イメージ映像を映画にする
小説のプロモーションビデオから見る可能性
小説家、京極夏彦という人をご存知でしょうか?
何年も前になりますが、「邪魅の雫」という作品が発表されました。
その時に、この小説のプロモーションとして3分間のイメージビデオが公開されました。
内容は、京極夏彦による小説の朗読に合わせて、モノクロのイメージ映像が流れているだけのものです。
しかし、これが作品の世界観と合っていて、心地良いんです。
元々、ストーリーとして面白い小説の場合、朗読するだけで、音声コンテンツとして成り立ちます。
朗読している人の映像を入れる、というような方法もありますし、このイメージビデオのように、そのシーンに即したイメージ映像を重ねるという形でも、映像コンテンツ化できるわけです。
つまり、ここでは「音声」が主で、「映像」は補助的なものです。
これを「映画」と言っていいかどうか、という議論はあるかとは思いますが、なにしろ映画にはいろんな種類のものがあります。
その自由さが、映画の大きな魅力です。
山の四季の移り変わりだけを描いた映画もあります。
人が誰も登場しないような、自然現象の映像も、物語性を持って描くことができるわけです。
既に「小説」のような物語がある場合、最もシンプルな「映像コンテンツへの変換」として、この「イメージ映像としての映画」にするという選択肢があると思います。
要は、観客がそれを見た時に魅力を感じられるかどうかです。
もし、魅力を感じられるとしたら、この作品は成り立っていると言えます。
映画を完成させる事で身に付く技術
私は「ストーリー映像全般」を「映画」と定義しています。
ですから、劇場公開作品のような規模でなくても、もちろん「映画」と捉えています。
映画を作ると言うと、非常に大掛かりに
- 人を集めなければいけない
- お金も必要だ
- 時間もかかる
というように、大げさなことを思い浮かべる人がたくさんいますが、私の定義する「映画」を作るためには、必ずしも、それほど大掛かりな準備を必要としないわけです。
まず必要なのは企画。
その企画を、作品として完成させることが、最も重要なことです。
とかく、クリエイターは実力以上に高望みするものです。
批判精神も旺盛で、プロが作った作品も簡単に批判します。
批判をしているうちに、自分ならもっと素晴らしいものが出来るように思えてきて、技術の前に理想だけが高くなってしまいます。
そうなると、非常に凝った大作映画を企画しがちになります。
しかし、「完成させる技術」が全然備わっていませんから、まず、その企画は実現できないんです。
技術を身に付けるには、とにかく作品を完成させることです。
技術にも色々な種類のものがあります。
- 予定した映像を撮影する技術
- うまく繋がらない映像を、何とか繋がって見えるように工夫する技術
- 「この部分はこれで完成」と判断する技術
これらの技術は、実際に作業をしないと身に付きません。
恐らく、どういう技術なのか、想像も付かないでしょう。
でも、作品を完成させるためには、不可欠な技術です。
短い作品、シンプルな作品、もっと言ってしまえば、つまらない作品でもいいから、「作品を完成させる」ことが、映画作り上達の一番の近道です。
「本格的な映画を作りたい」という人にとっては、イメージ映像のような作品は、物足りないかもしれません。
でも、まずはこういう「一人でも大半のシーンが作れる映画」を企画して、作品を完成させることが、本格映画を作れるようになる訓練になると思います。
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