過去映像を流用して映画を作る
自主映画を量産したいなら有効な手法
2021年、新作第一弾は「虹色の霧」というショートムービーを企画し、製作に入っています。
これは、「升田式スーパープリヴィズ方式」での3作目になります。
「升田式スーパープリヴィズ方式」は、簡単に言うと、「全編」を「人物」と「背景映像」の合成による映像で構成して映画を作る手法です。
圧倒的なメリットとして、
- 製作期間が短かい
- 制作コストが少ない
- 出演者未定のまま、70%まで完成させられる
ということがあります。
和製ロジャー・コーマンを目指す私としては、1作品を完成させるのに1年から数年掛かる「従来のやりかた」では、「作品を量産してそのラインナップを眺める楽しさ」は味わえないんです。
正直なところ、私は映画製作を「芸術活動」だと思っていません。
そのネタが、自分の中で旬だと感じられる間に完成させて、まず楽しみ、後から見るときは「この時期はこの要素に興味が強かったんだよなあ」とタイムカプセルを見る楽しみを感じる、そういう創作活動です。
過去に関わった仲間、特に出演者は、映像記録の中に自分が残っているので、気恥ずかしさを感じつつも、「いい記念になっている」と言ってくれています。
これが、映画づくりの最大の功績だと感じます。
撮影が少ない映画とは?
今回のショートムービー、原案は、何年も前に知り合いの作家さんから提供していただいたものです。
映像化に際して、アレンジを加えています。
この作品については、「この作品のための新規撮影をどこまで減らせるか」を裏のテーマにしています。
「升田式スーパープリヴィズ方式」の基本的な作り方は、udemy講座「グリーンバック映画入門」
https://www.udemy.com/course/greenback-movie/?referralCode=200B44517C4F2255DEED
で詳しく解説している通り、シナリオに合わせて背景の撮影を行います。
あるいは、「ここを舞台にして映画のシーンを作りたいなあ」という場所で、映画に使いやすいような背景映像を撮影しておき、それを使います。
それに対して、この「虹色の霧」では、新しい試みに挑戦しています。
それは、単に観光の一環で撮影した映像から、必要な映像・画像を切り出して使用することで、ショートムービーの背景にならないか、という実験です。
これが上手くいくと、「映画の量産」には、非常に有効な前例となります。
- 撮影前の企画や準備
- 撮影
- 編集作業
のうち、最も計画通りに進みにくい「撮影」の部分の負担が、より少なくなるからです。
コツを意識して、仲間と共有すれば、それぞれが旅行先や近所で撮影した映像を、映画のシーンに活用できることになります。
「映画撮影」の概念が変わる、楽しいやり方かもしれません。
背景映像ストックのコツ
今回の「虹色の霧」の場合、メインになる舞台は「森の中」です。
森のシーンに使う背景映像は、数年前に観光というか、遠出の散歩中に撮影した映像で賄うことが出来ました。
ただ、思いの外、「使える部分」が少なかったのも事実です。
動画としてある程度の長さを撮影してあったので、十分な選択肢を確保できると思っていたのですが、実際には「工夫して何とか使った」という感じです。
ここで感じた、背景として使える映像の撮影のコツを、いくつか共有したいと思います。
まず、観光などで撮影する場合、当然、その映像自体が主役です。
その映像単体で、バランスの取れた構図になるように撮影してしまうんです。
もちろん、これも使える映像の一つではあります。
ただ、背景映像にしようとする場合は、「バランスの崩れた写真」の方が、使い勝手が良いんです。
例えば、「面白い形をした木の幹」があったとします。
森の中でそれを見つけると、それ自体を主人公として、バランスの良い構図で撮影してしまいます。
バランスの良い構図の映像は、人物を合成しない
- 情景映像
- 人物視点の映像
にしか使えない傾向があります。
人物を合成する背景映像としてその「木の幹」を活かすには、少なくとも木の幹は、画面の端になるように撮影しておいたほうが効果的です。
人物を合成しても、「面白い形をした木の幹」が見えるからです。
つまり、あえて、単体としてはバランスが悪い構図でも、何パターンか撮影しておくべき、ということです。
フィルム撮影の時代と違って、撮影の分量を多くしても、コストは1円も増えませんから、是非、実行してみてください。
それから、「出来るだけ違う種類の映像を用意する」という事も有効かと思います。
今回の例でいうと、撮影したのが秋の森なので、基本的にどちらを見渡しても景色が似ているんです。
しかし、背景としては
- 明るい空が見えている
- 空は一切見えず、影で暗い
というように、色々なバリエーションがあったほうが、同じ森の中だとしても、「別のシーン」としてメリハリを付けやすくなります。
今回、特に感じたのは、「わざわざその場所に行って撮影するほどでもない」というような、地味な、冴えない映像のほうが、背景としては重宝した、という事実です。
「地味で冴えない映像」を撮影する唯一のコツは、「これは使えない」と判断せず、「念のために撮っておく」ということだけです。
撮影する時には、「これくらい撮っておけば十分だろう」と思っても、いざ、映像を選ぼうとすると、「欲しい映像が無い」ということは良く経験します。
意識して、「念のために冴えない映像も撮っておこう」とすることが、最も有効なコツかもしれません。
参考になれば幸いです。
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Making Films Using Archived Footage
A Useful Technique for Producing Independent Films in Quantity
In 2021, I embarked on my first short movie of the year, Rainbow Mist. It marks the third project under the “Masuda-Style Super Previsualization Method.”
The Masuda-Style Super Previsualization Method is essentially a filmmaking approach that constructs the entire movie by compositing “people” with “background footage.”
