学生映画で浜辺のシーンが多くなる理由・厳密には自宅以外のシーンは無許可では撮影できない?

撮影した建物の映像を使っていい?

よく言われるように、映画のような映像作品は本当に手軽に作れるようになりました。

今の時代からは想像もつかないかもしれませんが、一般の人が「動画」のような映像を記録できるようになったのは、最近のことなんです。

それまでは、せいぜいフィルムのカメラで写真を撮るくらい。

自分たちが動いている姿を撮影できる環境を持っているのは、ほんの一部の人でした。

 

家庭用のビデオカメラが普及して低価格になり、スマホの爆発的な普及によって、動画の撮影に対するハードルは一気に下がりました。

物理的な環境が整った、という意味では、本当に映像作品作りは手軽で身近になりました。

 

ところが、厳密に言うと、撮影というものは気軽には出来ないんです。

主な制約としては

  • 勝手に人を写してはいけない
  • 勝手にそこで撮影してはいけない

というものです。

 

それぞれにいろいろな法律があります。

法律というのは、どれも、解釈によって意味合いが変わってきます。

その撮影を「OK」ととらえるのも「NG」ととらえるのも解釈次第で、厳密には裁判を起こして判決が出るまで分からない、という厄介なケースがほとんどです。

 

人物の撮影については肖像権がありますし、タレントなどはその姿自身が商品なので、勝手な撮影は所属事務所が許さなかったりします。

建築物にも権利があって、撮影してはいけない場合も多くあります。

(どちらも、「背景」としてならOKという、グレーな判断が一般的です)

 

用途による制約もありますが、これもやはり曖昧です。

例えば、「撮影可」となっている場所でも、規約を見ると、「商用利用は不可」となっていることがほとんどです。

「商用利用」をどう解釈するかで、「結局、そこで撮影した映像は使っていいの?ダメなの?」という答えが変わってきます。

撮影した写真を個人的なブログに載せたり、動画をYouTubeにアップロードするのはOKにも思えます。

しかし、そのブログやYouTubeで投稿主が広告収入を得ていたらどうでしょう?

個人として広告収入を得ていないとしても、ブログやYouTubeは、そもそも広告収入で成り立っているサービスです。だから、利用者は無料で使えるんです。

つまり、ブログに載せたり、動画をYouTubeにアップロードすることも、間接的には商用利用していることになり得ます。

 

結果として、トラブルを避けて安全に撮影しようとすれば、

  • 個人の所有する室内
  • 余計な建物や人が写り込まない浜辺のような場所

というシーンだらけの作品になってしまいがちなんです。

(厳密には公共の場所も、無許可では一切撮影できない、という解釈も成り立ちます)

 

詳しくは、以下の書籍が参考になると思いますので、興味があればお読みください。

 

「撮ってはいけない」

知らないと犯罪者になる!?だれもが知っておきたい、スマホ時代のルールとマナー。

解決案の一つは特撮

自宅など個人の部屋や、浜辺なども、もちろん有効に活用すべきですが、そういう「無難な撮影場所」ばかりで作品を構成しようとすると、どうしても、場面のバリエーションが少なくなって、画面が貧しくなります。

大掛かりな撮影用のセットを作れない、低予算映画の宿命です。

 

私は、邪道な手法とは重々承知の上で、「特撮」による解決を模索します。

大掛かりな撮影用のセットを作れないのであれば、撮影用のセットのミニチュアを作って、出演者をその中に合成してしまおう、という逆転の発想です。

「演技に魂がこもらない」というような精神的な課題は別にして、物理的なデメリット・課題は、「人物をいかに自然に合成できるか」です。

これは、ひとえに、グリーンバック撮影の精度と合成技術に掛かっていると言えます。

場数をこなし、失敗を繰り返す中で技術向上を目指すしかありません。

 

そのデメリットを上回るメリットはあると考えます。

まずは、「模型」自体が持つ魅力です。

 

コロナ自粛期間中に、プラモデルを作り始めた人が多いと聞きます。

プラモデルのようなミニチュア模型は、言ってしまえば、小さくて精巧にできているだけです。

にも関わらず、それだけでじっくりと見入ってしまうほどの魅力があるんです。

 

