野外でのクロマキー用撮影
グリーンバックに理想的な照明:太陽光
クロマキー合成には、通常、グリーンバックと呼ばれる、緑色のシートを使用します。
ちなみに、背景用のシートの色が緑色である理由は、単に人物の肌の色から程遠い色(差が大きい色)なので、被写体を「抜き出す」のに都合がいいからです。
合成したい被写体が白黒の犬やネコであれば、背景は赤でも黄色でもクロマキー合成は可能です。
クロマキー合成の原理の説明はちょっと難しいので、「現象」だけ説明すると、撮影した映像のうちの「ある一色」について、その色の部分を「透明にする」ということができます。
透明になりますから、映像の後ろに何も用意していなければ、黒く見えますし、後ろに景色の映像を配置しておけば、その景色が見えます。
このしくみを利用して、緑色のシートの前で人物を撮影すると、背景を入れ替えることで、人物がその背景の景色の前にいるように見えるという訳です。
原理はこうなのですが、実際に撮影してクロマキー合成しようとすると、なかなか思ったようにきれいに緑色のシートが透明になってくれません。
つまり、背景がきれいに合成できないんです。
上手く合成できない理由のほとんどは、「背景のグリーンバックシートが一定の色で撮影できていないから」です。
一定の色とはどういう事か、わからない人もいると思います。
シートの色は、もちろん一定です。
どの部分も同じ色をしています。
しかし、実際に緑色一色のシートだとしても、カメラから見て、シートの隅々まで同じ色をしているわけではありません。
室内でグリーンバック撮影をすると分かりますが、撮影されたグリーンのシート部分は、場所によって色が全然違います。
天井に室内の照明があれば、シートの上の方は白っぽい緑に見えます。
足元付近は照明から遠いので、黒っぽい緑に見えます。
実物のシートの色が一定だとしても、カメラからは、「明るい緑色」から「暗い緑色」まで、相当の幅を持ってグラデーションがかかった別の色に見えます。
これを認識する必要があります。
クロマキー合成は、
「ある一定の色のものを透明にする」のではありません。
「ある一定の色『に見える部分』を透明にする」のです。
大抵の場合、撮影したグリーンバック映像は、被写体の背景にグラデーションが生じています。
すると、クロマキー合成によって、「中間的な緑色」の部分を透明にしようとしても、「明るい緑色」部分や、「暗い緑色」部分は「緑色」とは認識されないため、透明になってくれません。
背景映像の前に「汚れ」のようにシートの名残が見えた状態の合成映像になってしまいます。
パソコンを使った編集段階での対処としては、クロマキー合成設定の「緑色」と認識する範囲を広げて、「明るい緑色」から「暗い緑色」までが透明になるようにするしかありません。
すると、別の問題が発生します。
「明るい緑色」から「暗い緑色」までは「緑色」と認識されるのですが、選択基準が広く曖昧になってしまったことで、本来緑色でない部分、例えば「茶色」とか「灰色」などの別の色の部分も、「緑色の範囲内」として誤認識されてしまって、背景と一緒に透明になってしまうんです。
クロマキー合成は、このパソコンの誤認識との戦いです。
根本的な解決方法は、撮影時に「背景が一定の緑色に見えるように調整する」ということです。
室内撮影の場合、グリーンバックシートを「一定の緑色」に見えるようにするために、複数の照明を組み合わせる必要があります。
さらに、狭い場所で小規模な照明設備を使う場合が多いので、なかなか面倒です。
実は、私もいつも失敗しながら、試行錯誤しています。
ところが、グリーンバックシートに、「完璧に均等な光」を簡単に当てる照明があります。
それが太陽です。
例えば、野外で高さ2mにグリーンバックを張るとします。
そのグリーンバックに影が落ちないように被写体を写り込ませて撮影すると、グリーンは見事に「一定の色」として撮影されます。
室内の照明と違って、光源である太陽の距離が遠いので、シートの上部だろうが、足元だろうが、「完全に同じ明るさ」で照らされるからです。
今回、製作中のショートムービーのために、マンモスのミニチュア模型を、野外でグリーンバック撮影してみました。
実験と練習を兼ねているので、マンモスの動きには色々と課題はあるのですが、クロマキー合成自体は、室内撮影した場合と比較にならないほど簡単にきれいに行えました。
背景に写っているグリーンバックシートの色が、カメラから見て一色の緑色に見えるからです。
改めて、野外でのグリーンバック撮影のメリットを実感しました。
しかし、同時に大きな問題も再確認しました。
「風」の問題です。
野外での撮影は、室内撮影と違って、風があります。
グリーンバックシートが風で揺れたりすると、せっかく太陽光で一色の緑色に見えているシートに、微妙なグラデーションの影が生じてしまって、綺麗なクロマキー合成が出来なくなってしまいます。
今回は、室内撮影のときに使用しているスタンドを野外で使いました。
室内と同じ様にスタンドを立ててしまうと、微風でも耐えきれずにスタンドが吹き飛ばされることは容易に想像できたので、コの字型に組み立てたスタンドにグリーンバックシートを掛けた後は、三脚状になるスタンドの脚は広げずに、コの字型のスタンドごと、コンクリートの壁面に立て掛けました。
テープなどで固定はしたものの、一度、風に煽られてスタンドごとシートが舞い上がり、スタンドの金属部分が折れ曲がってしまいました。
下手をすると、怪我をしたり周囲のものを破損する危険があるので、改めて室内用のスタンド使用は厳禁だなと思いました。
グリーンバックの野外撮影のために
クロマキー撮影にとって非常に魅力的な太陽光。
これを活かすための、野外でのクロマキー撮影の方法は実験を続けたいと思います。
商業映画などでは、バーに取り付けたグリーンバックシートの両端を、スタッフが手に持って、被写体の後ろに緑色の背景を張ります。
太陽の位置に合わせてシートの位置を移動できるので、いい手ではあるのですが、そのために二人以上のスタッフが必要です。
必要最低限の人数で撮影する私達のDIY映画では、この「スタッフ確保」がネックになります。
そのスタッフも参加することが条件となる分、撮影のスケジュール調整が難しくなるからです。
DIY映画撮影のメリットである、「身軽さ」を維持しつつ、スタンドも使わず、グリーンバックシートを簡単に背景に張るにはどうするか。
現在、考えている、最も現実的な方法は、コンクリートブロックの壁面に組み込まれている「水抜き用の塩ビパイプ」を利用した、グリーンバックシートの設置です。
予め、パイプにぴったりはまるサイズの15cmほどの角材を4つ用意しておいたらどうでしょうか。
角材を適当な4箇所の塩ビパイプにはめて、それを起点にロープを四角く張り、ロープに対してグリーンバックシートを貼り付ける手法です。
設置場所も限られますし、そもそも天候に左右されてしまうことで、グリーンバック撮影のメリットが1つ減ることにはなりますが、選択肢の一つとして確立しておこうと思います。
参考になれば幸いです。
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Outdoor Green Screen Filming
