一瞬の景色を理想的に取り込め
「撮影過程の楽しみ」と「理想的完成」のどちらを取るか
私は常々合成映像を使って映画を撮るといいですよということをお勧めしています。
もちろん合成映像ですから、
- 不自然になりがちだったり
- 「それは本来の映画作りではない」という批判も多い
という弱点はあります。
確かに、映画の醍醐味の一つは、
- その場所で
- 一種のタイミングを見計らって
- 緊張感をもって演技をする
- うまくいった時の喜びを味わう
というようなものもあります。
そのように「プロの現場を真似て楽しみたい」という人は、「合成映像で映画を作る」ということに魅力を感じないと思います。
ところが、私のように
- 自分がイメージした場面を撮りたい
- 自分で考えたストーリーを映像化したい
ということを優先した場合は、「プロのやり方」を真似すると、全くそれが実現に近づかないんです。
自然は撮影を待ってくれない
例えば、「夕日に映えるススキの野原」という、非常に綺麗な景色があると、その前に佇んでいるヒロインの映像を思い浮かべたりします。
映画を作ってない人は「そのススキの前に行って撮ればいいじゃないか」と思うでしょう。
でも、そううまくはいかないんです。
プロのスタッフや役者たちが現場でやっていることを真似しようと思っても、まず不可能なんです。
特に野外の撮影は時間との戦いです。
画面に映える「光の状態が良い時間帯」というのは、1日のうちでほんの30分ぐらいしかなかったりします。
特に、夕日のシーンでは、もっと短い時間しかチャンスがありません。
その時間に合わせて、本当に撮影ができるのかということです。
シャッターを切るだけで完了する写真とは違います。
動画の撮影には単純に手間が掛かってしまいます。
ワンカットだけなら、いい時間帯を見計らって、何度も本番撮影をした中から選ぶことも出来ますが、
- 全体映像
- 顔のアップ
- 別角度から
というように、通常通りのカット割りをしたシーンの撮影を、アマチュアが数分で完了させるのはまず不可能です。
私は、もう30年以上も趣味で映画を撮っていますから、何度も挑戦してきましたけれども、なかなか思い通りにはいきません。
それでも、「その場で俳優を演技させて撮る」という、古来から伝わる映画の撮り方にこだわるべきなのか、「自分が思い描く映像を、合成でもいいから再現する」べきなのか、という選択をすることになるわけです。
「合成映像で自分のイメージを優先する」という選択
「合成映像が自然に見えるかどうか」は、ハードの課題や、個人の撮影技術合成技術の課題もあります。
少なくとも、ハード面では課題はクリアしていると考えます。
ほんの数年前に比べても、格段の進化を遂げています。
それなら、この「合成技術」を利用しない手はありません。
合成時術を利用すると、実際の撮影では再現出来ないような、「理想的なタイミングの映像」も作れるようになるんです。
例えば、ヒロインのセリフが終わると同時に、「丁度良い具合で風が吹いてきて、ススキの穂が揺れる」という映像は撮影できません。
実際にすすきの前で撮影した時には、そう都合良くはならないんです。
想定とは逆方向から風が吹いたり、風が強すぎて髪型が乱れてしまうでしょう。
合成映像であれば、
- すすきが風で揺れている
- 人物も髪の毛がいい具合に風で揺れる
という状態にできます。
あるいは海の岩場で肝心なこうセリフを言っている最中に、大きな波が叩きつけて波しぶきが上がると、それは邪魔なわけです。
ところが、合成映像を使えば、決めセリフが終わった直後に、波が岩にぶつかる、というような場面が作れます。
晴れた日に、雲の具合によって、急に日差しが陰ることがあります。
その映像も背景合成用にストックしておくと、役者の芝居に合わせて光の変化を演出として使えます
アニメーション作品的な、設計した通りの映像が作れるということです。
実際に現場で撮影しようとすれば、神頼みになります。
その偶然を待ちながらの撮影には膨大な時間が掛かりますから、深刻な見返りが発生します。
それは、
- スケジュールの都合で、別のシーンをバッサリ削除しなければいけない
- 全体スケジュールの大幅な遅れから、作品の製作自体が頓挫する
ということです。
これが、「本来特撮シーンでないにも関わらず、合成映像を使う事を推奨する理由」の一つです。
参考になれば幸いです。
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