中でも、「ジオラマ」という情景模型の人気は高いものがあります。

生活感そのものも凝縮した室内のミニチュアセットなどは、実は昔から人気があります。

シルバニアファミリーや、ドールハウスの根強い人気がそれを証明しています。

 

この魅力あるミニチュア室内セットを、映画の撮影セットとして活用することで、低予算でもイメージ通りの「場面」を作れる可能性があります。

例えば、私が今企画しているのは、昭和風の映画です。

一場面として、「小さな出版社の片隅にある古い応接セット」がありますが、この撮影場所を探すのは一苦労でしょう。

でも、1/10くらいの大きさのミニチュアセットを作れば、部屋の様子も、応接セットの色も、天井の高さも、イメージ優先で用意できます。

一度作ったミニチュアセットは、ストックしておけば、他の作品を作る際のコスト削減になります。

 

もちろん、作品を見せる上で、ことさらミニチュアセットを使っていることをアピールする必要はありません。

むしろ、全力で、

  • ミニチュアセットであること
  • 合成映像であること

は隠そうとするべきです。

 

その上で、鑑賞後に、「実はあの場面はミニチュアの合成だ」という情報を与えることで、プラスアルファの興味がわく作品になり得ると思っています。

 

もちろんこれは、一般的な映画の作り方にはなり得ません。

相変わらず、日本の映画は「昭和時代の撮り方」が王道とされます。

ただ、その王道を通そうとすれば、低予算映画では、画面が貧しくなる事が避けられません。

 

逆に、一般映画では決して許されないような、「ミニチュアセットとの合成」を活用することで、低予算映画ならではの、独特な魅力を出す可能性を秘めた、新しいスタイルの映画を量産したい、そう考えているのです。

 

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「模型の趣味と融合する映画作り」

(ブログ記事一覧)

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Why Student Films Tend to Feature Beach Scenes: Is It True That Filming in Non-Private Spaces Requires Permission?

Can You Use Footage of Buildings You’ve Filmed?

As people often say, creating cinematic works has become remarkably accessible. It’s hard to imagine now, but the ability for everyday individuals to record “video” content has only become widespread in recent years. Before that, photography with film cameras was the norm, and capturing moving images of oneself was reserved for a select few.

The rise of affordable household video cameras and the explosive adoption of smartphones drastically lowered the barriers to video creation. From a physical standpoint, filmmaking has indeed become far more approachable.

However, strictly speaking, filming is not entirely hassle-free. The major restrictions are:

  • You cannot film people without permission.
  • You cannot film in certain places without authorization.

These laws are complex, subject to interpretation, and often unclear until a ruling is made in court. For individuals, unauthorized filming of people infringes on portrait rights. Similarly, buildings may have rights that restrict filming, although “background usage” is typically permissible in a gray-zone interpretation.

Even in locations marked as “filmable,” it’s common to find rules stating that commercial use is prohibited. Ambiguity arises when defining “commercial use” and deciding whether footage can be legally published. Posting captured footage on a personal blog or uploading it to YouTube may seem fine, but what if the platform generates ad revenue?

Such gray areas often steer filmmakers toward safe options like filming in private interiors or sparsely populated beaches, reducing the risk of capturing unwanted elements. As a result, student films often feature scenes in predictable locations, leading to limited visual diversity.

If you’re interested in learning more, I recommend the book “Do Not Film: Rules and Manners Everyone Should Know in the Smartphone Era.”

Solving Challenges with Special Effects

While private rooms or isolated beaches are effective, relying solely on these “safe filming locations” limits creative possibilities, especially for low-budget films that lack large-scale sets.

My unconventional solution involves using special effects. Instead of constructing elaborate filming sets, I create miniature diorama models, merging actors into these scaled-down scenes. The success of this method depends on precise green-screen filming and compositing techniques honed through trial and error.

Miniatures themselves offer inherent charm. Their intricate details captivate viewers much like popular diorama models, dollhouses, or Sylvanian Families sets. Utilizing miniature sets can create ideal visuals for low-budget projects while preserving costs for future productions. For example, a miniature “retro publishing office” for a Showa-style film can be crafted to match the creator’s vision—a challenge with real locations.

It’s crucial to downplay that the footage employs miniatures or composited scenes. Revealing such secrets after viewing can add intrigue to the film. By embracing techniques rarely permissible in mainstream filmmaking, low-budget films can establish unique styles.

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