The Ideal Lighting for a Green Screen: Sunlight
In chroma key compositing, filmmakers typically use a green backdrop (green screen). The color green is chosen because it differs significantly from skin tones, making it easier to isolate subjects. However, if your subject is, say, a black-and-white cat or dog, a red or yellow backdrop could work just as well.
Chroma key compositing essentially works by turning a specific color in a video transparent. When no background is inserted, the transparent areas appear black; when a new background is layered behind, it becomes visible in the cleared areas.
This enables scenes where characters filmed in front of a green screen appear seamlessly embedded in various environments.
Issues with Chroma Key
Despite its principles, achieving clean compositing can be challenging. The key problem often lies in capturing the green screen at a uniform shade.
Though a green screen is inherently a single color, uneven lighting can cause areas of the screen to appear as gradients of light and dark greens on camera. Indoor green screen shoots reveal this clearly, with areas closer to lights appearing brighter and distant areas darker.
Chroma key relies on transparency based on “perceived uniformity” rather than the screen’s actual color. If parts of the green screen vary too much in shade, only a specific green can be keyed out, leaving behind “artifacts” like shadows or residual hues that spoil the final composition.
Sunlight as the Perfect Solution
Achieving uniform lighting is easier outdoors with sunlight as your source. Since the sun is so distant, it provides consistent illumination across the green screen, eliminating the shading variances common with indoor setups.
For my short film involving a mammoth miniature, I conducted green screen tests under natural sunlight. The results were remarkably better than indoor attempts—compositing became far easier thanks to the even color captured by the camera.
The Challenge of Wind
Outdoor setups introduce their own problems, such as wind. A breeze can cause the green screen to move, creating shadows and gradients that ruin the compositing process.
During my shoot, I used an indoor stand outdoors, but the wind overturned it, damaging the metal frame. This experience underlined the need for sturdier outdoor-specific equipment.
Experimental Solutions for DIY Projects
For DIY filmmakers, sunlight provides an unmatched lighting advantage for green screens. However, it’s crucial to stabilize the backdrop to prevent movement. Commercial productions often use staff to hold the green screen in place, but that’s not feasible for resource-light DIY shoots.
A practical alternative could involve utilizing existing structures, like drainage pipes in concrete walls. By fitting wooden pegs into these pipes and stretching ropes between them, you could hang and stabilize a green screen without bulky stands or additional staff.
While limited in location and weather-dependent, this method could be a versatile option for lightweight, flexible filmmaking.