クロマキー映像合成のすすめ
プロの王道手法はコストが高く付きすぎる!
今回は、映像合成の手法について一つ、ご紹介したいと思います。
「映画作り」ということでお手本にするのは、普通は「プロの映画作り」です。
ところが、プロの映画作りというのは、非常に多くのスタッフを必要とする。
作業の工程も複雑で、実際にその撮影現場にスタッフ、出演者が全員が集まって、そこで撮影をするやりかたです。
ほんのワンシーンのために、ロケ現場に行ったり、セットで撮影したりするわけで、非常にコストがかかるものです。
ですから、素人からすると、ちょっと想像がつかないような制作費がかかります。
私は、趣味の映画作りの中で提案している手法があります。
それは、「映像というのは必ずしも、カメラの前の姿を撮影して形にするだけではない」ということを利用して、別々の映像を組み合わせて、欲しい場面を作る手法の活用です。
いわゆる、「特撮」です。
グリーンバック合成は低コストでイメージを再現できる!
この手法をフルに活用して、自由に
- 自分のイマジネーションを優先した場面
- 理想に近い映像
を作りませんか? というよう提案です。
これは、イメージに近い映像が作れる利点の他に、制作コストが何分の一かに減ります。
「コスト」というのは、ほとんどが人件費です。
最もコストのかかる「撮影期間」を大幅に短縮することによって、全体のコストを激減させることを狙ったやり方です。
具体的に言うと、私は人物の撮影は、なるべくグリーンバック合成と言われる手法を使いましょうということを提案しています。
「グリーンバック合成」。
ご存知の方も多いと思いますが、緑色の布の前で人物の撮影をすると、その背景を、「用意した別の背景」と差し替えることができるという、トリック撮影の技術のひとつです。
正確に言うと、バックをグリーンやブルーの一色になるように撮影した素材を、「クロマキー合成」という機能を使って、被写体と「別の背景」を合成する技術です。
細かな原理はともかく、「緑色の布の前でうまく撮影すると、人物が合成できる」という特徴があるわけです。
これを丁寧に応用すると、本来は合成をするようなシーンでないような場面も、このグリーンバック合成で低コストで作ることができます。
実例を紹介します。
超短期間で制作したショートムービーで準グランプリ獲得!
私は、2018年の暮れに、地元の映像コンテストに2日間で撮影した作品で応募しました。
対象はショートムービーだったので、そもそも作品の時間も短いんですが、締め切り2週間前に企画をスタートしたので、通常の作り方であれば、いくつものシーンがある映画を完成させることはできません。
2日間の撮影のうち、1日目は、ビデオカメラを片手に、私一人でロケ地を回って、背景となる景色を撮ってきました。
二日目は、知り合いに出演してもらって、3時間ほどで「人物のグリーンバック撮影」を貸し会議室で行いました。
それらの映像を計画取りに組み合わせてショートムービーを完成させたのですが、「どうせ特撮映像にするなら」なら、ということで、いくつかの小道具を作ったので、期日ギリギリの応募になってしまいました。
森の中でカッパが人を脅かすために、怪物の幻影を見せるシーンを盛り込むなど、異色の作品になっています。
コンテストの結果は、残念ながら「グランプリ」とはならず、「準グランプリ」の受賞になりましたが、少なくとも、この手法のサンプル作品にはなりました。(YAMATO FILM FESTIVALのサイトから受賞作品が視聴できます)
このコンテストでも、審査員であるプロの映画監督をはじめ、多くの人から
「ごく普通のシーンのために、なぜグリーンバック撮影をするのか?」
という質問をよく受けました。
理由は簡単です。
「とにかく撮影期間を短くしたい」からです。
映画の撮影で、公園のシーンは公園に行って撮影をすれば合成しなくても済みます。
- 線路の横の道を歩いてるシーン
- バス停の横のシーン
- 建物の中にいるシーン
- 喫茶店の中で電話をしている
- 水車の前のシーン
それぞれ、近所に実在する場所ですから、現地で撮影することも不可能ではありません。
- その方がリアルでしょ?
- 演技がしやすいでしょ?
- 編集も楽でしょ?
そういう意見を多くもらいます。
それは当然です。しかし、ここに大きな落とし穴があります。
現地に行って、シーンごとに撮影をすると、撮影場所がごく近くという場合を除いて、1日では1つか2つのシーンしか撮影は出来ません。
実際は、撮影当日に、「撮影」をしている時間というのは、合計で30分にも満たないことがほとんどです。
移動と準備、撤収が作業時間の大半を占めます。それが「撮影」の実態です。
別のシーンの撮影のために移動するだけで、数時間のロスが発生することが一般的なんです。
また、せっかく予定した当日に、雨が降ることもあります。
そうすると、その日の撮影は延期になってしまいます。
映画制作というのは、「雨で中止になったからコストもかからない」と言うわけにはいきません。
その日、スタッフや出演者のスケジュールを押さえているわけです。
仮に、友人同士で映画を作っていて、にギャラを払わなかったとしても、「その時間空けてくれている」というところで、もうコストが発生してるわけです。
ですから天候によって中止になるというのは、非常に高くつくことになります。
今回のスケールの映画であれば、通常の撮影でも、天候に恵まれれば、丸2日で撮り切れたかもしれません。
しかし、雨が降れば一巻の終わりですし、2日間の天候が大きく違ってもおかしな映像になるでしょう。
そもそも、期間内に出演者のスケジュールが2日分確保できなければ、撮影できません。
私は、グリーンバック撮影の手法を使うことで、人物の撮影は3時間で終了しています。
仮に雨が降っていたとしても、同じ映像を撮影できたでしょう。
夜しか出演者の都合がつかなかったとしても、同じ映像を撮影できたでしょう。
背景映像の撮影は監督が一人で行なえますから、仮に天候が悪かったりしても、後から手軽に撮影しなおして、差し替えても良いわけです。
人物を伴わない、背景だけの撮影は、極めて短時間で終了するので、全体コストからすると負担は極めて小さくて済みます。
私は、どんなシーンも、グリーンバックの前で撮影してしまうやり方を提唱しています。
もちろん、この手法にも色々と弱点があります。
しかし、その弱点・特徴も踏まえた上で、「工夫する」ことが、映画作りの楽しさそのものだと思っています。
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