その撮影を一人で出来ますか?・映像合成を応用して撮影コストを下げる工夫
共同作業としての映画作りは楽しいけれど
趣味の映画作り、DIY映画製作にどういうイメージを持たれているでしょうか?
映画製作といえば、大人数のスタッフとの共同作業も魅力の一つです。
しかし、現実問題として、社会人が共同作業をするメンバーを集めて、それを束ねながら映画製作をするのは実は一番ハードルが高いことです。
自分のことは自分で管理できます。
自分以外のメンバーが多くなればなるほど、行動は管理できなくなります。
どんなにプロデューサーであるあなた自身がやる気になっていても、共同作業が前提となっていると、他人の都合がつかないことで、映画製作は遅々として進まなくなることは、よくあります。
確かに、一人では大きな事は出来ません。
でも、「小さい規模の作品」を、一人で作り上げられない段階の人が高望みをして、スタッフの数だけ揃えても「大きな規模の作品」を完成させられるわけはありません。
まずは、「一人でほぼ完結できる作品」から始めることを、強くオススメします。
特撮を使って人手を節約する
私が普段提唱している、「升田式スーパープリヴィズ方式」は、映像合成を使って、全ての出演者も背景映像に合成して仕上げます。
出演者を撮影する前の段階で撮影・合成していた「人形の映像」を、最後の最後に「人間の映像」に差し替える手法です。
この手法で映画を作ると、製作期間が数分の一に短縮できるので、現在、私は「DIY映画倶楽部」という同好会の中で、この手法を使って、作品の量産化を図っている最中です。
この手法の特徴は、ほとんど一人で制作を進められることです。
実際、製作中の1本、「虹色の霧」というショートムービーも、ほぼ一人で形にしています。
あとは、正味1日ほどで、2人の登場人物をグリーンバック撮影すれば、翌日には作品が完成します。
このように、映像合成という特撮は、「一人で作品を作る」という事に利用すると強力な武器になります。
一人で撮影するための特撮的工夫
私はミニチュアセットに人物を合成したり、逆にミニチュア模型を人物映像に合成したりする特撮を、好んで使います。
理由は、通常のやり方では低予算で実現できないような「絵面(えづら)」が、特撮映像であれば出来るからです。
例えば、会議室の場面。
シナリオや絵コンテを作成した時にイメージした会議室での撮影は、まず出来ません。
安っぽいレンタル会議室だったり、狭かったり。
でも、会議室のミニチュアを使って、人物を合成する手法であれば、イメージ通りの映像が作れます。
しかも、作品によって床のカーペットの色を変えたり、机の形を変えたりしながら、使い回しも出来ます。
ミニチュア撮影は、もちろん一人で出来ます。
洞窟の中でモンスターを退治する映画を作ったときも、モンスターの撮影は一人で行いました。
但し、一人で模型を動かす場合は制限があります。
自分の手が2本しか無いので、模型の2箇所までしか動かせないんです。
そのため、モンスターは二足歩行のデザインにしました。
リアルな四足歩行は、2本の手では表現できないからです。
もし、一人で2箇所以上の部分を動かす場合は、ストップモーションの手法を使う必要があります。
これは、かなり作業に習熟する必要があるので、私は大抵、動物的な動きを簡単に、リアルに表現できる
・マペット方式
・マリオネット方式
を使っています。
前述の「虹色の霧」には、マンモスとワニが登場します。
マンモスとワニは別の作品で使ったものの流用です。
ストップモーション用の模型ではありません。
四足歩行する「マンモス」の歩行シーンは二人がかりの「マリオネット方式」で撮影しました。
ワニは、登場時間が短い事もあって、できるだけ手間を掛けずに撮影したかったので、一人で撮影できる方法を考えました。
私はワニの胴体を固定し、ビデオカメラを撮りっぱなしにした状態で
・口の開閉
・前足の動き
・後足の動き
を一つずつ順番に撮影しました。
順番に撮影したので、前足が動いているときは後足は静止していて、後足が動いているときは、前足が静止しています。
その映像を使って、編集時に
・頭部
・上半身
・下半身
をバラバラに分割して、合成しました。
合成することで、
・口の開閉
・前足の動き
・後足の動き
を同時にしているように見せられるのです。
解説の映像でご確認ください。
この合成手順自体はシンプルなものです。
シンプルですが、通常は一人で撮影できない映像が手に入りました。
この、「被写体を分割して考える」という発想は、一人で作業を進める上でとても効果的です。
初めにも書いた通り、共同作業は自分以外の都合に左右されます。
ですから、「一人で完成間近まで作業を進められる」というパワーを持っている人の方が、短期間で多くの作業を経験できるので、その分、上達が早まります。
一人で作業を進めることに慣れると、結構、一人でも多くの作業が最後まで出来ることが分かります。
そして、共同作業でしか進められない、例えば出演者の登場シーンの撮影などのときは、その作業に集中できます。
映画製作に慣れていない協力者も、その日にやるべきことが絞られるので、無駄なく楽しめるようになるはずです。
DIY映画の制作には色々な側面があります。
もちろん、基本は、「プロデューサーが作りたい作品を形にする」という目的が中心です。
しかし、あくまで協力者は、趣味やイベントとして参加しているわけですから、「作業自体を楽しめる」という事が、実は重要です。
感覚としては、「ホスト」であるプロデューサーや監督(大抵は同一人物)が、スタッフや出演者を「ゲスト」として招いて、バーベキューのイベントくらいの感覚で、撮影自体を楽しんでもらえたら、理想的だと思います。
そのためにも、ホストは、自分ひとりで出来ることは、なるべく事前に片付けておくことが重要だと思います。
今回の提案は、必ずしも多くの人に当てはまるわけではないと思いますが、参考になれば幸いです。
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