バージョンアップ前提の映画作り・スピード感と作者の満足度を満たす邪道的手法
作者が完全な満足を得られない理由
自分の頭で発想し、構想を練り、創作物を生み出す。
創作の趣味全般に言えますが、これは他では味わえないほどの、圧倒的な満足感を得られます。
「絵手紙」や「小説執筆」などの趣味が人気なのは、この圧倒的な満足感を知ってしまったり、求めたりする結果でしょう。
創作はどれも、奥が深いものです。
一つの作品を完成させるまでに、何段階もの工程があって、それぞれの段階で満足感を味わい、そして、完成時には完成の満足感を味わいます。
それでは終わらずに、創作物は、客観的に鑑賞したときの満足感や、他人からの感想を貰った時に味わう満足感も続きます。
しかし、実は、作者は100%の満足感は味わえません。
その理由は、完成度を判断する「自分の目」が、日々、肥えていってしまうからです。
初日に撮影した映像が、その時は100%の出来だと思っても、時間が経つと、アラが見えてきたり、自分の技術が上がることで、より良い映像を撮影する方法を知ってしまったりするからです。
極端な例を上げると、機材の進歩によって、映像フォーマットが変わることもあります。
時間が経てば経つほど、高画質の映像が手に入るようになるので、過去の映像は、相対的に、画質が悪く見えることになります。
「新しい機材で撮影し直せば、もっとキレイな映像になるなあ」と思い始めるときりがないんです。
ここで、やってはいけない失敗行動は、「どうせ作るなら、時間を掛けてでも良いものを作ろう」とすることです。
多くの場合、創作物は「時間を掛ける」と「良いものになる」訳ではありません。
むしろ、時間を掛けることがマイナスに働くことが、圧倒的に多いのではないでしょうか?
解決策1:短期間で完成させる
「100%の完全な満足感は得られない」というのは、悪い話ではありません。
常に向上心を持って、理想の完成形を想像できるがゆえの状態なので、むしろ望ましい事です。
その上で、創作のモチベーション維持には、「出来るだけ高い満足感を得られるようにする」ということが不可欠です。
実は、創作は、完成を夢想しながらの「作業自体」が楽しいので、仮に、未完成に終わっても、ある程度の満足感は味わえてしまいます。
ただ、どんな形にせよ、完成させた満足感は、桁外れに大きいものなのです。
まだ、創作物を完成させたことがない人は、「完成」を最優先目標にすべきでしょう。
完成させる一番のコツは、とにかくスピードアップです。
乱暴な言い方ですが、製作中の作品のアラに、自分が気付く前に完成させるくらいの気持ちが大切です。
映画には、骨となる設計図としての「シナリオ」があります。
もちろん、全力でシナリオの完成度を高めてから撮影に入るべきです。
しかし、完成度を高めると言っても、これもキリはありません。
また、いくら時間を掛けても、執筆者の実力以上のシナリオは用意できません。
撮影中に、シナリオの問題点(設定が破綻しているところなど)に気付くことも、実は良くあります。
これなども、スタート当初は気付かなかったわけですから、自分が成長している証拠とも言えるわけです。
こうなった場合、軽微な修正や追加で、シナリオの問題点が目立たなくなる案が思いつけば、そういう対処をしますが、対処できない場合もあります。
改善策が出ない場合は、「気付かなかったことにして撮影を進める」のが最善の策です。
撮影をストップして、シナリオを根本的に直そうとすると、ほぼ、その作品は未完成に終わります。
(私はこの失敗を何度もしています)
完成させることで得られる、さまざまなノウハウや満足感を得られないままになるので、次回作でレベルアップすることもありません。
解決策2:作品のバージョンアップを想定する
これは、私が最近、推奨する考え方です。
人によっては「邪道」に感じて受け入れられないかもしれません。
例えば小説。
新聞や雑誌に連載された小説が、後に単行本になるのは、一つの一般的な形です。
しかし、大抵の場合、単行本化する際に、かなり加筆修正するそうです。
連載時も各回は完成品ですが、本にするためにバージョンアップする訳です。
多くの工業製品も、バージョンアップしています。
同一製品が工場から大量に出荷されますが、例えば、初号機から1000号機までの製品と、1001号機以降の製品では、使われている部品が後発の安価なものに変更されていたり、より信頼性のある構造に改造されていたりします。
私は、映画でも、意外と「バージョンアップを前提とした製作」にメリットがあるのではないかと思っています。
もっとも、これは、私が推進している、「全編グリーンバック合成の映画」でこそ効果を発揮するものなので、従来通りのオーソドックスな撮影にこだわる限りは、効果は限定的になります。
例えば、SF作品で宇宙船が登場するとします。
あなたの理想は、オリジナルデザインで、細部まで作り込んだミニチュアやCGデータを使用することです。
でも、それを準備するためには、時間や資金が必要で、製作開始は何年も先になるかもしれません。
その場合、宇宙船は市販の模型を改造する程度で短期間で用意し、作品を完成させてしまってはどうでしょう。
後に、理想通りの宇宙船が準備できたら、映像の差し替えなどを行って、バージョンアップするという計画です。
あるいは、メインの登場人物を、初めのバージョンでは、監督自身や身近な人が出演することで形にしてしまうことも出来ます。(これはグリーンバック合成映画に限った話です)
後に、よりふさわしいモデルが見つかったら、その役だけ撮影し直して差し替えることで、バージョンアップします。
仮バージョンの作品も、廃棄するわけではありませんから、むしろ「仮バージョンの存在」自体が別の価値を持ちます。
有名な「バック・トゥー・ザ・フューチャー」という映画は、撮影途中で主役が変更になっているので、「主演がマイケル・J・フォックスでないバージョン」のシーンが多数存在していて、興味深く見ることができます。
「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のように、シーンを撮り直すのではなく、人物単位で撮影し直して差し替えるのは、もちろん邪道です。
- そんなのは映画じゃないよ
- 芸術の風上にも置けない
- それは演技とは呼べない
という批判は覚悟の上です。
でも私は、「錯覚の積み重ねを利用して、物語として構築される」のが映画の大きな面白みだと思っています。
そういう意味では、グリーンバック合成映画、という邪道な手法も、極めて映画的だと考えています。
脱線しましたが、バージョンアップを前提とすると、「ベスト」の条件が満たされるまで待たなくていいので、未完成率を下げる効果があります。
「これは仮バージョンだ」と思うと、割り切って製作は進みます。
作品が頓挫する原因の多くは、色々な面での「実力以上の高望み」です。
そして、頓挫を繰り返しても、頭でっかちになるばかりで、いつまで経っても経験が積めないので、実力は付きません。
仮バージョンだとしても、完成させることで分かる事は膨大です。確実に実力はアップします。
前述のように、完成させることによる大きな満足も得られます。
そして意外と、「仮バージョン」を完成させると、その作品については、気が済んでしまうことも多いんです。
- SF映画を作ってみたい
- ホラーを1回作ってみたかった
というような欲求は、仮バージョンでも思いの外、満たせることに気付くでしょう。
それはそれで、スッキリと割り切って、バージョンアップではなく、全く違う次回作に取り組めるというメリットがあります。
しつこいようですが、「完成させること」はとても大事です。
レベルの高い未完成作品より、拙い完成作品の方が、はるかに価値があります。
今回は、完成させるための工夫の一つとして、「仮バージョン」という考え方を提案してみました。
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A Version-Up Approach to Filmmaking: Balancing Speed with Artistic Satisfaction
Why Creators Struggle to Feel Fully Satisfied
The process of conceiving ideas, planning them out, and creating something new is one of unparalleled joy. This holds true across creative hobbies, from painting postcards to writing novels, as the satisfaction of creation is profoundly rewarding.
