シンプルな合成だけで画面を作る例
人物より奥側に映像を合成したいと思ったら、手前に写る人物も、グリーンバックという手法を使って合成しなければなりません。
合成は、常に手前に映像を重ねて作る必要があるからです。
ただ、設定上は奥側にあるものでも、錯覚を利用して、手前に合成できる場合もあります。
例えば、主人公が歩いている景色の中で、遥か遠くに「煙突と煙」を追加する場合。
これは、設定上は、被写体よりもはるか奥に煙突がある状況です。
しかし、構図によっては「画面の手前の階層」つまり「映像の上」に「小さく描いた煙突と煙」を合成することで実現できます。
どういう構図にするかというと、条件はシンプルです。
手前の主人公と、はるか奥側に見える煙突が、けっして重ならないようにするだけです。
イメージ出来るでしょうか?
画面上で重なりさえしなければ、前後関係はわからないのが映像の特徴です。
錯覚を利用できることも、映像の面白さです。
もう一つ別の例を挙げてみます。
「薬品棚のある研究室」という設定の部屋。
SFやホラーのジャンルの作品では、効果的なシーンになりそうです。
もし、本格的に映画を撮るとしたら、ガランとした部屋に大きな薬品棚を運び込んで、棚の中に、それらしいガラスの瓶をズラリと並べる必要があります。
そのシーンのために、コストを掛けてこのような大掛かりなセットを用意できるのであれば、映像の設計に気を付ける必要はありません。
しかし、超低予算で映画を撮る必要がある場合、特撮を活用することになります。
重要になるのは、映像の設計です。
イメージに合う、ガランとした部屋が撮影に使えるとします。
しかし、「薬品棚が並んでいる研究室」と聞いて、
「人物の向こう側に薬品棚が重なっている状態」
をイメージしてしまったら、「ガランとした部屋での人物撮影」は、ほぼ無意味になります。
人物と重なった状態で、「奥側」に画像を合成する事はできません。
ガランとした部屋の映像に、薬品棚を合成し、その手前に、グリーンバック撮影した人物を合成しなければならないからです。
逆にこの合成をするのであれば、部屋はミニチュアセットでも良いことになります。
合成の弱点は、どうしても映像が不自然になる危険があることです。
- 静止した物体写真の合成
- グリーンバック撮影をした人物の合成
を比較すると、「映像の自然さ」という点では、静止した物体の方がはるかに上です。
グリーンバック撮影をした人物の合成は、ある程度の不自然さを覚悟の上で、それ以上のメリットを狙って使う手法です。
自然さを優先させるなら、出来る限り、人物を合成するのではなく、人物が写っている映像に、写真を合成するべきなんです。
では、具体的に「ガランとした部屋」を有効に活用するには、どういう映像設計にすればいいでしょう?
人物と棚の配置、カメラの位置を考慮し、人物と合成する棚が重ならない構図で映像を設計します。
その構図に合わせ、まず、人物の撮影をします。
そして、人物と重ならない部分に、別撮りした「薬品棚の写真」を貼り付けます。
薬品棚は、ミニチュアセットを作る方が現実的でしょう。
ミニチュアセットで薬品棚を作ったら、もう1枚、写真を撮影して、「画面の手前」に合成します。
薬品の瓶の隙間から、人が見えるような映像を作ると、「薬品棚に囲まれてる部屋」が表現できます。
この場合は、映像の合成後に、棚の映像のピントをぼかすような処理をすることで、立体感も表現できて効果的です。
こういう設計をすると、撮影がシンプルに済みます。
コストが変わってくるわけです。
- 手間が掛かりすぎる
- コストが掛かりすぎる
という状況は、映像制作活動を断念する原因になります。
出来上がりの映像の違いによる効果の違いと、時間を含めた、コストの違いを意識することが、創作活動継続のために必要な感覚だと覚えておくべきです。
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