作品の「お蔵入り」を防ぐための特撮活用術・一人の出演者の都合で公開できなくならないために
お蔵入りの原因はいろいろある
創作活動の一つ、DIY映画作り(自主映画づくり)では言うまでもなく、とても大きな満足感・達成感を味わえます。
その分、労力も大きいという現実もあります。
せっかく大きな労力をかけるからには、何が何でも作品を完成させて、鑑賞できる状態にする根気と執念だけは不可欠です。
映画作りの趣味に必要な才能があるとしたら、間違いなく「根気と執念」でしょう。
しかし、残念ながら、実際には「お蔵入り」と言われる状態が多く発生します。
少し具体的に言うと、
- 未完成に終わり、公開できない場合
- 完成したものの、公開できない場合
の2通りがあります。
未完成による、お蔵入りの原因で最も多いのは、様々な準備不足による「撮影の長期化」です。
私は、これまでの自分の失敗からも、撮影を短期間で終わらせる必要性を実感しています。
「仕事じゃなく趣味なんだから、のんびり進めても良いじゃないか」という意見もあるでしょう。
確かに、じっくり楽しみながら、時間を掛けてコツコツ撮影するのは、一見、魅力に思えます。
でも、一つの作品に時間を掛けるのは、むしろ強靭な根気がなければ不可能なんです。
強力なエンジンとなって、企画を推し進めるべき製作者本人でさえ、一定以上の時間が経つと、飽きてしまうんです。
これは、創作意欲が高い場合も同じです。
次々と新作のアイデアや試したい手法などが湧いてきて、製作中の作品に集中できなくなってくるはずです。
スケジュールの都合などで、進行中の作品の撮影がストップした時に、「待つ時間がもったいない」ということで、次回作の撮影を並行してスタートさせたりすると、もう泥沼です。
全てが「やりかけ状態」になり、最終的にはお蔵入り作品のリストが倍に増えることになります。
これは、私の実体験であり、常に反省している点でもあります。
そういう、「完成しない事によるお蔵入り」は論外として、もう一つ、非常に残念なタイプのお蔵入りがあります。
それが、「完成しているのに公開できない」という状況です。
この原因は、主に、出演者に関する諸事情の変化です。
仕事として報酬を払って出演してもらう場合と違って、正式な契約をするわけでもなく、出演してもらう事が多いのが、趣味の映画作りです。
そもそも趣味ですから、普段、一緒に遊んでいる仲のいい友人同士で作っているうちは、ほとんど問題がありません。
ところが、ある程度経験を積んだり、人脈が広がってくると、役者の人に出演を依頼することも出てきます。
フリーで活動している無名の役者の人は、練習や現場感を養う意味で、無償で出演してくれることがよくあるんです。
これは、とてもありがたいことで、実際、他の技術が同じでも、演技に慣れた役者が画面に登場してくれるだけで、作品のレベルが格段に上がったように見えるものです。
しかし、ここに意外と落とし穴があります。
フリーで活動している役者は、文字通りフリーですから、自分の判断で作品に参加できます。
ところが、撮影が長引いたり、撮影後の編集作業に時間がかかったりしている間に、その役者が芸能事務所に所属してしまうことがよくあります。
基本的に、芸能事務所に所属するタレントの活動や映像使用は、勝手にはできませんから、「撮影中はフリーだったんです」という理屈が通りません。
事務所に所属する前に、作品が完成していれば、「過去作品」として製作者が公開出来るとは思いますが、それでも正式な契約をしているわけではないので、トラブルにならないとも限りません。
そうすると、せっかく完成したのに公開できずに、お蔵入りとなるケースが発生するわけです。
また、役者本人の気が変わって、「その作品への参加を公にはしたくない」という場合もあります。
資金回収のために作品を販売する、となった時点で「それは困る」という話になることもあります。
リスクマネージメントとしての映像合成
私が近年、重点的に推し進めている「グリーンバック映画」には、この問題も解決できる特徴があります。
グリーンバック映画では、全ての登場人物を別々にグリーンバック撮影して、背景と合成します。
もちろん、王道の映画製作からすると、明らかな邪道で、批判する人が多いことも理解はできます。
ただ、創作物は完成しなければ始まりませんし、完成したら公開しなければ、価値は半減します。
高尚な「作家性」や「芸術性」を議論する以前の課題です。
万が一、完成後に出演者の事情が変わって、公開できなくなった場合、その出演者の部分だけ代役で撮影をし直して別バージョンを作れば、公開に支障はありません。
繰り返しますが、これが芸術作品として邪道であることは重々承知しています。
1つの要素のために全体を無駄にしてよいのか?
役者は作品の中で素晴らしい要素ではありますが、逆に言うと、あくまで「要素の一つ」です。
1つの要素のために、それまでの労力の全てを無駄にして、お蔵入りさせるのがベストな選択だと思うのであれば、そうすれば良いのですが、私はそうは思いません。
実際のところ、映画製作は、絵画や陶芸といった創作より、工業製品的な性質を多く含んでいます。
ですから、工業製品的には一般的な「別バージョン」を作ることは、選択の一つとして大いにあり得ると思いますし、むしろ「別バージョン作り」は新たな楽しみにさえなると考えています。
いずれにしても、創作活動も他の活動と同様、理想と現実の間で、いかに良い「次善策」を探すかがポイントです。
作品を生き残らせる方法として、場合によっては別バージョンを製作することが有効であるという提案をしてみました。
参考になれば幸いです。
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