ロケ撮影をせずに背景映像を作って合成して場面を作るのがメインになる新時代到来!
改めて「グリーンバック映画」の概要解説
このブログをいつもお読みいただいている方にとっては、既に飽きている内容かもしれませんが、初めての読者の方もいるかもしれないので、改めて、私が推奨している「グリーンバック映画」について、簡単に解説します。
グリーンバック映画のキモになる技術は「クロマキー合成」というものです。
簡単に言うと、単色の布や壁の前で人物を撮影して、別に用意した背景映像と「クロマキー合成」というのを行うと、用意した背景世界の前にその人物がいるように見える、というものです。
撮影の際、背景に使う単色がグリーンだと、色々と都合がいいので、グリーンの専用シートを使うことが多く、そのため「グリーンバック撮影」と呼ばれたりします。
最近では、テレビ会議システムのzoomを利用する人も多いので、背景映像を写真と入れ替えた状態も見慣れているかもしれません。
あれも、グリーンバックを使ってはいませんが、原理的には同じ要領で、背景だけ入れ替えた映像を作っています。
クロマキー合成は、映画の世界ではかなり昔から活用されています。
特に特撮映画では、スケール感の違う2つの映像や、実際の撮影が困難な映像を表現するショットなどでこのクロマキー合成がよく使われています。
・城の天守閣にいる人々と窓の外の大魔神(「大魔神」から)
・壁の穴から次々と現れる、大小さまざまな大きさの巨人(「実写版・進撃の巨人」から)
・どこか微妙に違和感のある世界(「シャッター・アイランド」から)
多くの場合、クロマキー合成は、一つの作品の中のピンポイントで使用されます。
それ以外の「通常の撮影をしたショット」と組み合わせるのが一般的でした。
私はピンポイントでなく、この手法を映画作品全編で使うことで、圧倒的に短期間で撮影を終えられる上、作り手がイメージした構図の映像に限りなく近付けられるメリットが得られると考えています。
その実験を兼ねて、数年前からいくつかのショートムービーを制作してきました。
簡単に言うと、この手法を使えば、最も長い期間を要する「人物撮影」を短時間でまとめて行えます。
特に屋外シーンについては、日中全部を費やしても、撮影できる分量は、せいぜい10数カットです。
カメラで撮影する以外の、移動や、外部条件による待ち時間が、長時間に及ぶのが通常の撮影だからです。
一方で、グリーンバック撮影なら、一度セッティングしてしまえば、撮影場所の移動がありませんから、通常撮影の数倍のペースで撮影が進みます。
これは、「撮影期間」で考えると、数倍どころではない差となって現れます。
具体的に想像してみましょう。
登場人物が一人のショートムービーがあるとします。
通常の撮影では、すべての人物撮影を終えるのに、4日間掛かるとします。
しかし、撮影は毎日出来るわけではありません。
特に、私たちのように、アマチュアの創作活動として映画制作を楽しんでいる場合は、撮影できるのは余暇の時間の一部です。
週に一度、撮影が出来れば、かなり熱心でハイペースの活動と言えます。
そのハイペースをもってしても、4日間の撮影には4週必要です。
雨も降らず、最短で行えたとして、22日間です。
同じ内容をグリーンバック撮影したらどうなるか。
違うシーンの撮影のために全員で移動したり、同じシーンの中でも、カメラが遠く離れたところから撮ったりするために、カメラマンが移動し、スタッフも映像に映り込まないように移動したり、という必要がありません。
半径2メートルくらいの立ち位置の中ですべての撮影を終えられます。
しかも、「太陽が雲に隠れて陽が陰ったから、しばらく待つ」という必要もありません。
1日で4倍の分量を一気に撮影することは、十分可能です。
つまり、1日で人物撮影は終了するんです。
撮影日数は1/4ですが、撮影期間としては、1/22です。
関わる人たちの、実質的な人件費(実際には支払わないとしても、その労力)に換算すると、圧倒的なコストダウンになるわけです。
もちろん、クロマキー合成は、人物と背景を合成するという、別の手間が掛かりはしますが、それに掛かるのは、節約した撮影期間よりはるかに短い日数だけです。
それに、編集の段階で、構図を調整したり、背景を変更したりできるので、限りなくイメージに近い映像を作ることが出来るんです。
撮影現場では時間との闘いになりますから、黒澤明監督でもない限り、大きな妥協を受け入れる必要があります。
撮影で妥協せざるを得ないとしても、編集でもう一度、理想の映像に引き上げる余地があることも、グリーンバック映画の大きな魅力です。
最近は、パソコンの性能が十分に上がったことによって、こんなグリーンバック映画が作れるようになりました。
AIを使って手軽に「異世界」を作る
そしてここにきてさらに、グリーンバック映画にとって強い味方が現れました。
Adobe PhotoShopの「風景ミキサー」という新機能です。(2021.10E現在)
これは、撮影した写真に対して、あらかじめ用意しておいた別の写真の要素を掛け合わせる処理を行うと、AIが判断して複雑な合成写真を一瞬で作り出す、という機能です。
例えば、「ビル」の写真と「苔むした森」の写真を掛け合わせると、廃墟となった建物のような写真になります。
自然に飲み込まれた建築物群、という景色は、「天空の城ラピュタ」の人気からもわかるように、風景としてはなかなか魅力的です。
さらに、昼に撮影した風景写真を「夕方の写真」にしたり、夏に撮影した風景を雪景色にしたり、ということも、かなりリアルに一瞬で加工できます。
もっとすごいのは、砂場で作った砂山を、リアルな雪山に変換したり、毛布で作った布の山を、リアルな山の景色に変えてしまうことです。
私は、崖のある風景などが好きで、背景に使うためにわざわざ撮影に行ったりするのですが、気に入った崖の写真を利用すれば、様々な構図の崖の写真を無尽蔵に作り出すことが出来ることになるんです。
多くの人にとっては、この「風景ミキサー」は、ちょっとした「おもしろ機能」に過ぎないと思います。
しかし、背景と人物を合成してグリーンバック映画を作る私にとっては、まさに、「最強のツール」と言えるものです。
特に「リアルな廃墟映像」が無数に作り出せるこのツールによって、これまではミニチュアセットや絵などをリアルに制作しないと実現できなかった、「異世界を舞台にした映画」などは、大幅に作りやすくなったと考えられます。
今後はDIY映画倶楽部でも、「風景ミキサー」の活用方法を共有しつつ、グリーンバック映画制作のペースを上げたいと思います。
参考になったら記事をシェアしていただけると幸いです。
「こんな場面を作りたいが、どうすればいいか」という質問があればお寄せください。
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Welcome to the Era of Crafting Backgrounds Without Filming on Location
Overview of Green Screen Filmmaking
For regular readers of this blog, this might feel like old news. However, for those discovering it for the first time, I’d like to reintroduce the concept of “Green Screen Filmmaking,” which I wholeheartedly recommend.