Creativity unfolds in stages, with each step bringing its own sense of accomplishment. Upon completion, the work offers further joy when viewed objectively or when feedback is received from others. Yet, creators rarely experience 100% satisfaction. Why? Because our “critical eye” sharpens over time, revealing flaws or presenting better methods as we grow.
For example, technological advances in filmmaking constantly improve visual formats, making older footage seem outdated. This realization—”If only I could reshoot this with newer equipment!”—can be an endless rabbit hole.
One major pitfall is aiming for perfection by spending excessive time on a single project. Paradoxically, dedicating too much time often undermines creative quality rather than enhancing it.
Solution 1: Completing Projects Quickly
Accepting that perfection is unattainable isn’t a bad thing. It reflects an ongoing pursuit of excellence, which is fundamentally positive. However, to maintain motivation, achieving the highest possible level of satisfaction is essential.
While the creative process itself can be gratifying, the satisfaction of completing a project is extraordinary. Thus, prioritizing completion is crucial, especially for first-time creators.
The secret to completion lies in speed. You must finish your work before you become overly critical of it. For example, while scripts are critical to filmmaking, refining them endlessly doesn’t necessarily yield better results. Spotting flaws in your script mid-shoot is a sign of growth, not failure.
When minor fixes can address script issues, great! If not, the best course is often to “ignore them and press on.” Stopping production to overhaul your script frequently leads to unfinished projects—an outcome I’ve experienced myself.
Solution 2: Embracing “Version-Up” Filmmaking
This approach involves treating creative works as iterative rather than final. Just as serialized novels often undergo significant revisions before becoming books, or industrial products evolve over time, films can also benefit from a “version-up” mindset.
For instance, in a sci-fi film featuring spaceships, the ideal would be crafting original, detailed models or CG assets. But such preparation might delay production for years. Instead, using modified store-bought models for an initial “draft version” of the film allows you to proceed. Once ideal assets are ready, you can revisit and update the footage.
Similarly, with green-screen filmmaking, temporary cast members like the director or acquaintances could act as stand-ins. Later, when suitable actors are found, you can replace their scenes. These rough versions aren’t wasted; they add value, much like the unused footage of “Back to the Future,” where early scenes were filmed with a different lead actor.
While replacing characters individually via green-screen compositing may be unorthodox, I believe it aligns with the core cinematic principle of weaving narratives through a “sum of illusions.”
Benefits of the Version-Up Approach
This strategy reduces unfinished projects by eliminating the wait for “perfect conditions.” Declaring something a “draft version” enables steady progress. While aiming too high often leads to abandoned projects and stagnation, completing even rough drafts provides invaluable insights and satisfaction.
Unexpectedly, creating draft versions often resolves creative urges, like wanting to make “just one sci-fi or horror film.” Once satisfied, you might naturally shift focus to entirely new projects, skipping the version-up step altogether.
In conclusion, finishing projects is critical. Even a flawed completed work outweighs an impressive unfinished one. I propose considering “draft versions” as a strategy to overcome the hurdles of completion.