野外の足元にあるロケ地を探せ
コストが高いロケーション撮影
通常、「映画の撮影」と言うと、カメラマンと出演者全員が、撮影場所まで行く必要があります。
これには、非常にコストが掛かります。
雨が降ったら、中止になってしまうので、「スケジュールを押さえた全員のコストが無駄になる」というリスクがあります。
合成映像でシーンを作る映画の場合、背景の撮影は、監督がカメラを持って一人で撮影場所に行けば済みます。
仮に大雨が降ったとしても、無駄なコストは一人分で済みます。
足元の風景を背景映像として合成する
また、「合成映像を使ってシーンを作る」ということは、その背景が「実在」しなくてもいいわけです。
例えば、私がよくやるのは、古代遺跡のミニチュアセットなどを背景として撮影して、そこに人物を合成する方法。
これによって、実際には存在しない遺跡のシーンが作れるということです。
これは、「遺跡のミニチュアセットを作らなければいけない」という大きな仕事があるわけですが、そこまでしなくても、「実際に存在しない魅力的な背景」というのは撮影できます。
私が特にオススメしたいのは、「野外で足元を観察しろ」ということです。
人物と背景を合成して一つの映像を作る場合、その縮尺が合ってなくて構いません。
例えば握りこぶしぐらいの石があるとします。
カメラを地面に置くようにして、その石を撮影して背景映像として、その前に人物を合成するとどうなるか。
石は、大きいものか小さいものかという、「一見して分かるスケール感」を持っていないので、人の後ろにある「大きな岩」に見えるはずです。
これを利用すると、ほんの30cmぐらいの段差の土手の映像も、撮影によっては、見上げるような崖の背景として使えます。
公園にある樹木の根っこが、地面の上に張り出してうねった状態で面白い形を見せていることがあります。
普通に見ると「公園に植えられている木の根っこ」なんですが、カメラを地面の上に置くような形で撮影すると、ものすごい大木のような、魅力的な背景になります。
そこに人物を合成すると、ちょっと不思議な異世界感のある映像が出来ます。
映像合成を前提にした観察眼さえあれば、近くの公園でも、そういう魅力的なロケ地が見つかります。
これが、ミニチュアを使った映像作品の面白いところです。
撮影時の注意点
撮影時に注意しなければいけないのは、背景映像の中に、「スケール感が分かるもの」が写らないこと。
自然の風景をミニチュアセットとして撮影するときは、「木の葉」とか「草」が大敵です。
例えば、握りこぶし大の石を岩に見立てた映像を合成して作ろうとしても、その石の横に「木の葉」が一枚落ちていると、見る人は、「木の葉」を「大きさの基準」として見てしまいます。
人物を合成すると、人物を小人と認識してしまうことになります。
ですから、こういう撮影の時には、
- 木の葉がないこと
- 生えている草がないこと
というのが条件になります。
そう考えると、草が生い茂っている季節というのは、この天然ミニチュアセットの背景撮影には向かないわけです。
カメラに映り込む草を、全部隠さなければいけないからです。
ところが、冬の間は草がないことが多いので、地面に落ちている木の葉をどかすだけで、スケール感を隠すことができます。
そういうわけで、野外を「手軽なミニチュアセット」として背景撮影に使うという場合、冬という季節は非常に適していると思います。
背景と人物を合成する映画というのは、事前にどれだけ、「使える背景」として「映像のストック」を用意しておけるか、ということも大事になってきます。
例えば、夏に冬のシーンを撮りたいと思ったら、冬まで待たなければいけません。
冬の間に冬の景色を撮っておけば、人物撮影をして冬のシーンが出来ます。
冬に夏のシーンを撮りたい時も同じです。
色々な映像をストックしておく習慣を身につけると、より手軽に、たくさんの映画を作れるようになると思います。
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