At its core, green screen filmmaking relies on a technology called chroma key compositing. In simple terms, a person is filmed in front of a solid-colored screen or wall (usually green for convenience), which is then replaced with a pre-made background image or video, creating the illusion that the subject exists in that imagined world.
With the popularity of tools like Zoom, many are familiar with virtual backgrounds, which operate on a similar principle, though they don’t necessarily involve green screens.
The Evolution of Chroma Key in Cinema
Chroma key technology has long been used in film, especially in special effects movies, where it serves to merge scaled visuals or create scenes too challenging to film otherwise. Iconic examples include:
- The towering Daimajin observed from a castle’s turret window (Daimajin).
- Giants emerging from a wall (Attack on Titan live-action adaptation).
- Slightly surreal environments (Shutter Island).
Traditionally, chroma key compositing is employed for select shots within a film. However, I advocate for using this approach throughout an entire film to dramatically shorten shooting schedules while achieving visuals closely aligned with the creator’s vision. Over the years, I’ve conducted experimental short films based on this principle.
Why Green Screen Can Revolutionize Shoots
In conventional outdoor shoots, a full day might yield only a handful of usable shots due to travel, setup, and external delays. In contrast, green screen shoots, once set up, require no location changes or weather-related pauses. A single day might produce four times the footage compared to traditional methods.
For example, consider a short film featuring one character. Typically, filming might require four days spread over a month of weekends. With green screen technology, that same footage could be captured in just a single day. When factoring in both shooting time and overall production duration, green screen offers staggering efficiency.
While chroma key does add post-production work, the time saved during filming far outweighs this. Moreover, editing allows for adjustments to framing and background, enabling the director’s vision to come to life without compromises made during rushed shoots.
Leveraging AI for World Building
Today’s computers have made green screen filmmaking more accessible. Tools like Adobe Photoshop’s “Landscape Mixer” (as of October 2021) introduce an exciting new element to this craft. This AI-powered feature combines elements from multiple photos to create stunning composite landscapes almost instantly.
For instance, blending images of a mossy forest with urban skyscrapers results in hauntingly beautiful scenes reminiscent of Castle in the Sky. AI can also transform bright daytime shots into dusky settings, or snow-free terrain into wintry landscapes. Even playful experiments like turning a sandbox mound into a snowy mountain demonstrate its potential.
For DIY creators like myself, these tools are game changers, especially for building vast, abandoned worlds once achievable only through painstaking miniature work or painted backdrops. By integrating these into our green screen filmmaking workflows, we can accelerate production and unlock new possibilities.
Final Thoughts
I hope this article inspires your filmmaking journey! If you find it helpful, please share it. Feel free to ask questions like, “How can I create this kind of scene?” I’d love to help.