ストップモーションモデルの制作【1】
映画に登場する「クリーチャー」の5大表現手法
モンスター映画などに登場する怪物のことを「クリーチャー」と呼んだりします。
このクリーチャーを表現する手法として、最近ではCGが主流ですが、CG以外にも古典的で魅力的な手法が存在します。
主な手法は以下の5つです。
1.CG(コンピューターグラフィクス)
2.着ぐるみ
3.ロボット
4.マペット
5.モデルアニメーション
CGは「ジュラシック・パーク」シリーズのような大作映画だけでなく、ビデオ用の低予算映画でもよく使われる手法です。
パソコン内だけで完結できる手法のため、映像レベルによっては制作予算を抑えられます。
CGで作られたクリーチャーの特徴は、デザインの自由度が高い事などが挙げられます。
着ぐるみは、日本の「ゴジラ(’55)」をはじめ、「キング・コング(’77)」「エイリアン(’79)」などで使用される手法です。
古典的な手法ですが、前述の「ジュラシック・パーク」、「ゴジラ(ローランド・エメリッヒ版)」などでも、場面によってはこの、着ぐるみ手法を活用しています。
独特の重量感が表現できる特徴がありますが、中に人が入るため、デザインや動きに制約があります。
また、制作にも撮影にも大きなコストが掛かります。
ロボットの手法もサイレント時代から活用されていた手法です。
大きいものから小さいものまで対応でき、デザインにもかなり自由度がありますが、機械仕掛けのため、「自然な動き」の表現は苦手です。
「キング・コング(’77)」は当初、全編、実物大ロボットで表現しようとしたもののトラブルのため実現できず、一部のシーンで採用しただけで、着ぐるみ手法に切り替えたことで有名です。
実は、「ジュラシック・パーク」も全く同様で、全編、実物大ロボットという構想から、CGを含む、様々な手法を混在させた作品です。
マペットは、人が手を入れて動かすタイプのクリーチャーです。
「ダーククリスタル」「ラビリンス」など、コミカルな造形の印象が持たれがちですが、「恐竜の島」や多くのホラー映画などでは、リアルなクリーチャーを、この手法で表現しています。
手を入れるため、デザインに制約はありますが、特に、クリーチャーの口の動きをリアルに表現できること、制作コストが比較的少なく済むことなどの特徴があります。
モデルアニメーションは、コマ撮りと呼ばれる手法です。
少しずつ動かしたミニチュアモデルを、一コマずつ撮影することによって、クリーチャーの動きを表現します。
この手法の特徴は、デザインに制約が少ないこと、ミニチュアのため、制作コストが少ないこと、一人で複雑な動きの撮影が出来ることなどです。
一方、ミニチュアモデル工作の難易度が高いこと、1カットごとの撮影に手間と時間が掛かることなどの欠点があります。
モデルアニメーションに挑戦する理由
わたしは、「マペット」の動きのリアルさを活かした、リアルなクリーチャーを作ってモンスタームービーを作ろうとしてきましたが、撮影上の欠点が目立ってきました。
クリーチャーの2箇所以上を動かす場合、一人では撮影できないので、二人がかり、三人がかりでの撮影になります。
それはそれで楽しい撮影になると思われましたが、昨今のコロナ禍の影響で、小さなマペットを数人がかりで動かしながら撮影するのは避けるべきです。
また、そもそも、人物が登場しない「ブツ撮り」であるミニチュアのクリーチャー撮影は、スケジュール調整の点から言っても、できれば一人で行いたいところです。
そこで、30年来封印してきた、モデルアニメーションに挑戦することにしました。
アニメーション用モデル製作の実際
まずは、基本構図のアイデアスケッチです。
最もシンプルなモデルアニメーション用モデルは、柔らかい針金だけで骨組み全体を作りますが、撮影時の動きの付けやすさや耐久性を考えると、少なくとも大きな関節は、球体を使った構造にする必要があります。
球体の関節を使った骨組みは「アーマチュア」と呼ばれます。
通常は金属製のパーツで作られるので、パーツを作るための金属加工に使う電動工具が必要な上、骨組みだけでも数万円のコストが掛かってしまいます。
30年前、モデルアニメーション映画を作るため、金属製のアーマチュアを自作したときの反省を踏まえ、今回は主要パーツをプラスチック製にして再挑戦します。
金属加工に比べて、圧倒的に工作が容易で、コストも節約できるからです。
メインのボールジョイント部は100円均一ショップで売られている「丸ピン」(画鋲)です。
プレートは、ホームセンターで売られている内装用の細い板材(ABS製)を使います。
強度や工作性を確認するため、試作パーツを作ってみました。
試作パーツを組み立てて動きや強度のチェックをしたところ、実用化可能と判断したので、パーツを量産するための治具を制作しました。
これ以降、ストップモーション用のクリーチャー完成まで、記事は続きます。
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