準備が必要な特撮ではなく、準備の規模が小さな手法の中から、特撮を選択する必要があります。
- セットを作るのであれば、実物大ではなくてミニチュアで対応できないか
とか
- 簡単な画像の合成で、必要な場面を作れないか
とか検討する必要があります。
いずれにせよ、低予算の手作り映画の中で、「実現が困難」と思われる場面のほとんどは、特撮によって解決できるものです。
特撮は2種類に分けられます。
特撮の分類は何通りも出来ますが、
- カメラの前に「場」を再現するタイプの特撮
- PCでの編集作業の一環として生み出される特撮
という分け方もできます。
例えば、刑事ドラマなどでよく登場する、警視庁の特徴的な建物。
あの建物の映像の後に、会議室のシーンがあれば、「警視庁の中のシーンだな」と連想できます。
ところが、東京近郊に住んでいない場合、警視庁の建物を撮影しに行くことは困難です。
そこで、建物のミニチュアセットを作ったらどうか、という解決策が出てきます。
ミニチュアセットで撮影すれば、昼にも夜にも出来ますし、作りや撮り方の工夫で、かなりリアルで自然な映像も作れそうです。
これは、カメラの前に「場」を再現するタイプの特撮です。
一方で、シナリオの中に、「パトカーの向こうで刑事役の役者が話をしている」というシーンがあったとします。
手軽にこの映像を作るには、道路上で役者の撮影をして、その映像にパトカーの写真を合成する方法があります。
このパトカーは、プラモデルのようなミニチュアで構いません。
これは、編集作業で合成画面として生み出される特撮です。
いずれにせよ、自分で作ったシナリオの世界観を再現するのに、これらのちょっとした特撮が大きな効果を生むことが想像できると思います。
そして、PCによるデジタル編集が一般的になった現在、原理的には、商業映画と同じ特撮手法が実践可能です。
ポイントは、「特撮を含んだ映像」と、「特撮以外の映像」との差を埋めることですが、これは、工作、撮影時の照明、編集など、全体の丁寧な作業と工夫によって充分、達成が可能です。
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