Key advantages include:
- Short production periods
- Low production costs
- Up to 70% completion even without finalizing the cast
My Approach: A Personal Perspective
Aspiring to be a Japanese Roger Corman, I find the traditional method—taking one to several years to finish a single project—does not satisfy my urge to “enjoy the lineup of completed works.”
For me, filmmaking is not an “artistic pursuit.” It is about completing a project while the idea feels fresh and exciting, enjoying the process, and later revisiting it as a time capsule to remember past inspirations.
Collaborators, especially actors, often find their preserved work endearing. It’s a little awkward for them, but many have said it serves as a great keepsake. To me, this is one of filmmaking’s greatest achievements.
Minimal Shooting: A New Theme
The premise for Rainbow Mist was generously provided by a writer friend years ago, and I’ve tailored it for cinematic adaptation. One hidden theme for this project is “how much can I minimize new footage required for the film?”
Typically, the Masuda-Style Super Previsualization Method involves capturing backgrounds tailored to the screenplay or shooting footage in desirable locations for later use. This is explained in detail in my Udemy course: .
For Rainbow Mist, however, I experimented with repurposing casual travel videos by extracting suitable segments for use as backgrounds. If successful, this could set a valuable precedent for producing films efficiently.
Stockpiling Background Footage
The main setting for Rainbow Mist is a forest, and most backgrounds were sourced from footage I shot during leisurely outings years ago.
Here are some insights I gained about capturing useful background footage:
- Deliberate Composition When filming casually, we tend to create balanced, self-contained compositions. These work well as standalone visuals but are often less suitable as backgrounds for compositing characters. Shooting with some imbalance—such as placing an interesting tree trunk at the edge of the frame—makes the footage more adaptable.
- Variety of Footage Backgrounds with diverse characteristics, like bright skies or shadowy corners, allow more distinction between scenes, even within the same location.
- Appreciate the Unremarkable Surprisingly, understated, mundane footage turned out to be the most versatile for backgrounds. The key is not to dismiss footage as unusable but to capture it “just in case.”
These methods may change how we think about “movie filming.” By focusing on collaborative resource-sharing and intentional background stockpiling, filmmaking could become not only more efficient but also much more enjoyable.