模型の趣味と融合する映画作り

遊びとしての映画作り

私が提唱する映画作りは、趣味として楽しめる範囲の、小規模な映画作りです。

イメージしやすいように、「DIY映画」と呼んでいます。

 

言うまでもありませんが、「映画」と言っても様々な種類のものがあります。

人によっては「それは映像作品であって、映画ではない」と小難しいことを言うかもしれませんが、私は最も広い定義で、映像作品全般を「映画」と呼ぶことにします。

 

非常に簡単に言えば、

  • 話を考えて
  • 内容が伝わる映像を撮影し
  • 見ていられる状態に編集すれば

映画の完成です。

 

そして、スマホやタブレット、パソコンを使えるのが当たり前の今、環境的には、誰にでも映画が作れると言えます。

 

遊びとしては、ちょっと面倒ではあります。

「頭と手を使ったゲーム」という感じです。

  • 頭を使うことが嫌い
  • 手間が掛かることが嫌い

という人には、全く向かないのが、映画作りという遊びです。

 

ただ、面倒な分、作っている最中も、完成した後も、大きな満足感・充実感が味わえる遊びであることは確かです。

模型と映画を融合させる

元々、映画というのは、「撮影技術」と「何か」を組み合わせることで、見世物としての楽しさを生み出してきました。

  • 芝居と撮影技術
  • 音楽と撮影技術
  • 物語と撮影技術
  • 身体能力と撮影技術

という具合です。

 

私は、DIY映画において、もっとも手軽で可能性が大きな組み合わせとして、

  • 模型と撮影技術

を挙げます。

 

ミニチュア模型と人物を合成する技術をベースにして、映画製作を考えると、

  • 理想的な撮影場所が無い
  • 理想的な場所で撮影するとお金がかかる
  • 理想的な大道具を用意するとお金がかかる

という、映画製作上の大きな制約から開放される可能性が生まれます。

 

私は80年代から映画作りの遊びを始めていて、当初から積極的にミニチュア模型を活用していました。

でも、それはミニチュア模型の映像を編集に組み合わせるだけで、「ミニチュアと人物の合成」は諦めていました。

どうしても、ミニチュアセットに人物を写り込ませたい場合は、人物もミニチュアで制作していたのです。

そして、「クロマキー合成」という、本来は非常に特殊な設備が無いと実現できなかった手法が、パソコン編集の登場によって、実現できるようになりました。

 

この手法を使えば、ミニチュアセットの中に人物を合成することで、自分がイメージした通りの「場面」が作れるのが、最大の魅力です。

 

私は2005年頃、当時使用していたパソコンで、全編ブルーバック撮影した映像を使ったショートムービーの実験作を作ってみました。

 

題材は、平安時代の鵺(ぬえ)退治。

日本家屋のミニチュアは主に紙工作。

登場する僧侶の衣装は、和紙で作るなど、まさにDIY映画です。

 

当時は、ビデオカメラはアナログ方式です。

映像や音声のデータをデジタルデータにコンバートして、パソコンで編集が出来る状態にしていました。

 

但し、元々、アナログのビデオテープに撮影された映像の解像度がそれほど高くはありません。

その上、当時のパソコンスペックに合わせるためには、さらに画質を低く抑えて、データを軽くする必要がありました。

パソコンで編集した作品のほうが、遥かに画質が悪い完成品になった時代です。

 

それに加え、ブルーバックを使った撮影の知識がありません。

手探り状態で完成させて映像は、あくまでも「実験映像」という出来栄えでした。

 

ちなみにその実験作は、合成のアラをごまかすため、あえてモノクロに仕上げ、フィルムの傷などを合成して、古いサイレント映画風に仕上げました。

 

私は、この実験作を作ったことで、逆に「パソコンのクロマキー合成は使えない」と判断してしまい、その後、長らく「クロマキー合成」という手法を選択肢として考えていませんでした。

 

ここから10年経ち、2015年ごろ、パソコンのクロマキー合成技術が、自分の想像より進んでいることを知って、早速、実験作品を作りました。

それが「暗黒魔獣ワニガメイーター」(2016)です。

この作品でも、「ミニチュアセットと人物の組み合わせ」で場面を作り、楽しんでいます。

クロマキー合成の最大の魅力は、スケール(縮尺)が違う「模型」と人物が合成できることだと思います。

言い換えれば、「人がミニチュアの世界に入れる楽しさ」です。

 

ドールハウスで遊んだり、盆栽や枯山水の庭を楽しむのも、「ミニチュアの世界に入る空想」の楽しさが根底にあるのではないでしょうか。

 

さらに言えば、コロナ騒動で日々の活動が著しく制限される中で、プラモデルのブームが復活しつつあるといいます。

プラモデルを映画の中で実物として登場させることが、DIY映画には出来ます。

 

実物大のガンダムを作ることは、個人には出来ませんが、ガンダムの模型を映像の中に「実物大」として登場させ、その足元に自分も登場させることが、DIY映画では、比較的簡単に出来るんです。

 

そんな映像が作れる事が前提です。

趣味としてのDIY映画には制約が少なくて、いかに内容的な自由度が大きいか想像ができると思います。

 

商業映画ではありません。

「ミニチュアであることが分かってしまったら、作品が台無しになる」という事はないんです。

 

むしろ、映画としての面白さと同時に、「良く出来てるなあ」という、ミニチュア模型を鑑賞する楽しさが加わるのが、模型を融合させたDIY映画の魅力です。

これは、作り手にとっても、観客にとっても魅力的な筈です。

 

  • この場面を成り立たせるために模型を使う

という従来の動機に加え、

  • この模型の魅力を生かしたストーリーを考えて、映画を作りたい

という柔軟な発想も必要になってくるでしょう。

 

そうすると、ますます性質の異なる「映画」が生まれ、それを楽しめるようになるのではないでしょうか。

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