合成でかっこいいボケ味を出したい時に注意すべきポイントはこの2つ
ボケ味がある映像はかっこいい
すごく乱暴な言い方をすると、映像にはボケ味(ぼけみ)を活かしたものと、ボケ味のない映像があります。
「ボケ味」というのは、文字通り、ピントがボケた状態です。
画面全体がボケていて、肝心なところもボケている場合は、単に失敗の「ピンぼけ」ということになりますが、通常は、ある部分を引き立たせるために、あえて「それ以外の部分」のピントをぼかしたりします。
そうすることによって、画面の中でメリハリが出来て、「良い画」になるというわけです。
多くのテレビドラマや映画などは、この「ボケ味」を利用して、映像を作っています。
ボケることによって、「見せたい部分以外」の情報量が減り、「見やすい画面」にもなります。
また、ピントをぼかすことで、距離感の違いを表現できるので、「立体感」も強調されます。
コミックなどの絵画では表現しづらい「ボケ味」は、映像ならではの表現と言えます。
ところが、このボケ味。
一般的なビデオカメラでは、実は上手く出せないことが多いんです。
これは、最近のビデオカメラが暗いところでも鮮明に撮れるようになっていることとも関連しています。
「レンズの絞り」とボケ味の関係については、ここでは解説しませんが、基本的に、ハンディカムのようなビデオカメラは、ボケ味のある映像を作るのが苦手なんだと思ってください。
用途によっては、ボケ味のない映像、つまり、画面の隅々までピントが合っている映像の方が望ましいわけで、ハンディカムなどは、そちらの映像に適しているわけです。
例えば、カメラの前に無造作に人が集まって撮った映像。
ボケ味のある映像にすると、撮影時に「主役」と決めた人にはピントが合っていますが、それ以外の人の顔はピンぼけになり、主役を引き立たせる「脇役」や「背景」になるわけです。
それに対して、ボケ味のない映像では、誰が主役というわけではなく、満遍なく公平に人物の顔を捉えることが出来ます。
神社の彫刻を撮影した場合はどうでしょう。
ボケ味のある映像は、彫刻の「ある部分」以外はピントがボケます。
映像としては味のあるものになりますが、彫刻の「資料映像」としては、できるだけボケ味の少ない、全体的にピントが合っている映像のほうが望ましかったりします。
ちなみに、ボケ味のある映像は、上手く撮れれば見栄えがしますが、失敗する確率はグンと高くなります。
狙ったところにピンポイントにピントが合っていないと、単なる「ピンぼけ映像」になってしまうからです。
ボケ味を求めて、ボケ味を出しやすい、一眼レフカメラで撮影したがる人がいますが、私があまりオススメしていないのは、比較的撮影が難しいからです。
一発勝負で撮り直しが出来ない「運動会」などの撮影では、失敗の確率が高い一眼レフより、ピンぼけの失敗映像になりにくいハンディカムの方が安全です。
特撮で擬似的にボケ味を作れ
私は主に「ハンディカムで手軽に映画作りをしましょう」ということを推奨しています。
前述のように、ハンディカムは「ボケ味」をあまり出せないカメラです。
そのまま撮影すると、メリハリが無かったり、立体感が無い、味気ない映像になりがちです。
しかし、「撮影」だけで映像を完成させようとせず、「編集」によって映像をデザインする発想を持つと、話は全然変わってきます。
特に多用して欲しいのは、「手前に要素を合成する」という手法です。
例えば人物が写っているとして、人物の向こうに何かを合成することは大変です。人物をグリーンバック撮影するなど、非常に手間が掛かります。
それに対して、人物より手前に物を合成するのは簡単なんです。
例として、公園のベンチに人が座っている状況を思い浮かべてください。
やや、引きの映像で、「花壇の花越しに、ベンチと人物が見える映像」ではどうでしょうか?
合成を使わない場合は、実際に花壇越しに人物が映るような位置から撮影する必要があります。
でも、そのためには、理想的な位置に花壇やベンチがあって、その向こうにカメラを持っていける条件が整っていなければなりません。
そして、大抵の場合は、イメージ通りの花が咲いていなかったりするんです。
私だったら、時間を掛けて「ああでもない、こうでもない」と現場で試行錯誤はしません。
手前に花壇の花が入り込んだ構図を想定したら、花壇の花は後で合成する前提で、人物の撮影を済ませてしまいます。
人物の撮影を優先して行なった後、その映像の角度などを考慮して、花壇写真を別撮りして、切り抜いて合成します。
合成時に、好きなボケ具合に調整できるだけでなく、例えば、人物を撮影した時期には咲いていない花を合成することで、作品内の季節もコントロール出来ます。
合成作業は順番が大事
カメラを固定して撮影した映像の手前に、写真から切り抜いた画像を合成する手法は、とても手軽です。
簡単にできる上、かなり自然な合成映像になります。
合成の目的は、前述のように、花の種類を変えることで、季節を表現したり、ただの空き地の映像に、遊具を合成することで「公園のシーン」に出来たりします。
極端な例では、公園で撮影しても、手前にたくさんの漁船を合成すれば、「漁港のシーン」も作れます。
コストを掛けずに、映像のバリエーションを増やせる効果的な技ですから、ぜひ、使えるようになっておくと良いでしょう。
以下に、簡単なポイントを挙げておきます。
ポイント1:合成を意識して、やや余裕のある構図で下地の映像を撮影する。
下地の映像とは、人物映像など、「合成される前の映像」のことです。
手前に別の写真を合成するということは、その分、画面が隠れますから、「ここまでは別の写真で隠れる」ということを意識して撮影しておく必要があります。
写真を合成したときにバランスが良い構図になるように、下地を撮影するということです。
ポイント2:合成用の写真はシャープに撮影しておく。
合成用写真は、何らかの方法で切り抜く必要があります。
一般的には、フォトショップのような画像加工ソフトを使って切り抜きます。
切り抜く作業の手間を省くため、対象をグリーンバック撮影※する方法も使えます。
グリーンバック撮影をすると、写真の切り抜きと違い、動くものを合成できます。
例えば花壇の花が風で揺れていたり、小動物を横切らせることも可能になります。
(※植物を合成する場合は、グリーンバックでなくブルーバックなどを使う必要があります)
グリーンバック撮影する場合、特に注意すべきなのは、撮影対象にピントを合わせておくことです。
合成後に手前の花のピントはぼかす計画だとします。
その際、予め花をピンぼけ状態で撮影しておけば、下地と合成するだけで「手前のボケた花」を表現できると思ってしまうかもしれません。
しかしこれは上手くいきません。
輪郭が曖昧な状態では、合成がキレイにいかないんです。
あくまでも、ピントをぼかすのは、合成した「後」と憶えておいてください。
この手軽な合成手法を活用すると、ハンディカムで撮影した作品でありながら、ボケ味のきれいな場面を作れたり、撮影場所や季節の制約からもかなり開放されます。
参考になれば幸いです。
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